ワイドな「車幅」なぜ足かせに? EV充電できる最新「機械式駐車場」が直面する新たな課題とは
くるまのニュース / 2022年7月8日 14時10分
2022年は電気自動車(EV)が相次いで登場していますが、その一方で充電インフラの拡充が課題となっています。日本に多く存在する機械式駐車場でも充電可能なシステムが開発されていますが、拡大傾向にあるクルマの車幅が新たな課題を生んでいるようです。
■続々登場するEV 充電インフラはどうなってる?
2022年は、国産車ではトヨタ新型「bZ4X」/スバル新型「ソルテラ」、レクサス新型「RZ」や、日産新型「サクラ」/三菱新型「eKクロス EV」といった軽自動車のほか、輸入車も含めて多彩な電気自動車(EV)が登場しており、まさに、「EV普及元年」といった雰囲気があります。
そうしたなかで、改めて注目されているのが充電インフラでしょう。
地図情報サービス大手のゼンリンによると、EVやプラグインハイブリッド車に対応する充電器は全国で約3万基あり、そのうち急速充電器が約8000基あるといいます。
急速充電器を使ったサービスで最大手のeモビリティパワーは「自動車メーカー各社と定期的な情報交換をしていますので、新型車の開発動向や販売数などを予測したうえで、我々としても充電器の設置を着実に進めてきます」と将来に向けた事業計画について説明しています。
急速充電器は、直流による高出力により比較的短時間に充電できるのが特徴です。
ただし、価格はかなり高く、最新の機器本体が500万円前後で設置工事などを含めると初期投資額は1000万円近くになることも珍しくありません。
そのため、主な設置場所は、カーディーラーや高速道路のSA/PA、コンビニ、道の駅、または大型商業施設などに限定されている状況です。
一方で、戸建て住宅や事業所などでは、単相200Vの交流でおこなう普通充電が一般的です。
出力や設置状況に対応して種類もさまざまあり、いわゆるコンセントタイプや壁掛け式など、本体価格は数千円から数十万円までと幅広く、設置工事費も10万円前後からそれ以上など設置場所の状況によって違いがあります。
新型eKクロスEVを発売した三菱自動車工業によると、「新車販売店を通じ、ユーザーのニーズをしっかり聞いたうえで、最適な普通充電サービスを提案しています」といいます。
三菱自動車が指摘するように、戸建て住宅なら家主がどのような普通充電サービスを受けるかを決めれば良いですが、それが集合住宅なると設置のハードルが一気に上がります。
マンションの管理組合などで普通充電器の設置について住民の一部が発案しても、その恩恵を受ける人がいまのところ限定的であるため、全住民にとって負担金に対する効果の公平性が保たれないと判断されることが少なくないからです。
そうしたなかで、ベンチャー企業や大手駐車場設備メーカーなどから普通充電に関して新しいビジネスがリリースされています。
先日も、JAIA(日本自動車輸入組合)が大阪で開催した、輸入電動車普及促進イベントに普通充電器の関連企業が数社出展して自社の事業をアピールしていました。
例えば、南アジアで小型電動車の販売、日本でドローン事業を手がけるテラモーターズは、集合住宅の管理組合や商業施設などに、IoT機能を持った普通充電設備を工事費などの初期設置費用をテラモーターズが負担するサービスを2022年春から展開しています。
同社関係者いわく、全国から問い合わせが急増しているといいます。
■充電できる機械式駐車場登場も、新たな課題が浮き彫りに
タワーパーキングなど機械式駐車装置の製造をおこなうIHI運搬機械が2021年12月にリリースし、2022年4月から販売を開始したのが「省電力・EV全台充電システム」です。
同社によると、以前からの機械式駐車装置でも普通充電器を設置してきましたが、これを全台に対応させようとすると膨大な電源容量が必要となります。
充電可能な機械式駐車場が開発されたものの、充電ガンやケーブルが駐車枠に収まらないことも(写真は通常の機械式駐車場)
また、稼働している機械式駐車装置に後付けとして普通充電器を設置しようとしても、すでに設置されている電源容量では不足してしまうケースも考えられます。
こうした課題を解消したのが、「省電力・EV全台充電システム」で、全台をいくつかのグループに分けて、グループ毎に順番に充電していくという仕組みです。
例えば、全32台の場合、4kVA(交流の場合出力をWではなくVAで示す場合がある)で充電すると128kVAの電気容量が必要ですが、4台ずつ充電すれば16kVAで済む計算になります。
ところが、実際にこのシステムを導入するうえで、新たなる課題が浮上したというのです。
それは、「車体寸法としては機械式駐車装置に収納可能でも、充電ガンや充電ケーブル、または給電(充電)蓋が駐車スペースからはみ出すクルマがある」という課題です。
給電(充電)口の位置はモデルによっても違いますが、車体の横側にある場合、給電(充電)のための蓋(ふた)が車体から大きくはみ出すことがあるのです。
給電(充電)蓋を開けた状態での車両寸法の幅については、メーカーが公開している諸元表には掲載されていないため、IHI運搬機械の担当者は「実際に、各モデルの実車で計測している」といいます。
今後も、新型EVや新型プラグインハイブリッド車が市場に出るたびにこうした計測をおこない、「省電力・EV全台充電システム」を採用した機械式駐車装置に収納できる自動車かどうかのリストを随時更新していくとのことですが、これは「日本固有の課題」ともいいます。
なぜならば、日本では機械式駐車装置が多いのが特徴だからです。
近年、グローバル化の流れもあり、自動車のボディサイズは、とくに車幅がどんどん広がる傾向にあります。
その車幅の広さが、集合住宅など駐車スペースが限られた場所での充電にも影響を与えているのです。
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