TSMC進出、教育現場も受け入れ急ピッチ 熊本県、台湾との交流拡大へ挑戦
共同通信 / 2024年4月5日 7時1分
熊本県に進出した半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の駐在員の高い関心を集めるのが家族たちへの教育環境だ。2月に開所した第1工場への出向者に同行する子どもは約150人。第2工場建設も決まり、地元の学校は前例のない大量受け入れに整備を急ぐ。交流拡大に向け、日台双方が挑戦している。
「日本語も話せるようになって、将来も海外で勉強したい」。熊本市の熊本インターナショナルスクール(KIS)で冬休み明けの1月、中等部1年李函家(り・かんか)さん(12)は流ちょうな英語でほほ笑んだ。授業では時折漢字を交えて解説する先生の話に耳を傾けていた。
TSMC第1工場の従業員約400人は2023年8月から順次来日。同行家族約350人のうち半数近くが子どもとみられている。第2工場の出向者は約500人に上る見込みで、家族を含めれば千人規模となる。
今、台湾の児童・生徒数十人が通うのが国際的な教育プログラム「国際バカロレア」の認定を受けるKISだ。受け入れ体制の強化へ新校舎の完成を昨夏に前倒し。台湾出身の支援スタッフを採用して日本語の授業も新たに設けた。
工場が立地する菊陽町は1980年代から中国残留邦人やその家族が暮らす地域で、武蔵ケ丘小は以前から校内の掲示や運動会のアナウンスなどに中国語と英語も使う。台湾の児童は少ないが、梶原圭一(かじわら・けいいち)校長は「経験を生かし、安心して生活してもらえる場所にしたい」と語る。
ほかに熊本市の九州ルーテル学院がインターナショナルスクール小学部を4月に開校。熊本大は教育学部付属の小・中学校で、英語で授業を行うクラスの設置を検討するなど受け皿づくりが進んでいる。
学びの場は地域にも広がる。一般財団法人「熊本市国際交流振興事業団」が主催する大人向けの日本語会話教室は昨秋ごろからTSMC関係者の受講希望が急増し、最大で約40人になった。従来は10人規模だった。
夫が第1工場で働く劉慧苑(りゅう・すいえん)さん(51)は「教室で日本語を覚えて、毎週通うカフェのマスターと話している」と笑顔。2月には台湾人ら4人で机を囲み、日本で人気の歌の歌詞について語り合っていた。
「もっと日本人と関わりたいとの声がある。普段からつながっておけば、災害時も乗り越えられる」と、ボランティアで会話教室の運営に関わる井上郁子(いのうえ・いくこ)さん(79)は指摘する。
東京大の額賀美紗子(ぬかが・みさこ)教授(教育社会学)は「駐在コミュニティーは地域と分断することが多い。インターナショナルスクールにとどまるのではなく、学校間の交流や親子で参加できる地域のイベントもあれば交流が深まる」と話している。
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