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ゲームの「エミュレーター」うっかり違法に注意! ソフト本体売っちゃダメ? 弁護士に聞いた

マグミクス / 2023年11月2日 6時10分

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■合法と違法の境界線は?

 昔夢中になったゲームソフトで遊びたいのに、ゲーム機本体がなくてプレイできない……。そんなときに便利なのが「エミュレーター」です。

 しかし、エミュレーターを正しく利用しないと違法の可能性もあります。そこで、合法と違法の境界線や利用上の注意点を、弁護士法人 永総合法律事務所の弁護士・永 滋康さんに聞きました。

●そもそもエミュレーターとは

 エミュレーターとは、特定のハードウェアやOS向けに開発されたソフトを、本来の仕様と異なる動作環境で実行させるソフト、またはソフトが内蔵されたデバイス(互換機)のことです。ゲーム機のエミュレーターには、いつでもどこでもセーブできたり、倍速モードに切り替えたりと、快適に遊べる独自機能が盛り込まれているケースが多いです。

◆ ◆ ◆

――早速お聞きしたいのですが、そもそもゲーム機のエミュレーター自体は、合法なのでしょうか?

永さん:任天堂はファミコンソフトやスーパーファミコンソフトなどが遊べる、Nintendo Switch Onlineといったオフィシャルのエミュレーターを販売しています。エミュレーターを使うことそれ自体は違法なものではありません。

 エミュレーターを使ってゲームを遊ぶ際に問題となってくるのは「遊ぶゲームソフトのROMデータをどうやって入手したのか」ということです。エミュレーターを使ってゲームを遊ぶためには、ゲームソフトに入っているデータであるROMを抽出してコピーし、エミュレーターで起動させる必要があります。

 ここでソフトデータをコピーする行為が、ゲーム製作者の著作権を侵害しないか否かが問題になりますが、自分または家族で楽しむためなど、ごく限られた範囲内で使うためにコピーする行為については「私的複製」とされ、著作権者の承諾なく無償で行うことが認められています(著作権法第30条)。

 つまり自分が遊ぶ範囲において、もともと自分が持っていたゲームソフト、または新たに購入したゲームソフトからROMを抽出してコピーする場合は「私的複製」に該当するため著作権法に違反しません。

――海外のROMダウンロードサイトはどうなのでしょうか。

永さん:日本に居住する者が海外のサーバーから違法なデータをダウンロードした場合について、そのデータが国内にいる者によってあえて海外サーバーに違法アップロードしたものであった場合、これをダウンロードする行為には日本国内の著作権法が適用されます。インターネット上に違法にアップロードされているデータをむやみにダウンロードしたり、他社から有償でも無償でもデータを譲り受けてROMを取得した場合は、著作権法に抵触し違法となるおそれがあります。

■エミュレーターで遊ぶ際の注意点は?

懐かしのファミコンソフトの数々。コレクションしている人は多い。

――エミュレーターを使用するにあたって、注意点を教えてください。

永さん:エミュレーターで使用するソフトのROMの入手経路に注意してください。インターネット上の違法データをダウンロードしたり、他者からROMが入ったSDカードを貰ったりすると、著作権法違反になるおそれがあります。著作権法違反となると、著作権者から損害賠償請求をされることはもとより、懲役刑や罰金刑などの刑事罰もあります。

  遊ぶソフトについては自分で持っているソフト、または新たに買ったソフトを使うことです。データ抽出についてはROMを吸い出すための「吸出し機」を使って自分で行うことを心掛けてください。

 またROMを抽出した後にオリジナルのソフトがいらなくなったからといって、ソフト本体を中古ショップに売却したり、友だちに譲渡したりすることも禁止されています。ROMを抽出した後のソフト本体はROMを保存している限り手元に保管しておく必要があります(著作権法第47条の3第2項参照)。ソフトを処分したい場合は先立ってROMなどデータの処分をしてからにしてください。

――ソフトさえあれば、データを吸い出してエミュレーターで遊んでも良いのですね。

永さん:「私的複製」に該当する限りソフトからROMを抽出することは適法ですが、「コピーガード(技術的保護手段)」が施されているソフトについては別です。コピーガードを解除してROMをコピーすることは禁止されており、私的複製のためであっても著作権法違反となります(著作権法第30条第1項2号)。

 プレイステーション世代以降のゲームソフトについては、ほぼすべてにコピーガードが施されています。ソフトからROMを抽出する前にコピーガードが施されているか否かをきちんと確認するようにしましょう。

――初代プレイステーションが発売されたのは1994年ですから、実際はそれ以前のゲームでないとエミュレーターで遊ぶのは難しそうですね。ゲームのエミュレーターについて法的責任を問われた事例はありますか?

永さん:2018年に複数のゲームソフトのROMをmicroSDカードなどの記録媒体に複製したうえで、エミュレーターとセットにしてインターネット上で販売した者が、著作権法違反で逮捕された事例がありました。

 これはゲームソフトのROMを著作権者たるゲーム会社に無断で複製して有償販売したことが著作権法に違反するとされたので、エミュレーターの譲渡そのものが違法とされたものではありません。

――ご回答、ありがとうございました。

●最後に

 エミュレーターの是非については、ゲーマーの間でたびたび議論が繰り広げられてきました。今回、プロの法律家に根拠となる法律や逮捕の事例についてお聞きできたので、一定の結論が出たと言えるでしょう。ぜひエミュレーターで遊ぶ際のご参考にしてください。

(レトロ@長谷部 耕平)

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