1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. ゲーム

SIEの「PS5」戦略は好調?それとも黄色信号? 2024年の成功を握るカギとは

マグミクス / 2023年11月20日 9時10分

写真

■PS5の好調ぶりと、不安を覚える片鱗

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)が手がけた家庭用ゲーム機「PlayStation 5」(以下、PS5)が発売開始から3年経ち、4年目のサイクルに突入しました。

 一般的な傾向では、4年目に突入したゲーム機は安定傾向にあります。ここまでの普及率を背景にゲームの売り上げを伸ばしつつ、その影響を受けてゲーム機本体の売り上げも積み上げていく時期です。ですがPS5の場合、序盤の販売時期とコロナ禍が被る不幸に見舞われ、十分な供給を行えない不運に苦しめられました。

 ですが、今年の2月頃からようやく国内でも自由に買えるようになり、販売台数も順調に増加しています。また、今年だけでも『FINAL FANTASY XVI』や『Marvel’s Spider-Man 2』といった注目度の高い独占タイトルが発売され、11月10日にはPS5の新モデルが登場するなど、活気のある展開も続いています。

 こうした動きに好調の兆しを見る人もいますが、PS5の動向に不安感を覚える人も一定数います。果たして不安の声は、実態に即したものなのか。それとも、印象に過ぎないのか。同社のPS5戦略に、改めて注目してみましょう。

●決算が示すPS5の好調ぶり

 好調・不調の兆しをうかがう材料として、決算の結果は有用です。まずは、先日ソニーグループが公開した2023年度 第2四半期の連結業績や関連資料から、PS5の動向に迫ります。

 SIEが深く関わる「ゲーム&ネットワークサービス」は、売上高9541億円(前年同期比32%増)、営業利益489億円(前年同期比16%増)と好調な動きを見せています。ただし営業利益は、PS5の損益悪化の影響もあった模様です。

 PS5の販売台数にも触れており、当四半期では490万台を販売したとのこと。この数字は、年間2000万台を販売した2016年度 第2四半期の「PlayStation 4」の販売台数を25%上回っており、ここでも順調な結果を出しています。

 ソフトウェアについては、PS5独占タイトルの『Marvel’s Spider-Man 2』が発売から10日間で500万本を達成し、爆発的なヒットを記録しました。

 PS5に関連する主だったデータを抜き出してみましたが、かつての不運を乗り越えるような好調ぶりです。こうした数字からは、SIEのPS5戦略は功を奏しているように思われます。

●PS5にも関わる、PS+の会員数が不透明

 数字の上では好調に見えるPS5戦略ですが、懸念する点や疑問が浮かぶポイントもあります。

 SIEの重要な戦略のひとつに、定額でさまざまなゲームが遊べる「PlayStation Plus」(以下、PS+)があります。このサービスが2022年6月にリニューアルされ、複数のプランに分かれました。その影響か、6月末時点(4730万人)と比較してPS+会員が約200万人減少し、4540万人に落ち込んでいたことが、2022年11月の決算報告にて明らかになっています。

 ですが、その後の展開で会員数は増加傾向に転じ、2022年度 第4四半期 連結業績補足資料の時点では、4740万人と元の水準まで回復しました。こうして谷間を切り抜けたように見えますが、しばらく前からPS+会員数の公開を控えるようになり、現状での実態は不透明です。

 その状況に追い打ちをかけるように、PS+の価格(12ヶ月分)が2023年9月より値上げされました。しかも上がり幅は約30%と、決して小さな数字ではありません。この影響で会員数が変動している可能性も十分ありますが、現在の正確な人数は不明です。

■PS5の躍進を後押しするのは、カプコンか?

PS5の新モデルは、小型化を実現したほか、ディスクドライブの着脱も可能に

●独占タイトルの少なさ、実質値上げに対する買い控えの可能性

 また、PS5本体の売れ行きですが、全体の販売台数は出ているものの、日本国内の普及台数などは明かされていません。累計で売れていれば問題ないと考えるのはやや乱暴ですし、日本のユーザーからすれば国内のPS5が盛り上がるかどうかは死活問題です。

 ハードに加えて、ゲームソフト面でも懸念する材料はあります。PS5独占としてリリースされる作品は数あれど、後日PCなどに展開するケースがほとんどで、先ほど名前を挙げた『FINAL FANTASY XVI』もPC版のリリースが決まっています。「PS5だからこそ」というゲーム体験がまだ乏しい点は、いささか否定できません。

 そして先日新モデルのPS5が発売されましたが、こちらの価格は従来モデルよりも上がっています。しかも従来のモデルは在庫限りで販売が終了するので、実質的な値上げと言っていいでしょう。小型化やSSDストレージの増量などはあるものの、価格面で買い控えを決めるゲームファンが出てきてもおかしくありません。

 良好な数字もあれば、見過ごすには大きな課題もあり、そして不透明な部分も気になります。そのため現時点では、「SIEのPS5戦略は、万事上手く進んでいる」とは断言できません。

●PS5に求められるさまざまな「展開」

 もうじき2023年が幕を閉じます。リリースされるPS5タイトルはほぼ確定しており、年内にこの状況が即一変することはまずありません。そのため、今後のPS5戦略で重要なのは2024年の展開です。果たしてどのような動きがあれば、ユーザーが抱える不安を払拭し、非の打ちどころのない飛躍を遂げられるのでしょうか。

 普及が見えにくい国内のPS5販売台数ですが、値下げを行えば一定の効果が出る、と指摘する声もあります。確かに、値下げで普及が進んだ例はありました。ですが、円安の改善は未だ見込めず、また新モデルで実質的な値上げが行われたばかり。2024年内に効果のある値下げが実施される可能性はかなり低いでしょう。

 また同じ理由から、PS+の値下げも見込み薄ですが、内容の充実は十分あり得ます。ただしプレミアムコース加入者向けに、クラウドストリーミングや「Sony Pictures Core」アプリ経由の映画見放題といったサービスの拡大を行ったばかりなので、早急な新展開は少々難しいかもしれません。

 PS5独自の強みを生かす、という方向性も考えられます。PS5にアクセスできる「PlayStation Portal」も強みのひとつと言えますが、ここは「PlayStation VR2」への注力に期待したいところ。しかし周辺機器の展開は、どちらかと言えばPS5所持者向けなので、現状の打開まで求めるのは荷が重そうです。

 やはり王道は、ゲーム機の購入を後押しする「キラーソフト」の創出でしょうか。昨年は『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』が大ヒットを記録し、今年は前述の『Marvel’s Spider-Man 2』がまさに活躍中です。こうしたヒット作に続くゲームを2024年に出せるかどうかが、ひとつのカギになるでしょう。

●カプコンの意味深な発言が、PS5に結びつくのか?

 PS5が成功するためのキラーソフトの創出は、必ずしもSIEが全て背負う必要はありません(自社IPが育つのは大きな強みになりますが)。PS5に参入しているソフトメーカーに、できれば独占で、せめて時限独占のPS5ソフトを出してもらえれば、それを機にPS5の普及がさらに進みます。

 来年登場するPS5独占ソフトといえば、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』に大きな期待が集まっています。本作は、人気の高い『FINAL FANTASY VII』をベースに、新たな切り口も加えてリメイクする3部作の2作目です。

 あのさまざまなミニゲームが楽しめる「ゴールドソーサー」にも足を運べますし、ファンお馴染みのデートイベントも用意されています。PS5の性能をたっぷり味わえる、絶好の1本と言えそうです。

 また、PS5と関連するのかはまだ未定ですが、カプコンから気になる発言が飛び出しています。同社の2024年3月期 第2四半期カンファレンスコールの質疑応答概要にて、「通期の新作タイトル販売計画の達成に向けた施策を伺いたい」と問いかけられ、「下期は、現在未発表の大型タイトルに加え、1月に『逆転裁判 456 王泥喜セレクション』の投入を予定しています」と同社が返答。未発表の大型タイトルが、来年3月までに控えていると明言しました。

「カプコンの大型タイトル」から連想される作品はいくつもありますが、その候補のひとつとして確実に名が挙がるのは、『モンスターハンター』シリーズでしょう。このシリーズはさまざまなプラットフォームでヒットを記録し、ゲーム機の販売台数にも貢献するほどの影響力を持ち併せています。

 仮に『モンスターハンター』シリーズの新作がPS5独占で出れば、PS5にとってこれ以上ないほどの追い風となります。しかも『モンスターハンター』シリーズは、2024年3月に20周年を迎える予定です。このタイミングに新作を投入する展開は十分あり得るので、「PS5にモンハンの新作」の可能性はゼロではありません。

『モンスターハンター』シリーズはあくまで一例ですが、これに比類するほどのタイトルがPS5に登場するのか否か。ここが、2024年のPS5戦略を左右する大きな分岐路となるはず。SIEはユーザーが期待するような、もしくは上回るような戦略を見せてくれるのか、今後の動きに視線が集まります。

(臥待)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください