日本の刃物のすごさ「五感」で感じられる?かんなの薄削り、包丁を変えた食べ比べ…全国の匠が岡山に集合
まいどなニュース / 2024年4月8日 18時30分
日本の刃物のこと、どれだけ知っていますか―。世界一の切れ味とされる国産刃物とそれを生み出す各地の職人技をアピールする初のイベントが14日、岡山市北区北長瀬表町のハッシュタグ岡山で開かれる。「五感で感じる日本の文化」と銘打ち、匠(たくみ)による実演やパフォーマンス、体験企画などを繰り広げる。
職人の減少や材料の調達難などにさらされている伝統産業を次代に残すため、年齢や職業にかかわらず多くの人に親しんでもらおうと、建築金物や包丁を扱う岡山市の企業が企画した。
堺市から著名な彫金師・窪田美知子さんが来場。アートとして近年人気が高く、包丁の腹に花や竜を彫る彫金、名前や文字を刻む「銘切(めいきり)」を披露する。新潟県三条市からは日本一の玄翁(げんのう)鍛冶職人として知られ、かんなも手がける道心斎(どうしんさい)正行(まさつら)さんが訪れ、実演しながら製品を紹介する。
岡山からは、かんなでヒノキを極限まで薄く削る大会で女性部門日本一を2度獲得した市川仁美さん、殺陣師の大岩主弥さんが、それぞれパフォーマンスする。
殺陣は午前11時、午後1時、同3時から各回約30分で、見学者も参加できる企画を用意する。かんな削り、研ぎ具合の異なる包丁で切った果物の食べ比べ、ヒノキのかんなくずを敷き詰めた子ども用プールは随時体験できる。
各地の有名メーカーや鍛冶職人が手がけた包丁や大工道具の展示販売もある。
午前9時~午後5時。入場、体験無料。問い合わせは主催の市川金物(086―224―8077)。
「失われてからでは手遅れ」
かんなの薄削りなどで鍛冶文化を広げる活動を続け、主催する市川金物の専務でもある市川さんに、開催の狙いや「五感」を刺激する当日の企画を教えてもらった。
鋼をたたいて延ばす鍛造による刃物製作は日本独自の技術で、切れ味の良さは世界一だ。しかし、成分を細かく調整する必要がある材料の鋼が、メーカーへの外資参入による合理化などで調達が難しくなっている。鍛冶職人の後継者不足に加え、道具を扱う側の職人も減少が続き、技術継承は危機的な状況だ。
「失われてからでは手遅れになる」と思い、技術や製品の素晴らしさを全身で感じてもらうイベントで、文化をつないでいくきっかけがつくれればと考えた。
当日は迫力ある殺陣や繊細な彫金、ティッシュペーパーの半分の薄さのかんなくずなどを見てほしい。それぞれの動作に独特の音があるし、ヒノキの香りも楽しめる。
かんなで削った木肌はツルツルで水をはじき、神社仏閣など木造建築を長持ちさせている。うまく研いだ包丁で切ると食品の組織がつぶれず素材の味が生きる。切れ味の悪い包丁を使ったものと食べ比べれば違いを分かってもらえる。
刃物の分野では産地ごとのイベントはあっても、各地の技術や製品を集めたイベントは例がない。家族で訪れて伝統にじっくり触れてほしい。
(まいどなニュース/山陽新聞)
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