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「生活が不安だから」「子供のため」「夫婦別姓のため」…離婚後も同居を選ぶ夫婦たち 気をつけたい法的ルール【弁護士が解説】

まいどなニュース / 2024年5月4日 21時40分

離婚しても一緒に過ごす夫婦もいます ※画像はイメージです(Art_Photo/stock.adobe.com)

離婚後も別居せずに同居を続ける夫婦がいます。子供を親から引き離したくない場合や経済的な負担を軽減するケースなどさまざまな理由があるようですが、離婚した夫婦が一緒に住むことに問題はないのでしょうか。離婚後も同居する場合のメリットや注意点などについて解説します。

離婚しても別居するさまざまな事情

離婚したいのに、離婚後に住む家がなく、生活も不安なので離婚せずに我慢しているという人は少なくありません。そうした人の中には、離婚後も別居せずに、生活の目途が立つまで同居するという人もいます。また、子供を親から引き離すのはかわいそうだとして、一緒に住むことを選ぶ人もいるようです。また、不仲になったわけではないのに、事実婚や内縁関係でいたいとして、離婚したうえで同居を続ける夫婦もいます。

このように一見おかしいように見える離婚後の同居ですが、それぞれの事情によって同居せざるを得ないこともあります。離婚後も一緒に生活を続けると何か問題が生じるのでしょうか。法律上の扱いを含め、問題点や注意点を解説します。

離婚後も同居は可能?

法律上は、双方の合意によって作成された離婚届が提出され、自治体に受理されれば正式に離婚が成立します。そこからは赤の他人ですから、別々に暮らしていようが、同居していようが問題はありません。婚姻届けを出していない男女が同居していても問題ないのと同じです。

ただし、ただの「同居人」として生活するのか、事実上の婚姻関係にある「事実婚」なのかによって、法律や制度上の扱いが異なるケースがあります。この違いを理解していないと大きなトラブルになることもあるので気を付けましょう。

▽単なる同居人として生活する場合

離婚届を提出しても、直ぐに引っ越し先が見つからないという事情や、子供を親から引き離したくないといった理由から、単なる同居人として同居を続けることがあります。この場合は、それぞれが自分の生活費を負担し、光熱費も取り決めに従ってそれぞれ応分の負担をすることになるでしょう。

こうしたケースであれば、シェアハウスや下宿と変わらず、夫と妻はそれぞれが自由に生活できます。もちろん、不貞行為を問われることはないので恋愛は自由ですし、互いに助け合う義務もありません。ただし、子供がいる場合、親権を持っていない側は養育費を支払う義務があります。

▽事実婚として生活する場合

離婚届を提出して法律上の婚姻関係を解消したものの、実質上の夫婦生活を継続するケースもあります。婚姻届を出さずに実質上の夫婦生活を送っているカップルは珍しくありませんから、こうした形態の夫婦関係も問題はありません。一般的に「内縁関係」「事実婚」などと言います。

最近、多いのは仕事の関係で旧姓を名乗りたいという人です。事実婚のカップルは、生計を一にして助け合って生活します。このため、事実上の婚姻関係にあることが明らかであれば、多くの場合、結婚している夫婦と同じように扱われます。事実婚の関係を解消する際も、浮気の慰謝料や財産分与などが認められる可能性が高いでしょう。

ただし、内縁関係の場合、遺産の相続権はありません。遺産を相手方に引き継がせたい場合は、遺言書を書いておくことが必要です。

離婚後も同居する際の注意点

離婚後も同居する際、気を付けなくてはならない点がいくつかあります。もし、知らずにいると、大きなトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。離婚後も同居することのデメリットも知ったうえで、一緒に住むかどうかを考える必要があります。

▽偽装離婚を疑われる恐れがある

離婚した後も同居を続けた場合、周囲や自治体、税務署などから「偽装離婚」ではないかと疑われる恐れがあります。偽装離婚とは、何らかのメリットを得るために、戸籍上、離婚したことにしておき、今まで通りの夫婦生活を送ることです。たとえば、財産を隠したり、税金を逃れたりするために、離婚して財産分与したことにするケースがあります。

また、生活保護やひとり親家庭に支給される児童扶養手当(母子手当・父子手当)を支給するために、偽装離婚するケースは少なくありません。保育所などの待機児童の多い自治体では、保育所に入所しやすくするために、偽装離婚するケースもあります。偽装離婚がバレると公正証書原本不実記載の罪に問われる恐れがあります。

▽相手にいつ同居を解消されるかわからない

離婚後も一定期間同居をすることで夫婦が同意しても、独身の男女が同居生活を送るのは不自然です。どちらかが「どこかおかしい」と感じ始め、同居の解消を切り出すかもしれません。夫婦であれば、互いに協力し合う義務があるので、相手を一方的に追い出したり、出て行ったりすることはできませんが、同居人同士であれば止めることは難しいでしょう。

相手から「好きな人ができたので、同居を解消する」と突然言われることも、当然覚悟しておく必要があります。

▽社会保険料の負担が増える可能性がある

実質上の婚姻関係がある内縁関係、事実婚のカップルの場合、一般的な夫婦と同じように相手の被扶養者になることができます。これは、いったん離婚していても変わりませんが、事実婚であることを証明する必要はあります。

一方、夫婦関係のない単なる同居人の場合は、被扶養者になれないので、自分で健康保険に加入し、保険料を支払う必要があります。国民年金の保険料も基本的に支払わなければなりません。また、事実婚かどうかにかかわらず、離婚すると税制上の配偶者控除が受けられず、納税額が増えることもあります。

離婚後も同居を続けるメリット

離婚後も同居を続けた場合、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。考えられるメリットについて解説します。

▽子供への影響を抑えられる可能性がある

子供がいる場合、離婚による子供の影響を心配する人も多いでしょう。配偶者や家族が子供に危害を加えかねない場合は、離婚してでも引き離す必要がありますが、子供が両親に懐いている場合は、離婚によってショックを受ける恐れがあります。子供が転校を強いられ仲の良い友達と離れ離れになってしまうケースも考えられます。

しかし、離婚しても同居を続けていれば、子供は両親と離れずに済み、引っ越しも必要ありません。離婚したという事実も、子供が大きくなるまで隠しておけるかもしれません。夫婦としては関係修復は困難でも、子供の親としてなら協力できるというのであれば、同居を続けるのも一つの選択でしょう。

▽生活費や育児の負担を軽減できる

一人暮らしよりも、だれかと同居生活したほうが、住居費や水道光熱費などを低く抑えられるものです。新しく同居者を探すのなら、当面の間、元配偶者と同居してもいいだろうという考え方もできるでしょう。引っ越しの費用を用意せずに済むのも、大きな金銭的なメリットです。

また、子供がいる場合は育児で協力することもできます。親権を手放したほうは「親権がないのに子育てをしなければならないなんて」と思うかもしれませんが、子育ては親の義務です。同居期間中は、子育てに協力する代わりに養育費を減額するなどの取り決めも、互いに納得すれば可能です。

▽離婚したことを周囲に知られずに済む

最近は離婚する夫婦も珍しくありませんが、離婚するとなんだか近所や親類の目が気になり、引け目を感じるものです。しかし、離婚後も同居を続けていれば、周囲に離婚したことは気づかれません。

ただ、離婚して名字を変えると、名字から離婚したことがわかってしまうかもしれません。それも、別に気にする必要はないのですが、気になる人は「夫婦別姓になるために、離婚という形をとった」と説明しておけば、最近は納得してもらえることも多いでしょう。

▽夫婦別姓にできる

実際に、自分の名字を旧姓に戻したいという理由で離婚し、その後は事実婚の夫婦として同居生活を送る人もいます。最近は働く女性も増え、結婚した後も旧姓で仕事を続けるというケースは珍しくありません。会社で活躍するほど、旧姓と結婚後の本名の使い分けが面倒になり、旧姓に戻したいという人も多いようです。

▽復縁できる可能性がある

相手から離婚を要求され、やむなく応じたものの、せめて同居だけはさせてほしいという人もいるでしょう。引っ越し先が見つからない、自立して生活する自信がないなどと訴えれば、しばらくの間、同居させてもらえるかもしれません。そうすれば、毎日顔を合わせるうちに、相手も気持ちが変わり、復縁できるかもしれません。

「離婚したい」という思いで頭が一杯になると、イライラして余裕がなくなるものです。しかし、取り敢えず離婚するという目的を達成すれば、相手も冷静になってくれるかもしれません。人は毎日顔を合わせていれば、情が湧いてくるものです。夫婦として一緒に暮らしていた期間があれば、なおさらでしょう。ダメ元で同居を願い出るのも一つの手でしょう。

離婚後も同居する際の手続きは?

離婚後も同居する際、必要となる手続きがあります。きちんと手続きをして、ただの同居なのか、事実婚なのかを明確にしておかないと、トラブルになる恐れがあります。どのような手続きがあるのか、注意点とともに紹介します。

▽世帯分離手続き

離婚届を提出すれば、戸籍が変更され、住民票の名字も離婚後の名字に変更されます。しかし、元妻か元夫のどちらかが、住民票の異動届を出さないと、住民票では同一世帯として扱われます。事実婚としてこれまで通りの生活を続けるのなら、これでも構いません。しかし、生計が別であることを明確にするには、「世帯分離」という手続きが必要です。

世帯分離とは、同じ住所に住み、住民票に同一世帯として登録されている世帯を、生計が別になっているとして分離する手続きです。たとえば、同一世帯であれば、家族の収入は世帯収入として合算されますが、世帯分離すれば、世帯ごとに収入が合算されます。

社会保険料の中には国民健康保険料のように世帯収入に応じて保険料が決まるものがありますし、国や自治体などからの支援金や補助では、世帯収入額によって所得制限が設けられることがあります。このため、世帯分離をすれば、保険料などの額が減り、それまで受け取れなかった公的支援を受けられるようになるかもしれません。

▽公的支援の申請

離婚をすると、収入が減るため経済的な公的支援を受けられることがあります。特に子供を引き取った場合、ひとり親支援のための手当を受給できる可能性が高いでしょう。しかし、元配偶者と生計が別でなければならないので、世帯分離の手続きは欠かせません。手続きを忘れないようにしましょう。

ひとり親支援の手当としては児童扶養手当があります。ほかにも、自治体によっては児童育成手当、ひとり親家族等医療費助成制度を設けているところがあります。自治体によって制度や金額が異なるので、住んでいる自治体にどのような支援を受けられるのかを確認しましょう。

ただし、公的支援を受ける場合は、偽装離婚と判断されないように、生計が別であることを明確に証明できるようにしておくことが必要です。

離婚後同居をする際はルールを定めよう

事実婚になるために離婚した場合は、離婚した後も夫婦生活は大きく変わらないでしょう。しかし、世帯を別にして、全くの同居人として一緒に住むのであれば、生活するうえでのルールを決めておく必要があります。どのようなルールが必要なのか、紹介します。

▽費用の負担割合を決める

離婚した後も、同じ家に住むということはシェアハウスするようなものです。貸し借りの関係をはっきりさせ、家賃や光熱費の負担をどうするのかについて決めておきましょう。冷たいように思えるかもしれませんが、生計を分ける以上、当然のことです。逆に費用負担をあいまいにすると、偽装離婚と疑われる恐れもあります。

離婚する際には、財産分与や親権、養育費の話などもするはずです。もし、同居することが決まっているのであれば、同居期間の費用負担の方法についても、しっかり話し合いましょう。

同居期間についても「何年間」と期限を定めたうえで、一定期間が経過した後、同居を続けるかどうか、続けるとした場合、費用の負担割合や次の同居期間をどうするか、などについて改めて協議すると定めておくと、同居開始後のトラブルを防止するのに有益な場合があります。

▽日常生活の規則を作る

シェアハウスやアパートに入居者の規則があるように、同居生活には日常生活のトラブルを避けるためのルールが必要です。結婚していた頃とは違うのですから、しっかりルールを作って、誠実に守っていきましょう。

たとえば、掃除やごみ出しなど共有部分の家事はどのように分担するのか、門限を定めるのか、親権者が子供の面倒をみられないときはどうするのか、など細かな点まで決めておくといいでしょう。もしかすると、離婚する前より、うまく協力し合えるかもしれません。

▽お互いの生活に干渉しない

もともと夫婦で、その後も同居して相手の生活ぶりを見ていると、ついつい相手のすることに口を出してしまいがちです。しかし、もう赤の他人なのですから、何も言う権利はありません。もちろん、自分がすることにも、あれこれ相手から指図される筋合いはありません。

人によっては、これが一番つらいかもしれません。どうしても、相手のすることが気になるのなら、できるだけ早く同居を解消したほうがいいでしょう。特に相手の交友関係に口を挟んでは絶対にいけません。相手に新しい交際相手ができても、自分には関係のないことです。

離婚後の同居で悩んだら専門家に相談しよう

離婚後も事実婚や内縁関係ではなく、同居人として一緒に住むことは法的に問題はありません。しかし、元夫婦とはいえ、赤の他人と一緒に生活するのは簡単ではありません。相手のすることが気になり、ストレスを感じることもあるはずです。

夫婦の事情もさまざまで、どうしても同居しなければならないときもあります。そうしたときは、夫婦関係に詳しいカウンセラーや弁護士に、同居生活の問題点や注意点などについてアドバイスを求めるのも一つです。現状を第三者の目でみてもらうことで、問題の解決策が見つかるかもしれません。

◆弁護士事務所 北松戸ファミリオ法律事務所 (千葉県弁護士会所属)/リコ活専門家
2020年に開業した当事務所は、ご家族内やご家族をめぐる問題やお悩みを気軽に相談できる地域密着型の法律事務所として、一人一人のお客様に親身に寄り添い、最善の解決を目指しています。

(まいどなニュース/リコ活)

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