NICTなどがISS・地上間での秘密鍵共有と高秘匿通信に成功、実用化へ前進
マイナビニュース / 2024年4月19日 15時21分
情報通信研究機構(NICT)、東京大学(東大)、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)、次世代宇宙システム技術研究組合(NESTRA)、スカパーJSATの5者は4月18日、低軌道上の国際宇宙ステーション(ISS)から地上の可搬型光地上局への光通信により、1回の上空通過で100万ビット以上の秘密鍵を共有し、ISSと地上局とでの情報理論的に安全な通信の実証に成功したことを共同で発表した。
同成果は、NICT 量子ICT協創センターの 藤原幹生上席研究員、東大大学院 工学系研究科 附属光量子科学研究センターの小芦雅斗教授、NESTRAの森田皓子氏、ソニーCSL、スカパーJSATらの共同研究チームによるもの。
量子コンピュータがこのまま性能向上を続けると、現在の暗号技術は解読されてしまう危険性が高まる。そのため、世界的な喫緊の課題として、現在、いかなる方式のコンピュータがどれだけ高性能化しても解読不可能な暗号技術の開発が進められている。
NICTが、情報理論的に安全な鍵共有・秘匿通信を可能とする技術として開発しているのが、量子鍵配送(QKD)・量子暗号通信。QKDとは、通信を行う二者間でのセキュア通信を保証するため、量子力学を用いてランダムな暗号鍵を共有する手法だ。そして量子暗号とは、光子を使って暗号鍵共有を行うQKD装置と、その暗号鍵を使い、ワンタイムパッド(OTP)方式により、情報の暗号化・復号を行う暗号技術のことで、どのようなコンピュータでも原理的に解読は不能である。
現在、地上光ファイバー網における量子暗号通信のさらなる高速化・長距離化のための研究開発が進められているが、量子鍵配送をグローバル規模に拡大するには、数千kmにわたる量子暗号通信を行う必要があった。しかし、地上の光ファイバー網では、通信路の途中で中継する量子中継技術の発展を待たねばならない状況だったとする。
それに対し、地上での中継が不要な、衛星を用いた量子鍵配送の可能性も模索され、2017年には中国で衛星量子鍵配送の実験が成功している。これを機に世界各国で衛星量子暗号技術の開発が進められたが、共有される鍵の量が限られ、また大型の地上局が必要など、その実用には課題が残っていたという。そこで今回の実験では、低軌道高秘匿光通信装置「SeCRETS(シークレッツ)」を開発してISSの日本実験棟きぼう船外実験プラットフォームに搭載し、地上との間で実験を行うことにしたとする。
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