ハーバードが絶賛する「日本」を私たちはまだ知らない
ニューズウィーク日本版 / 2016年5月25日 16時7分
「増田さんは、作業員でごった返す緊急時対応センターで、ホワイトボードにひたすら数字と図を書いていったのです。(中略)つまり『私にも何が起こっているかわからないが、少なくともいま私が知っていることはこれだ』と作業員と情報を共有したのです。これを社会心理学では、『センスメーキング』(sense making)といいます。危機の真っただ中にいて、センスメーキングをできるリーダーはなかなかいません」(206~207ページより)
センスメーキングがあったからこそ作業員がパニックに陥らなかったというわけで、ここにはさまざまなリーダーが応用できるヒントが隠されているといえるのではないか?
さて、本書を読み進めていくと、実感せざるを得ないことがひとつある。「いわれてみれば、たしかにすごいかもしれない」日本人の持つ力を、我々日本人がいちばんわかっていないのではないだろうかということだ。
終章においてもそのことにページが割かれている。ただし、そこには「ハーバードの教授陣も手放しで日本を絶賛しているわけではない」という記述もある。「課題」として提示されているものは次の3つ。「①グローバル化」「②イノベーションの創出」「③若者と女性の活用」だ。
グローバル化が遅れている理由として挙げられているのは、「変化への極度の抵抗」、そして「ローカル志向」の人の多さだ。グローバル派が増えないのは、それが日本では「出る杭」として認識されているからだそうだ。また、イノベーションの創出が昔ほど進んでいないのは、「快適な国」であることが一因であるともいう。アメリカは問題だらけの国だから、それらを解決するためにイノベーションが生まれる。しかし、日本にはそれがないということだ。このことに関する唯一のチャンスが、高齢化にあるという指摘も興味深い。
いまの日本はイノベーションを起こすチャンスだ、と前向きな意見を述べるのが、ロザベス・モス・カンター教授だ。
「日本は高齢化社会ですね。高齢化社会であることはイノベーションを生み出しやすいという利点があります。高齢者が多ければ『若い労働者が不足しているから、道路も鉄道も思うように建設できない。それならどうしようか』と考えますね。それを解決するにはイノベーションを起こすしかありません」(238ページより)
その点も含め、若者と女性の活用が実現すれば、そこが突破口になるかもしれないという考え方だ。
この記事に関連するニュース
-
AIが「思ったほどすごくない」5つの理由...まだ問題だらけ、最も重要なのはCO2排出量!?
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月27日 21時0分
-
老後の資金不足を解消するのだけが目的ではない…定年後も働き続けることで得られる「お金より大切なもの」とは?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 11時15分
-
「研究者はお金持ちにはなれない」という日本とは大違い…アメリカの大学に世界中から優秀人材が集まる理由
プレジデントオンライン / 2024年4月24日 9時15分
-
ジェトロ、米ハーバード大学のイノベーション施設と学生起業家向けイベント実施(米国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月22日 0時35分
-
amazonの小学教科書・参考書カテゴリでベストセラー1位を獲得!『宿題が30分で書ける!秘密のハーバード作文』で、受験・就活・ビジネスでも一生使える「ライティング力」を育てよう。
PR TIMES / 2024年4月14日 23時40分
ランキング
-
1習主席の妻、軍の審査委員就任か 香港紙報道、SNSに写真出回る
共同通信 / 2024年5月5日 23時20分
-
2イスラエル、テレビ局アル・ジャジーラの支局閉鎖を閣議決定…警察が機器を押収
読売新聞 / 2024年5月5日 23時26分
-
3ベルギーに亡命した中国内蒙古自治区政府の元法律顧問、逮捕時に没収された高価な孫文銀貨101枚の返還を習近平国家主席に要求
NEWSポストセブン / 2024年5月6日 7時15分
-
4イギリス地方選で与党・保守党が大敗、支持率最低レベル…14年ぶり政権交代が現実味
読売新聞 / 2024年5月6日 0時4分
-
5ガザ休戦交渉、平行線か イスラエル、戦闘終結拒否
共同通信 / 2024年5月6日 0時51分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください