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中印が領有権を争う国境で、インドの遊牧民を人民解放軍の兵士が妨害...緊迫の場面の動画が公開

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月3日 19時23分

中印国境で軍事衝突が発生した当時のインド陸軍のトラック(2020年6月、ラダック近郊) Defense Minister/Handout / Latin America News Agency via Reuters

<中印国境にある実効支配線(LAC)の西端インド・ラダック地方の住民と、中国人民解放軍の兵士の間で衝突が発生>

インドと中国の国境にある係争地で、放牧をしていたインド側の住民が中国軍の兵士から妨害を受け、両者が衝突する出来事があった。山々に囲まれた広大な草原という雄大な自然の中で繰り広げられた衝突の様子は動画に収められており、インド側の住民が中国兵に石を投げつけて抵抗するなど緊迫したシーンもあった。

■【動画】軍用車に乗って現れた中国軍、石を投げて抵抗するインドの遊牧民...国境での「衝突」緊迫シーン

動画は1月末、インドと中国の間の全長約3400キロに及ぶ実効支配線(LAC)の西端に位置するインド北東部ラダック地方の住民が、インスタグラムに投稿した。両国間の長年の領土紛争に住民が巻き込まれた瞬間を捉えている。

中国とインドの間では、1962年に国境紛争が発生し、過去4年にわたりLAC全域で激しい対立が続いている。特にラダック東部では、2020年のガルワン渓谷での軍事衝突で、インド軍兵士20人と中国軍兵士少なくとも4人が死亡した。

今回の出来事は、現場から約48キロ離れたチュシュル村のコンチョク・スタンジン議員が1月30日、X(旧Twitter)に動画を投稿したことで明らかになった。

中国は周辺地域はチベット自治区の一部だと主張

インドはラダックを特別行政区として統治している。一方、中国は同地域の一部はチベット自治区に含まれると主張しており、中国人民解放軍の兵士は現在、この不安定な国境地帯で定期的にパトロールを実施している。

この地域には中国軍が恒久的に駐留しており、その規模は大きい。今回の衝突が起きたカクジュンから約48キロ南方のデムチョクに駐留し、約60キロ東方のルトクにも基地を構える。中国はこの2つの国境の村を、新疆ウイグル自治区とチベットの一部だと主張している。

動画では、ヤギ飼いの男性が「なぜここに来たのか? なぜここに車両で入ってきたのか。ここは私たちが先祖から受け継いできた土地だ。私たちはここで家畜を放牧している」とチベット語で話している。チベット語はラダックの人々も使用する。

そして、村人たちが中国兵に石を投げつけ、緊迫した状態になった。

本誌が確認したところ、ヤギを放牧する住民らを妨害し、撮影をしている中国兵の数人はチベット語を話している。国境地帯に関する知識を買われて中国軍に採用されたチベット民族とみられる。そのうちの1人は「U.S. Air Force(アメリカ空軍)」と書かれたジャケットを着ていた。

2019年にも中国が遊牧民を止めようとした

カクジュンを管轄するニョマ村のイシェイ・スパルザン議員は、インド紙「ザ・ヒンドゥー」に対し、この紛争地域はインドが主張するLACの中にあると述べた。「そこは渓谷で、家畜の冬の放牧に極めて重要だ。2019年前半にも、中国が遊牧民を止めようとしたが、私たちは自分たちの主張をするためにテントを張った」とスパルザンは言う。

彼は今回の衝突について、「中国軍と対峙した地元住民の勇敢な姿だ。中国軍が妨害している地域は遊牧民の放牧地だと主張している」とXに投稿した。紛争地の住民が中国軍に反発するのは珍しく、中国政府の主張によってますます困難に直面している土地と、彼らが深くつながっていることを示している。



アーディル・ブラール

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