「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月23日 19時57分
ポイントは、雁琳氏がこの訴訟を戦うにあたって、訴訟費用をはるかに上回る450万円ものカンパを集めたことだ。もちろん、財政的な問題を抱えた被告が、裁判をするにあたってカンパを求めることには問題がない。たとえば、公の事業への反対運動を続ける市民団体が、国や自治体から運動を疲弊させるためだけに訴えられる訴訟、いわゆるSLAPP訴訟では、運動の継続のために広くカンパが呼びかけられる。しかし最近では、面白半分で他者を誹謗中傷し、訴えられるとカンパを集め、あるいは訴状などの関連文書をnoteなどの収益化されたブログサービスに公開したり、法廷での様子を含む裁判の経過を面白おかしくネットニュースにしてYouTubeなどの動画サービスで配信したりするなどして金を集めるビジネスモデルが問題になっている。
このコラムでも何回か取り上げたことがある女性支援団体Colaboは、ここ数年にわたって様々な誹謗中傷に晒されてきた(「女性支援団体Colaboの会計に不正はなし」及び「女性支援団体に対する執拗な嫌がらせの実態が明らかに」 参照)。そのきっかけをつくったともいえる、「Colaboは10代の女の子をタコ部屋に住まわせて生活保護を受給させ、毎月一人6万5千円ずつ徴収している」というデマを流した「暇空茜」を名乗る男性は、今年2月に書類送検されている。
こうした被害に対してColabo側は、名誉棄損だとして訴訟を起こしている。しかしその訴訟でさえ、被告側はやはり訴訟費用を上回るカンパを集め、またYouTubeやブログのコンテンツ化をして収益をあげている。暇空茜氏は、SNS上で「ぶっちゃけColaboからどんな名目で訴訟が来ても、訴額以上にNoteとYoutubeで稼ぐ自信があるので、金を払うので訴えてください」と公言している。
名誉棄損の有無にかかわらず、他者を誹謗中傷して注目を集め、相手から訴えられたらそれをコンテンツ化してさらに収益をあげるというこうしたビジネスモデルは、日本の司法制度に対する「ハック」であり、法秩序そのものを危険に晒しかねない。しかし、これを止める手段が今のところほとんど存在しないことが問題視されてきた。
北村氏の裁判の判決文で画期的なのは、雁琳氏のカンパについても言及していることだ。いわく、雁琳氏が「本件訴訟のために公然といわゆるカンパを募ることは」原告を貶める「同調者をあおるものといえる。これらは、原告の慰謝料増額事由として評価すべきである」。
この記事に関連するニュース
-
先輩から仕事を押し付けられ、いつも私だけ有休がとれません。訴えることは可能でしょうか。
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月14日 8時0分
-
母に捨てられ、虚無老後を送る〈年金12万円〉65歳・元公務員の父。哀れに思い〈月収54万円〉35歳長男が同居を受け入れも…次々に弁護士から「謎の封書」が届いたワケ【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月25日 11時45分
-
福島第1原発事故の避難者新潟訴訟、再び東電に賠償命令 国の責任は認めず・東京高裁控訴審判決
新潟日報 / 2024年4月19日 11時12分
-
「サケを獲ることは先住民族の権利」アイヌ民族の先住権の確認求める裁判 原告側の請求を棄却 札幌地裁
HTB北海道ニュース / 2024年4月18日 18時14分
-
「漫画村」運営者に17億3600万円超の損害賠償支払い命令 運営者は「著作権侵害に当たらない」「時効完成」と主張も退けられる
ねとらぼ / 2024年4月18日 17時51分
ランキング
-
1米大使、初の与那国島訪問=台湾情勢巡り中国けん制
時事通信 / 2024年5月17日 21時8分
-
2ロシア軍前進も「状況安定化」 ウクライナ、東部態勢強化
共同通信 / 2024年5月17日 19時41分
-
3台湾新総統誕生を前に…中国との関係に揺れる島 禁止された中国からの観光 土産物店は「早く解禁して欲しい」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月17日 16時58分
-
4プーチン氏、ゼレンスキー氏の正当性に疑問 戒厳令で大統領選延期
ロイター / 2024年5月17日 23時33分
-
5プーチン氏、米の二次制裁批判 「ドルの信認損なう」
ロイター / 2024年5月17日 22時58分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください