東大生が断言「頭が悪くてすぐにググる人はもっと頭が悪くなる」
プレジデントオンライン / 2020年12月10日 11時15分
■反射的にインターネット検索する人がハマる沼
みなさんは「考える」ことは得意ですか?
おそらく「自分は考えることが得意だ」
かくいう僕自身も元々はとても考えることが苦手でした。
しかし、ある時「効率の良い考え方のコツ」を編み出してからは、
社会に出ると答えの出ない問題ばかりとは言いますが、大人になるにつれ、「考える力」はより重要になってきますよね。実際、「うまい思考法」についての指南書は数多く出ています。
例えば、バーバラ・ミント氏による『考える技術・書く技術』(ダイヤモンド社)や、ロルフ・ドベリ氏の『Think clearly』(サンマーク出版)などが有名ですね。最近だと、現役東大生作家の西岡壱誠氏が書いた『東大思考』(東洋経済新報社)が話題を呼びました。
これらの、いわゆる「思考法」を説くような本は一定の周期に沿ってブームが起こります。これは、社会に出ると「考える」ということの重要性が増すということの裏付けなのかもしれません。
これらの本は、「うまい考え方」と「まずい考え方」について指南しています。誰でも「うまい考え方」の方法さえ学べば、頭の回転を速くすることができます。逆に言えば、「考える」ことの本質がつかめていない限りは、効率の悪い思考をし、時間を無駄にしてしまっている恐れがあるのかもしれません。
例えば、みなさんはわからないことに直面した時に、すぐにネットで検索していませんか? 実は、それこそが「悪い思考法」なのです。反射的にネット検索をしてしまう人は、どんどん効率の悪い思考法の沼にハマってしまっているのです。
その理由を述べる前に、「うまく考える」について考えたいと思います。いったいどうすれば、「正しい、効率の良い考え方」をしたことになるのでしょうか。
■一口に「考える」といってもさまざまな方向性がある
「わからない」と思ったことについて考え込んだ経験は、誰しもあると思います。僕自身もよく考え込んでしまうことがありましたが、なかなか答えが浮かばないまま、もどかしい時間を過ごしました。
しかし、それは本当に効率よく考えていたのでしょうか? わからないことを考えると言っても、これは非常に難しいことです。事実、「わからない」と頭を抱え、首をひねりながらも、実は知らず知らずのうちに考えているポーズを取っているだけになっている人というのは非常に多いのです。今回は「わからない」と頭を抱える前、つまり「考える前に行うべき必須の準備」についてお伝えします。
そもそも、「考える」時に、私たちの頭の中では何が起こっているのでしょうか? いったい何をすれば「考えた」ということになるのでしょうか?
「考える」と一口に言っても、さまざまな方向の思考があると思います。例えば、新規企画の立ち上げ時にみんなでブレストをする時などは、「新しい情報をひねり出す」という方向の思考になるでしょうし、何か自分にはわからない情報について頭をひねる時には、「ある不明な情報の分析を行い、理解を試みる」という方向の思考になるでしょう。
少なくともこの時点で全く性格の異なる二つの「思考」が出てきました。二つ以上の性格の異なる物事について一言で詳細に定義するのは至難の業ですから、一言で全ての思考を定義することは難しい、もしくは定義がアバウトになりすぎるであろうことがわかります。
ですから、ここからはあえて「わからないことを分析して理解する」という思考に絞って、「考える」という行為を定義していきます。例えば、次に書く英文の解釈を元にしながら、「わからない」の求め方を考えてみましょう。
■多くの人は「自分が何をわかっていないのか」を把握できていない
さて、突然ですが今からみなさんにクイズを出します。
“Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.”
……どうですか?
ちなみに、この文章は「
きっとGoogle翻訳にかけてもDeepL翻訳にかけても、
一体、なぜこの文章の訳はこんなに難しいのでしょうか?それは、
■「考えること」とは知識を運用すること
僕は「わからない」という状態は、「そもそも理解の前提となる知識が足りていない」もしくは「思考の目標設定があいまいである」の少なくとも一つを満たしているような状態だと考えています。
ある「わからない物事」があったとして、私たちがそれを理解するということは、非常に難しいことです。これをあえて言葉で説明するのであれば、「その物事についてどのような視点から問われた時にでも、過不足なく答えることができるようになる」ということなのではないかと思います。
ものすごくざっくりと言えば、ある物事について、ミクロな視点から問われても、マクロな視点から問われても、ある程度明瞭かつ簡潔な答えを返すことができれば、それはある程度理解していると言って差し支えないのではないかと思います。上記した例でいうのであれば、マクロな視点とは「英文の和訳」であり、ミクロな視点とは、「各単語の文中における品詞等々の文法的な役割」にあたります。
ですから、私たちがある「わからない物事」を理解するということには、二段階の理解が含まれているわけです。つまり、その情報の部分的な理解(ミクロな視点からの説明)と包括的な理解(マクロな視点からの説明)の両面が必須となっているわけです。
この二段階の理解を可能とするためには、「わからない対象についての最低限の知識」と「知識の正しい運用」の二点が必要です。そのため、思考を行うということは、「必要な知識を確認する」もしくは「知識を運用する」のどちらか、もしくは両方を行うということになります。
しかしながら、前者について、残念ながら私たちには脳内にない情報(=知らない情報)の検索をすることができません。知らないことは知りようがありませんから、それはもう調べるしかありません。ですから、一般的に「思考」という時には「知識の運用」を指すわけです。
■まずは「わかること」と「わからないこと」を整理する
では、どう運用すればいいのでしょうか? まず、この時点で僕らにできることは何があるのかといえば、せいぜい持っている知識と直面している問題の、それぞれについての確認くらいでしょう。
もっと具体的に言えば、自分の手持ちの知識の中で、問題の解決に当てはまりそうな知識を引っ張り出してきて再確認したり、目の前の問題の中でいったい何が問題となっているのかを考えるくらいしか打つ手段はありません。つまり、これは現状の把握と整理でしかありません。
それを踏まえて「考える」の定義をするならば、「対象を腑分けして『わかること』と『わからないこと』に分けること」となります。「自分には何がわかっていて、何がわかっておらず、それをわかるためには何が必要なのか」ということを考えることこそが、「わからないことを考える」という思考の本質なのです。つまるところ、「考える」ということは、結局情報の整理にすぎません。
■わからないことを具体化して思考の負荷を減らす
ここで、先ほどの英文を再度見てみましょう。
“Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.”
多くの人にとってなかなか読むのが難しいであろうこちらの文ですが、それではいったい何がわからないからこの文章がわからないのでしょうか? 逆に、自分はどこまでこの文章についてわかっているのでしょうか?
これを「自分はこの英文の○○という箇所がわからないから意味がわかっていないのである」と滞りなく言語化できる人は、やはり少ないでしょう。もちろん、「単語がわからないから」「文法がわからないから」くらいのレベルではいけません。それではあまりにも目的があいまいすぎます。
「思考」というものはあくまで思索という運動、手段でしかありません。わからないことを把握しないままで思考に入るのは、目的地もあいまいなままに走り出すようなもので、「夕日に向かって走り出せ!」と言われているのと変わりません。目的が散歩でしかないのであればいいのですが、たどり着きたい目的地があるのであれば、きちんとルートを定めてから歩き出す必要があります。
「思考」というものはあくまで情報整理にすぎず、なんでもかんでも思考任せにしてはいけないわけです。むしろ、うまく考えるためには、思考の負荷を減らしてやる必要があります。例えば、「この文章の主語と動詞がどれなのかわからない」といったように具体化することです。これならば調べる方法はあります。
■どこから手を付けていいのかわからないから難解に見える
英文の理解には、最低でもその文章の主語と述語を理解することが必須となります。例文は一見して「主語と述語を把握しにくい」文章でした。だからこそ、どこから手を付けていいのかわからない、難解な文章になってしまったわけです。逆に言えば、これは主語と述語の位置さえわかれば、そこをヒントにしてたどっていくことができます。
そして、主語と述語は通常品詞が異なります。前者は名詞句が、後者は動詞句がそれぞれあてられますが、例文には一種類の単語“buffalo”という語しかありませんでした。ここまでくれば「“buffalo”には名詞と動詞、両方の用法があるのかもしれない」と思い当たることができます。
ここから“buffalo”について調べれば、例文には「バッファロー市(地名)」と「バッファロー(動物)」と「いじめる(動詞“buffalo”の意味)」という三種類の“buffalo”が使われていたという事実にたどり着くことができます。ここまで来たら「バッファロー市のバッファローがいじめるバッファロー市のバッファローは、バッファロー市のバッファローをいじめる」(=バッファロー市のバッファローはバッファロー市のバッファローにいじめられているが、バッファロー市のバッファローをいじめている)というように訳出できるでしょう。
■検索は「わからないことを把握してから」
このようにして、一見したところで難解なものでも、思考を通じて自分のわからないもの、わかりたい対象を明らかにして、少しずつ問題を小分けにしながら明らかにしていけば、どんなものでも必ず理解することができます。「上記した英文を理解しよう」では目標がざっくりとしすぎていますが、「上記した英文の主語と述語がどこか調べてみよう」「“buffalo”にいくつの用法があるか調べてみよう」なら、目標設定が具体的で打つ手もありますよね。
Google検索を使って調べものをするのであれば、本来はこのタイミングで行うべきなのです。わからないことさえも把握しないままに検索をかけても、どの情報をどのように調べるのかわかっていないので、無駄に時間を消費するだけだからです。先ほどの例でいうと、目的もないままに取りあえず“buffalo”という単語を調べても、辞書のどの用法を見ればいいのかわからないでしょう。
「わからない」ということは、実はそんなに難しいことではなく、単に自分に知識がない、もしくは、そもそも何がわかっていないのかがわかっていないというそれだけである場合が多々あります。
ですから、これまですぐにGoogleに頼っていたという方は、まずは具体的な目標の設定をしたうえで、必要な情報を整理するプロセスを実行してみてください。たったこれだけのことですが、驚くほど効率が上がるはずです。
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現役東大生
1997年生まれ。一浪の末、東大合格を果たす。現在は、自身の勉強法を全国に広めるための「リアルドラゴン桜プロジェクト」を推進。また、全国の子供たちを対象として無料で勉強を教えるYouTubeチャンネル「スマホ学園」にて授業を行うなど、精力的に活動している。著書に『東大式節約勉強法 世帯年収300万円台で東大に合格できた理由』(扶桑社)。
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(現役東大生 布施川 天馬)
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