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健康診断で「尿酸値が高い人」は要注意…サウナや筋トレが「全身の血管をボロボロ」にするメカニズム

プレジデントオンライン / 2023年10月8日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

健康診断で「尿酸値」が基準値を超えていたら注意が必要だ。大阪大学大学院特任准教授の野口緑さんは「手足の関節などに激痛が走る『痛風』を警戒している人が多いが、それだけではない。尿酸値が高い人は、血管の内皮細胞が炎症を起こし、全身の血管で動脈硬化が進む恐れがある」という――。

※本稿は、野口緑『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■尿酸値が高い人は「血管が痛み始める段階」

尿酸値は、メタボ健診の必須項目には入っていませんが、とても大切な検査項目です。

尿の中に排泄されることから「尿酸」という名前がついていますが、尿検査ではなく、血糖値やコレステロールと同じく血液検査で調べます。

そして、尿酸値が基準値を超えていると、血管障害が少し進み、「血管が傷み始める段階」になっていると考えられます。

尿酸とは、腎臓から捨てられる老廃物の1つです。抗酸化物質でもあるので、必ずしも悪者ではなく、ある程度の量は体に必要な物質です。中には遺伝的に尿酸がつくれず、極端に尿酸値が低い「低尿酸血症」の人がいます。そういう人は活性酸素によって血管が傷み、動脈硬化が進みやすい可能性があります。

一方、尿酸は多過ぎても血管の内皮細胞に炎症を起こし、やはり血管障害を進めてしまいます。

■予防のためには6.0mg/dL以下をキープ

高尿酸血症の診断には「6、7、8のルール」というのがあります。

尿酸は、少量なら体にプラスに働きますが、血液中の量が6.0mg/dLを超えるとマイナスに働き、7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断されます。

ただ、7.0mg/dL超で8.0mg/dL未満の人は、生活習慣を見直すことで改善が見込めます。

そして、8.0mg/dL以上で、腎障害、高血圧、糖尿病などの合併症を伴う場合は薬物治療の対象になり、9.0mg/dL以上になると合併症の有無にかかわらず薬物治療の対象になります。

つまり、6.0mg/dL以下を維持することが予防のためには大事、7.0mg/dL超で高尿酸血症と診断され、8.0mg/dL以上で(合併症があれば)薬物治療を始める、というのが「6、7、8のルール」の基本的な考え方です。

■関節にたまった結晶がはがれると痛風に

尿酸というと、「痛風」を思い浮かべる人は多いですよね。痛風の発作が起こると「風が吹いても痛い」ほどの激痛で歩くこともできない、という話をよく聞きます。もちろん会社に行くどころではなく、救急車を呼ぶ人も少なくありません。

血液中に尿酸が多くなると、溶けきれなくなり結晶化します。特に、血液循環が悪く体温の低い手足の関節などにたまりやすく、この固まりを尿酸塩結晶といいます。この結晶が関節内ではがれ、それを白血球が処理する際に炎症が起きて腫れ上がるのが痛風の発作です。

痛風の発作が起きるということは、関節に尿酸塩結晶がたまるほど尿酸値が高いということ。尿酸塩結晶はイガグリのような形をしています。そこで私は、痛風の発作が起きるかどうかに関係なく、尿酸値が上がっているということは、「血管の壁をイガグリのトゲでガリガリひっかいているイメージ」と説明しています。

痛風の痛みに苦しむ男性
写真=iStock.com/jittawit.21
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jittawit.21

■高尿酸血症で怖いのは痛風だけではない

尿酸値が高いと必ず痛風の発作が起こるとは限りませんが、7.0mg/dLを超えた高尿酸血症の人は関節に尿酸塩結晶が沈着している可能性が高く、いつはがれて発作が起こってもおかしくない状態です。

いったんできた尿酸塩結晶は、尿酸値が6.0mg/dL以下にならないと溶けません。そのため、最初の発作はかなり尿酸値が高くないと起きないものの、1回起きた人は6.0mg/dL台まで下がっても起こるといわれています。

さらに、痛風や高尿酸血症が長期間持続すると、腎臓に尿酸塩結晶が沈着して腎臓の働きが悪くなり、「痛風腎」と呼ばれる状態になることがあります。ひどくなると透析が必要になることもあります。

ただし、痛風は高尿酸血症の局所的な1つの病態に過ぎません。痛風発作よりももっと怖いことがあります。それは高尿酸血症になると血管の内皮細胞が炎症を起こし、血管障害が進むことです。

その結果、全身の血管に炎症が起きて動脈硬化が進んでしまいます。

■メタボの人は高尿酸血症のリスクが高い

高尿酸血症の最も重要な危険因子はメタボです。内臓脂肪が蓄積していると、尿酸の前駆物質であるヒポキサンチンがキサンチンに代謝され、さらに尿酸へ変換される経路が活発になることが明らかになってきています。

さらに、メタボの状態にあって高インスリン血症の状態になると、腎臓の糸球体でいったん捨てたはずの尿酸の再吸収が進み、結果として尿酸の排泄量を減らしてしまうのです。

つまり、内臓脂肪が蓄積していると、尿酸の産生が活発になるのと同時に尿酸の排出量が減り、高尿酸血症になるわけです。さらに、慢性腎臓病の発症率も高くなります。

痛風発作の有無にかかわらず、とにかく尿酸値が6.0mg/dLを超えないように注意することが大切なのです。

■鶏レバーや白子はプリン体が「極めて多い」

尿酸は、細胞の核の中にある核酸の主成分「プリン体」が分解されてできる老廃物です。古くなった細胞を分解する新陳代謝の過程で、細胞の中に含まれるプリン体を材料にしてつくられます。

筋肉痛が起きるくらいの激しい筋トレをすると、筋肉の細胞が壊れます。すると細胞の老廃物である尿酸が増えます。もしかするとボディビルダーには高尿酸血症の人が多いかもしれません。女性は筋肉量が少ないので男性に比べて尿酸値が低く、そのため痛風患者の9割以上は男性です。現在の検査結果の基準値は男女とも同じになっていますが、女性で6.0mg/dLを超えていたら少し高めだといえます。

ご存じの通り、食品にもプリン体が含まれています。プリン体を含む食品を食べると、それを材料にして肝臓で尿酸が合成されます。つまり尿酸は、「細胞のリサイクル」と「食品由来」という2つの経路からつくられるのです。

プリン体は、細胞がぎっしり詰まっている食品に多く含まれます(図表1)。レバーなどのモツ類、干物などですね。「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」第3版では、高尿酸血症の人はプリン体の1日の摂取量を400mg程度に抑えるように推奨しています。

【図表1】プリン体の多い食品の例
出所=『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』

■「サウナ→ビール」で尿酸値は一気に上昇

一般的に、血液中に尿酸は1200mgあり、これが過不足のない状態です。そこに、新たに肝臓で1日に700mgつくられ、不要になったものが尿から500mg、便から200mg、毎日排泄されて均衡が保たれています(図表2)。

【図表2】尿酸の産出と排泄
出所=『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』

しかし、メタボなどの理由で尿酸の産生が活発になったり、食事由来のプリン体を多く摂取したり、さらには、発汗が多く、水分摂取が少ないなどの理由で尿量が減り、尿からの排泄量が低下したりすると、血液中に余りが出てきます。これが高尿酸血症です。

尿酸の排泄量の低下といえば、水分の摂取が少なく、脱水状態になった場合も、尿酸が排泄されないので尿酸値が上がります。アルコールは脱水を進めるので排泄量の低下を起こして尿酸値が上がります。従って、サウナでたっぷり汗をかいてからビールを飲むなんて最悪です。一気に尿酸値が上がってしまうわけです。

■お酒を飲むときは必ず一緒に水を飲む

尿酸値を上げない方法ですが、一番は何といっても「水分摂取」。なぜなら、水分をとらないと尿量が減って、尿酸を捨てられないからです。尿酸値が高い人は、1日に1.5~2Lの水を飲むことを心がけてください。

水分といっても、お酒やカフェインの入っているコーヒーは、利尿作用があるのでお勧めしません。ただの水を飲むか、麦茶、玄米茶などカフェインの入ってないお茶を飲みましょう。野菜は水分を多く含むので、野菜を食べることは水分摂取にも役立ちます。

お酒を飲みたいときは、必ず水を一緒に飲んでください。アルコールは、利尿作用で飲んだ量以上の水分が出てしまうのですが、水を一緒に飲めば脱水を予防できます。

また、お酒といえば、尿酸値を気にしてプリン体の多いビールを避けて、プリン体ゼロの焼酎やハイボールを飲むようにしている人が多いですよね。でも実は、ビールに含まれているプリン体は、量だけで見れば大したことはありません。

■プリン体ゼロのビールでも飲み過ぎたら台無し

それよりもアルコールそのものに尿酸値を上げる作用があります。アルコールが分解される過程で尿酸の合成が促進され、さらにアルコールの利尿作用で尿酸が排泄されにくくなるためです。プリン体ゼロのビールでも、たくさん飲めば確実に尿酸値は上がります。

尿酸値を気にするなら、飲むお酒の種類よりも、アルコールの量や、干物やモツなどおつまみとして食べるものに含まれているプリン体の量を注意しましょう。細胞をたくさん摂取すると、プリン体を摂取してしまうことになります。水分が抜けた状態である干物は、少量とるだけでも細胞を多くとることになるため、特に注意が必要です。

尿酸値を上げないためには、厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」としている純アルコールで1日平均20g程度(ビール500mL、日本酒1合、ワイングラス2杯程度)を守ることが大切です。

■フルーツに含まれる果糖にも注意

アルコールと同様、とり過ぎを避けたいのはフルクトース(果糖)です。果糖はもともとフルーツに含まれている糖分で、これにブドウ糖が結合すると砂糖(ショ糖)になります。清涼飲料水に含まれている果糖ブドウ糖液糖は、果糖とブドウ糖の混合液です。果糖は、尿酸の前駆物質を尿酸に変える代謝を促進するため、多くとると尿酸が増えてしまうのです。果汁100%のジュースやスイーツにもたくさん入っているので気を付けましょう。

野口緑『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)
野口緑『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)

フルーツはヘルシーなイメージがありますが、最近のものは甘みが強く、果糖が多くなっています。厚生労働省では、1日200g程度のフルーツを推奨しています。リンゴなら1個、ミカンなら2個、バナナなら1本です。基本的には、1日80kcal以内にとどめるのが目安です。

また、メタボを防ぎ、内臓脂肪を減らすことでも、尿酸を減らすことにつながります。

そのためには食事に注意するとともに、運動も欠かせません。内臓脂肪を減らすのはウォーキングや水泳などの有酸素運動。激しい筋トレをすると尿酸値が上がるので、その意味でも負荷の少ない有酸素運動がお勧めです。

【尿酸のポイント】
・尿酸というと「痛風」を思い浮かべる人が多いが、高尿酸血症で怖いのは痛風だけではない
・高尿酸血症になると血管の内皮細胞が炎症を起こし、血管障害が進む。内臓脂肪がたまっていると高尿酸血症になりやすい
・高尿酸血症の人はプリン体の1日の摂取量を400mg程度に抑えよう
・メタボの予防・改善、果糖のとり過ぎ防止、水分摂取も重要

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野口 緑(のぐち・みどり)
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
1986年、兵庫県尼崎市役所入庁。2000年から総務局職員部係長として、メタボに着目した独自の保健指導で実績を上げ、「スーパー保健師」として注目される。環境市民局課長、市民協働局部長、企画財政局部長を歴任し2020年退職。2013年から大阪大学大学院招聘准教授、現在は大阪大学の特任准教授として、生活習慣病予防、保健指導介入の効果や手法の研究を行う。医学博士。

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(大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授 野口 緑)

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