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居酒屋の店員に「おあいそしてください」はあまりに恥ずかしい…間違って覚えられている日本語6選

プレジデントオンライン / 2024年2月13日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MeePoohyaphoto

日常生活で間違えやすい日本語は何か。中国文献学者の山口謠司さんは「レストランや居酒屋の店員に『おあいそしてください』は明らかに使い方が間違っている。『おあいそ』とは、もともと店の主人が『愛想がなく、行き届いたまかないができずに、申し訳ありませんでした』という意味で、客に対して使う言葉だった。お店で会計を依頼するときには、きちんと『お会計をお願いします』と言ったほうがいい」という――。

※本稿は、山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■本来の意味をほとんどの人が知らない言葉

檄を飛ばす

スポーツ中継などを見ていると、よく「コーチが選手に檄(げき)を飛ばしていますね」というコメントを耳にすることがあります。

これは、もちろん「激励している」「応援している」という意味で使われているのですが、この使い方は誤りです。

「檄」とは、もともと「自分の主義、主張を書いた文書」のことです。

市ヶ谷の防衛庁(現在の防衛省)で三島由紀夫が自決したとき、「檄」という声明文を撒布し、絶叫していたことを知っている方も少なくないのではないでしょうか。三島は、檄を飛ばして、聴衆が自分の意見に共鳴するよう呼びかけたと言います。

「檄を飛ばす」とは、もともと「人々を呼び集める」「自分の主張に共鳴するように呼びかける」という意味で使われていた言葉です。

ところが、2000年頃には「元気のない人に、刺激を与えて活気付けること」という意味だと思う人が、日本語を使う人の約7割以上になったのです。

これは、「檄」と激励の「激」がよく似た漢字であり、本来の意味にある「人に対する呼びかけ」の部分が、「激励している」「応援している」という意味と混同するようになったからだと考えられます。

本来の意味を知る人は、これからますます少なくなってしまうでしょう。

■海外で「あなたはハッカーだね」は褒め言葉

ハッカー

全世界で、電子マネーが使われるようになってきています。みなさんの中にも、決済はすべてカードやスマホで、現金は使わないという人が、徐々に増えてきているのではないでしょうか。わざわざお金をおろしに銀行に行かなくてもいいなんて、とても便利な世の中です。

ただ、恐いのは、自分のパソコンや会社の決済などが、覗かれたり、破壊されたり、不正行為が行なわれることです。私たちは自分がまったく気が付かないうちに、機密情報や個人情報が盗まれている危険性と隣り合わせになりました。

こういうことをする人を、日本では世間一般に「ハッカー」と呼びます。ですが、正式にはこの呼び方は間違いです。

「ハッカー」とは、英語で「コンピューターやインターネットなどについて造詣が深い人」という意味で、本来は、「不正アクセスをする人」のことではありません。

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写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

海外などで、「あなたはハッカーだね!」というと、「コンピューターの知識に長けた人」といういい意味で捉えられるのです。

パソコンを使って不正をする人は、英語では「クラッカー」、あるいは「セキュリティー・ハッカー」と呼ばれます。

また、「ハッカー」本来の意味が転じて、「不正アクセスをする人」という使われ方が浸透してきた今日の海外では、意味を区別するために、本来の意味の「ハッカー」を「ホワイトハッカー」、犯罪者という意味の「ハッカー」を「ブラックハッカー」と呼ぶこともあります。

海外に行って、「クラッカー」のことを「ハッカー」と言っていると、不正アクセスする人のことを褒めているように誤解されるかもしれませんので、要注意です。

■客に対して使う「おあいそ」が「会計」を表す言葉に

おあいそ

レストランや居酒屋に行ったとき、店員に対して「おあいそしてください」と、言う人がいます。

これは、明らかに使い方が間違っています。

「おあいそ」とは、もともと店の主人が

「愛想がなく、行き届いたまかないができずに、申し訳ありませんでした」

という意味で、客に対して使う言葉だったのです。

たとえば、お寿司屋さんに行って、カウンター(本当は「つけ場」と呼ぶ)で、客が「ごちそうさまでした」と言うと、それに対して寿司職人が「おあいそ」と言いながら、勘定書を示していたのです。

この「おあいそ」が、いつのまにか「会計」を表す言葉として使われるようになり、客のほうから「おあいそ」と言うようになったのでした。

客が、お寿司を握る職人さんに「愛想がなくて、ごめんなさい」と言うなんて、おかしくありませんか?

お店で会計を依頼するときには、「おあいそ」なんて言葉を使うのではなく、きちんと「お会計をお願いします」と言ったほうがいいのです。

■接続詞として用いるのが正しい使い方

閑話休題

中国の小説に「四大奇書(よんだいきしょ)」と呼ばれるものがあります。『三国志演義(さんごくしえんぎ)』『水滸伝(すいこでん)』『西遊記(さいゆうき)』『金瓶梅(きんぺいばい)』です。「奇書」というのは、「世にもまれなほど卓越した書物」という意味です。

さて、そんな複雑な話を描く小説には、必ず「脇道にそれての説明書き」が必要になってしまいます。

「閑話休題(かんわきゅうだい)」とは、『水滸伝』に由来する言葉です。

『水滸伝』には「閑話休題、言正話乎」、読みくだすと「閑話を休題し(脇道にそれた話を止めて)、正話(せいわ)を言わんや」という言葉で使われています。

現在の日本語で「閑話休題」と言うと、「本題から脱線した話をする」という使われ方をされることがありますが、じつは、これは本来の意味とはまったく逆なのです。

話が横道にそれてしまったことを示したいときに、是非、使ってみてください。

「閑話休題」の正しい使い方の例文を紹介しましょう。

「閑話休題(雑談はさておき)、先ほどの議事に戻りましょう」
「閑話休題(ここまでの話は前置きです)、さて、ここからが本題です」
「閑話休題(いろいろな事情はありますが)、規則について本気で話し合いましょう」

このように、前置きとして「閑話休題」を使い、円滑な会話や文章を構成しましょう。

■本当に感動したときには、身体が震え、思わず涙が出て来る

鳥肌が立つ

人の身体の感覚というのは本当に不思議なものですね。ゼロコンマの速さで、目に入ってくる小さな虫の侵入を阻んだり、本当に小さな石でも足の裏にあると歩きづらさを感じたりします。

ところで、みなさんはどんなときに、自分の両腕の肌が、羽を取ったニワトリの肌のように、毛穴の周りが盛り上がったように見えますか。

いわゆる「鳥肌が立つ」現象です。

鳥肌
写真=iStock.com/Antonio_Diaz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Antonio_Diaz

最近の若い人は、「鳥肌が立つほど感動した」と頻繁に言うようですが、じつは、人は感動したときには鳥肌は立ちません。

鳥肌が立つのは、人が寒気のするような恐怖を感じたときです。あるいは、強い寒さ、悪寒を感じた場合に限るのです。

そもそも「鳥肌が立つ」という言葉は、「寒さや恐怖によって皮膚が収縮すること」を意味します。「鳥肌」は「鳥の皮膚」を意味し、「立つ」は「毛が逆立つ」という意味です。つまり、「鳥肌が立つ」とは、鳥の皮膚のように毛が逆立つような状態を指します。

これは、毛穴の根元にある立毛筋(りつもうきん)という筋肉の収縮によって引き起こされます。立毛筋は、寒さから体を守るために毛穴を閉じ、体温を逃がさないようにしてくれるのです。

本当に感動したときには、身体が震え、思わず涙が出て来ます。

「鳥肌が立つほどの感動」というのは、芸人さんが感動を大げさに表現しようとして使われた、間違った日本語なのです。

■「気が置けない関係」は、仲が良い? 悪い?

気が置けない

私の授業を受けている学生が、「あの先生は、気が置けない人だからね」と、大学の事務から言われて、飛んでやってきました。「先生は、単位をなかなかくれない怖い先生なのでしょうか。履修はしない方がいいでしょうか?」と言うのです。

わざわざ聞きに来る学生の度胸も大したものですが、彼は「気が置けない」の意味を間違って捉えているようです。

「気が置けない」という言葉は「気を遣う必要がない人」「気が許せる人」「遠慮などする必要がない人」という意味ですが、最近の人たちは、そういう意味ではなく、まったく反対の意味だと思っているようです。

山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)
山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)

平成18(2006)年度の「国語に関する世論調査」では、

(ア)相手に気配りや遠慮をしなくてよいこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42.4%
(イ)相手に気配りや遠慮をしなくてはならないこと・・・・・・・・・・・48.2%

と、すでに、本来の意味とは、まったく逆の意味だと思って使っている人が多くなっています。

おそらく今日では、(イ)の意味で使っている人がさらに多くなっているに違いありません。

この言葉を使うときは、ほとんどの相手が反対の意味として捉えてしまうため、「気が置けない人だから、遠慮もしない、気も遣わないで楽しく会話できるよ」と、意味を補足しながら言うといいと思います。

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山口 謠司(やまぐち・ようじ)
中国文献学者
1963年、長崎県生まれ。大東文化大学文学部教授。博士(中国学)。大東文化大学大学院、フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。英国ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て現職。専門は書誌学、音韻学、文献学。『日本語を作った男 上田万年とその時代』(集英社インターナショナル)で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書に『世界一役に立つ 図解 論語の本』『品がいい人は、言葉の選び方がうまい』『読めば心が熱くなる! 中国古典100話』『日本人が忘れてしまった日本語の謎』(以上、三笠書房《知的生きかた文庫》)、『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(自由国民社)、『文豪の凄い語彙力』(新潮文庫)、『語感力事典』(笠間書院)、『文豪の悪態』(朝日新聞出版)、『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』(さくら舎)、『明治の説得王・末松謙澄』(集英社インターナショナル)など多数。

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(中国文献学者 山口 謠司)

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