ゴマすり男は出世するか
プレジデントオンライン / 2013年7月17日 9時45分
■すり方が下手だから軽蔑される
結論から言うと、ゴマすり男は出世します。人間、好きな人を依怙贔屓するのは当然ですから。
ゴマすりが軽蔑されるのは、すり方が下手だから。上手にゴマをすれば、誰だって必ず出世します。
下手なゴマすりとは、どう見ても不細工な人に「すごいハンサムだね」と言うなど、皮肉と受け取られかねないもの。それから特定の人だけにゴマをすることです。目下には威張るくせに、目上には媚びを売るからよくない。上にゴマをすりながら、同時に下へもゴマをすることが大事です。
たとえば部下に「キミ、すごくできるよ。俺のほうが先に入社したけど、俺を気にせずどんどん上へ上がってくれ」などと言ってあげると、下の人たちからも「あの人はいい人だ」と持ち上げてもらえる。それを見た上司は「こいつなら上と下のいいパイプ役になる」と思って引き上げてもらえるので出世できる。
ゴマすりは人間関係のスキルですから、練習すればするほどうまくなる。相手の選り好みをしているとあまり練習の機会に恵まれませんが、会う人すべてにゴマをすっていれば、その分練習量が加算されてうまくなっていきます。上下の関係だけでなく、同僚や他部署の人、取引先にもゴマをすりましょう。相手を選んでゴマをすっているようじゃ、まだまだ。
しかもゴマをすりまくることが日常の一部になれば、まったく苦痛ではなくなります。呼吸したり歩いたりするのと同じように、無自覚に出るようになったらゴマすりも本物。どうせゴマをするなら、このレベルまでいかないと。
ただし「中途半端にゴマをするのはよくないんだな」と思ってやめてしまってはいけません。なぜなら最初はみんな中途半端だから。英会話と一緒で下手だからといってしゃべらなければ、いつまでも下手なまま。継続は力なりです。
ゴマすりとは歯の浮くようなお世辞を言うことではありません。ほめるのがイヤなら、話しかけるだけでも立派なゴマすりに。こちらから挨拶をするだけでも、「私はあなたを認めています」というサインになる。昔から言われるホウレンソウ、つまり「何もなくても上司に報告する」なんていうのはゴマすりの最たるものでしょう。それから笑顔をつくるのは、「あなたを受け入れています。あなたが好きです」というサイン。だから、そういうサインを出している人は、ゴマをすっているつもりがなくても、運とかビジネスチャンスが寄ってくる。いわゆる愛想があるというやつです。
言葉だけでなく動作もポイント。待ち合わせ先で相手の姿が見えたら100メートル先から小走りで走り寄る。上司に呼ばれたら声だけで返事をするのではなく、立ち上がって上司のほうに行こうとする素振りを見せるなど、細かいテクニックはたくさんあります。
高等テクとしては、人間はだいたい自分と似ているものが好きですから、上司の服装や持ち物を真似するのも効果的です。上司がいつもワイシャツの袖を腕まくりをしていたら、自分も腕まくりをする。上司がノーネクタイなら自分もノーネクタイ。
「その格好、俺と似てるな」と言われたら、「ああ、そうですね。自分では気がつかなかったけど、憧れてると自然に似ちゃうのかな」みたいな独り言をボソッと言えればもう完璧です。
「仕事を一所懸命やって成果を挙げれば、ゴマをする必要はない」という反論もあるかもしれません。しかしカーネギーメロン大学で行われた研究によれば、どのような業種であれ、仕事が成功する要因は85%が良好な人間関係によるもので、残りの15%が仕事そのものの実力だという結果が出ています。
ちなみに僕は今まで200冊以上本を出していますが、文才なんか全然ない。ひたすら編集者にゴマをすって、いい関係を築くことに腐心してきただけ。この僕が言うのですから、「ゴマすり男は出世する」のは本当ですよ。
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立正大学特任講師。アンギルド代表取締役。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。ビジネスシーンを中心に日常生活で実践できる心理学を研究。『「努力」が報われる人の心理学』など、著書多数。
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(心理学者 内藤 誼人 構成=長山清子)
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