1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

イオンシネマ車いす騒動、必要だった“合理的配慮”とは?欧米の映画館との大きな違いも

日刊SPA! / 2024年4月9日 8時50分

 この問題で、「どうすればいいんだ」と困っている人は多いのではないでしょうか。これについて、前出の株式会社ユーディット関根さんはこう語ります。

「合理的配慮の前に、本来は事前的改善措置とよばれる環境整備があるべきです。日本の場合、2000平米以下の民間の建物やオフィス、商店はアクセシブルにする法律はありません。つまり中小企業や個人商店のようなところほど、インフラが整っていないのに、合理的配慮を求められると人力での対応を強いられる仕組みなのです。しかしアメリカでは、建物やWebサイトを新規に作るときには、使いやすく・移動しやすくすることが義務なのです」

◆欧米では30年以上かけてインフラ整備

 アメリカでは1990年にADA(Americans with Disabilities Act 障害を持つアメリカ人法)が施行されました。

 障害者が雇用や公的サービスや公共施設の利用、交通機関において差別をしてはならないと定められたのです。設備が整っていなければ仕事もままなりませんから、これらがまとめて制定されるのは当然です。また商業施設も政府が定める基準に適合しなければいけません。ADAは、障害者のための特別な配慮ではなく、障害者と健常者の差別をなくす目的で作られています。

「そのため映画館もレストランもオフィスも、UDであることが当たり前で、そうでないものを建築すると、まず営業許可が下りません。それを作った設計士は免許剥奪の上、罰金刑という厳しい州もあります。こうして欧米では法整備のもと、30年以上かけて社会インフラをUDにしてきました」(関根さん)

◆アメリカの映画館で筆者が感じたこと

 アメリカ在住で、かつてアクセシビリティを専門に仕事をしていた金子雅彦さんは「車いす席はどの映画館でも、たいてい一番いい場所に設置されている」と言います。

 筆者はちょうど3月にアメリカに行っていたので、試しに映画館に行ってみました。会場ど真ん中の最良席が車いす席です。

 この映画館ではすべてのスクリーンで車いすが入れました。

 試しに受付の方に「車いすの観客が運んでくれと言ってきたらどうするか」と聞いてみました。すると、「自分は大学生のころ、車いすのクラスメートがいたので対応した経験があるからできる。言われたらやると思うけど、経験がなかったら怖いのでマネージャーに相談すると思う」とのことでした。

 ちなみに、これまで車いすを担いでくれと言われたことはないかと聞いたところ、「ない」そうです。映画館は段差がなく、すべてのスクリーンに車いす席があるのだから、当たり前ですね。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください