日本企業が抜け出せなくなった貧乏"症"の正体 いつのまにか儲からない事業が氾濫している訳
東洋経済オンライン / 2024年1月3日 16時0分
にもかかわらず、「ものづくり」なる、過去の成功体験を過剰に美化した言葉に逃げ込み、アジア企業との価格競争にも「歯を食いしばる」ことで耐えようとしている。
儲からない事業から抜け出せない
さらに悪いことに、日本企業の多くは「儲けは二の次」で、既存社員の雇用維持のほうを優先しようとする。いわゆる終身雇用(高齢化している現代では、もはや終身ではないのだが)の建前を維持するために、儲からない事業でも継続することになる。
儲からない事業の多くは創業時からの事業であることも多く、そこから撤退する判断を行おうとする経営者が現れない。こうやって「貧乏症」(儲からない体質が慢性化した病気)に陥ってしまうのである。
若い世代の起業家たちは、社会課題をビジネスチャンスにするというところまでは理解できているはずだが、儲かるビジネスモデルのお手本が日本国内にあまりないので、同じ失敗に陥ってしまう危険性がある。
ではどうすればいいのか? 根本は、「困りごと」を徹底的に理解することである。少数でもいいので、本当に困っている人を特定して、「お金を払ってでも解決したい」という課題に絞って、商品やサービスを設計するのである。
例えば、共働きの夫婦にとって夏休みに子供が学校に行かないということは、実は大きな「困りごと」である。小学校の高学年くらいであれば、自分で遊びにも行けて、塾や習い事にも行けるが、低学年ではそうはいかない。学童保育サービスも夏休みには対応してくれないところもある。
そうした子供を数日預かって「サマーキャンプ」に連れて行ってくれるサービスなどは、そうした「困りごと」の解決策となりうる。もちろん、その料金(必ずしも安くない)を払える親でないと利用できないのだが、高収入の両親であれば(社内で要職についている可能性も高いので自分たちはあまり休めないこともあり)、リピート顧客になってもらえるかもしれない。
「儲からない」ビジネスになる要素
「困りごと」を特定するうえでは、既存の代替サービスが存在しないことを確認することも重要だ。サマーキャンプは、子供の自立を促すという意味でも代替があまりないサービスであり、夏休みの子供を数日預かるという意味でも競合のあまりないサービスである。
ここで、もっと多くの顧客を獲得しようとして、値段を下げたり、日数を短くしたり、体験内容を薄めてしまうと、客数は増えるかもしれないが、単価が下がってしまい、子供や親の満足度も下がってしまうために、リピートが見込めなくなり、儲からなくなってしまう。中身の薄いキャンプになると、習字やピアノなどとの差があまりなくなってしまい、代替の対象が広がる可能性が高くなる。
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