「ソニー」が引き金に?決済ビジネス再編の足音 米投資ファンド「ソニー銀行子会社」買収の思惑
東洋経済オンライン / 2024年2月9日 7時30分
2024年1月末をもって、SPSVに対するソニー銀行の出資比率は57%から20%へと下がった。一定の資本関係を維持したのは、SPSVが引き続きソニーの屋号を掲げることに加え、ソネットやソニーミュージックなど、グループ企業向け取引を当面は継続するためだ。
SPSVには少数株主としてJCBや三井住友カード、イオンフィナンシャルサービスといったクレジットカード会社が存在していたが、各社は株式を保有する意義が薄れたとして、ブラックストーンへの売却に同意した。
ファンド傘下で再出発を図るSPSV。株式を取得したブラックストーンは経営体制を補完し、収益力を高めて3年程度で上場させたい考えだ。小売業者への営業強化や周辺サービスの拡充と合わせて、成長戦略の柱に位置づけるのがM&Aだ。
e-SCOTTを武器に陣容を拡大
前述の通り、SPSVは自前のネットワークであるe-SCOTTを抱える。買収を通じて決済件数や取扱高を増やすだけでなく、買収先の会社にe-SCOTTを導入させてネットワークに相乗りする企業を増やす戦略が取り得る。
「ネットワークを変えるだけで、収益性はかなり上がる。中堅以下で、単独でやっていくのが難しい方々(決済代行会社)を仲間に入れたい」(坂本代表)。
買収先としては独立系だけでなく、SPSVのように特定の企業グループに属する企業も含めて、幅広い決済代行会社がテーブルに載っているという。
再編機運はSPSV以外でも高まっている。
りそなホールディングスは2022年11月、SPSV同様に業界の4強であるDGフィナンシャルテクノロジーを擁するデジタルガレージと資本業務提携を締結。さらに2023年12月には、出資比率を2%から12%まで引き上げることに合意した。
りそなの法人顧客への決済サービス提供や、逆にDGフィナンシャルテクノロジーの決済加盟店への金融サービス提供を目論む。
市場が拡大する一方、新規参入業者も多く競争が激化する決済代行業界。銀行法のくびきから解き放たれ、ファンドの資金力を後ろ盾に買収攻勢の構えを見せるSPSVが、再編の引き金を引く可能性がある。
一井 純:東洋経済 記者
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