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内陸県に海を思わせる「八潮市」地名のナゾを追う 住民が守った日本唯一の地名"垳"は何と読む?

東洋経済オンライン / 2024年2月19日 11時50分

しかし、これに対して住民有志から「垳」という地名を守る運動が起き、2012年の市議会には町名変更見直しの請願書が提出され、賛成多数で採択された。これにより、「垳」という地名は守られた。

工業化が呼び寄せたイスラーム文化

もう1つユニークなものとして紹介したいのは、八潮市内にパキスタン料理店が複数立地していることだ。

以前、蕨市を紹介した記事(「東京駅から30分、日本最小「蕨市」の知られざる魅力」)でも書いたが、埼玉県南部は単純労働者を受け入れる工場や作業場が多く、外国人労働者の受け皿となっている。

それは工場や倉庫が多く立地する八潮市でも同じく、現在外国人は市の人口の約4%(2020年6月現在)を占め、県内の自治体の中では上位だ。内訳の7割以上は、ベトナム、中国、フィリピン、韓国と東アジア圏4カ国の人だが、八潮市ではパキスタン人が独特の存在感を発揮している。

彼らは中古車ビジネスを営むため、1990年代から八潮市内に住み始めたとされ、市内に住むのは約150人(2020年6月現在)と数としては決して多くない。

ただ、パキスタンの国教であるイスラム教では様々なルール(イスラーム法)があり、特に食文化が大きく異なる日本でイスラーム法を遵守することは大変なことだ。

そこでイスラーム法を守った食事、「ハラルフード」を提供するパキスタン料理店が市内に複数出店することとなり、そこを拠点にパキスタン人コミュニティが形成されていった。

そして、2023年には八潮駅から徒歩10分ほどの場所に「ハラール屋台村 八潮スタン」が開業した。

ハラルフードを扱う食料品店とフードコートが同じ建物に入った施設で、筆者も1度行ってみたが、周囲では日本語はほぼ聞こえず、ちょっとした海外旅行気分を味わうことができた。

こうした東アジア圏とは異なる外国人コミュニティが見られ、また気軽にアクセスできるというのは大変面白い。

八潮市の今後は

では、今後八潮市はどのようなまちとなっていくのだろうか。

将来を考える中では2005年に開業した、つくばエクスプレスの存在は欠かせない。2005年までの八潮市は他自治体を通る鉄道沿線に広がる住宅地の外縁あるいは工業地域として発展し、2005年以降は、つくばエクスプレス沿線を中心に人口を伸ばした。

しかし、現状の八潮市は同じつくばエクスプレス沿線の流山市やつくば市周辺と比べると、新築住宅の広がりが弱く、東京都心直結のポテンシャルを生かしきれていないようにも見受けられる。特に八潮駅周辺はまだ住宅地としての開発・再開発の余地がある。

中でも工場・倉庫群については、集合住宅用地としてのポテンシャルは大きく、住宅需要によっては今後、集合住宅に変わっていくこともあり得るかもしれない。

また、つくばエクスプレス開業前に発展していった住宅地がどうなるかも気になるところだ。駅から遠い郊外住宅地は近年空き家問題も注目されている。そうした時代の流れの中、市内でも八潮駅周辺とは異なる別ベクトルの変化が起きていくことが予想される。

いずれにしても、今後、八潮というまちの風景がどのように変化していくのか。東京郊外でも非常に興味深い場所の1つであろうことは間違いない。

鳴海 侑:まち探訪家

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