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「HPVワクチン」に疑問を持つ人が知らない事実 男性への接種補助も一部の自治体でスタート

東洋経済オンライン / 2024年4月11日 11時50分

HPVワクチンは、日本では科学ではなく、政治の場で利用されてしまった。2013年当時、HPVワクチンに関する議論が盛んだった最中、複数の国会議員や地方議員が「HPVワクチンに子宮頸がんを予防する効果がない」と主張した。これはコロナ禍のときに、アメリカで共和党支持者がワクチンを打たず、マスクもしなかったのと同様、科学的に誤った主張だ。

相手に対抗するためには誤りであろうと自分の考えを主張するのが政治の闘い方なのだろう。それに多くの人が巻き込まれてしまった。このような過ちを繰り返さないよう、後世への教訓とすべきだ。

アメリカでの推計ではあるが、今やHPV関連がんは、女性の子宮頸がんより中高年男性での中咽頭がんのほうが多い。中咽頭というのは、口を開けてノドを見たとき、一番奥に見える壁の部分だ。中咽頭がんの早期発見は不可能で、進行してリンパに転移して首の腫れで気づく人が多い。

幸い、HPV関連の中咽頭がんは、HPV陰性のものよりも治療が効き、治癒する率が高いことがわかっている。現在の主流は、抗がん剤治療と放射線治療を併用し、その後小さくなった原発巣を手術で切除する方法だ。声を失ったり、容貌が変わったりすることはない。とはいえ、予防できるに越したことはない。

この中咽頭がんもHPV感染が原因なのだから、ワクチンで予防できるはずだ。

日本では、ガーダシルというワクチンのみ、男性への接種の適応がある。だが、知られていないせいか、接種を希望される人は非常に少ない。

スコットランドやオーストラリアでは、女性だけでなく、男性への公費接種も行われている。男性のHPV関連のほとんどはHPV 16型によって引き起こされるため、男性では9価のシルガードを用いる必要はなく、4価のガーダシルで十分だ。最近では、渋谷区、中野区などの自治体が男児へのHPVワクチン接種の費用を助成するようになってきた。全国的にこの流れが広がっていってほしい。

いまわかっていないのは、50歳以降に好発する中咽頭がんを防ぐには、何歳までにHPVワクチン接種を受ける必要があるのか?ということだ。

女性の子宮頸がんは25歳からが好発年齢だ。性交渉を経験してから10年ほどで発病するため、比較的短期間でワクチンのがん予防効果が明らかになった。スコットランドやオーストラリアなど、男子にもHPVを接種している国では、あと30年ほどすると男性の中咽頭がん好発年齢となり、予防効果が明らかになるかもしれない。一方、接種から長い期間が経っており、予防効果はないかもしれない。解明が待たれるところである。

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