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当事者すべてを「ハッピー」にしたイランの報復攻撃 イランがイスラエルからの報復を恐れずに攻撃できる理由

東洋経済オンライン / 2024年4月20日 17時0分

まず、イランは大規模攻撃でイスラエル国民に恐怖を味わわせることができた。イランの安価な無人機やミサイルの迎撃には膨大なコストがかかる。そのため、イスラエルのみならずアメリカやイギリス、フランスにも膨大なコストを負担させることができた。

次に、ガザのハマスをはじめ、イラクやシリア、レバノンにいる多くのイラン系武装勢力も、自分たちばかりが対イスラエル戦の矢面に立たされ、自国だけが戦場になるのではなく「われわれはイランとともにある」と感じることができた。

また、ガザ市民にとってはイランが攻撃したことで、半年ぶりにイスラエル機が飛んでこない、すなわち空爆がない静かな夜を過ごすことができた。

一般のパレスチナ人も、イスラエルをスカッドミサイルで攻撃したのはイラクのかつての指導者サダム・フセインだけだったのに、34年ぶりにイランがイスラエルにスカッドミサイルを撃ち込んでくれた。

さらにイランの反政府勢力は、イランの参戦は最大の失策であり、これで現イラン政権は自滅すると考えている。

一方のイスラエルも、イランをようやく戦闘行為に引きずり込むことができ、イラン国内の核施設を攻撃する口実を得た。イラン攻撃にはイスラエル国民誰もが賛成であり、反ネタニエフもネタニエフと意見が一致した。

イランによる攻撃で、凍結されていた対イスラエル防衛費ももらえる方向に動き出した。政権を追われたら裁判が待ちかまえているネタニエフは当面、首相の座が安泰となった。

ガザでの民間人の犠牲があまりにも多く、もはや看過できなくなっていたアメリカにも、イランによる攻撃は好都合だった。

イスラエルにガザ地区・ラファへの攻撃をしてはならないと求め、またガザでの停戦に応じるよう求めてきたアメリカに対し、イスラエルは言うことをきかなかった。そんなイスラエルに、アメリカは業を煮やしていた。

ところが、今回のイランによる攻撃でイスラエルにアメリカからの支援の必要性を改めて思い知らせることができた。アメリカは対イラン防衛支援の見返りとして、イスラエルに圧力をかける口実が得られた。

というように、当事者が皆ハッピーな攻撃だったのだ。

本稿執筆時点ではイスラエルからの正式発表はまだないが、2024年4月19日に今度はイスラエルがイランを報復攻撃した。攻撃内容は、イラン同様に「ほどよい」感じのレベルで終わり、この攻撃も「誰もがハッピー」という範ちゅうに入るものだ。

だが、戦争というものは、開戦時は開戦前にシナリオを描き、そのシナリオ通りに進められやすい。戦争初期の影響は、計算できる内容であり、その反響も予想範囲内に収まるものだ。

戦争を始めるのは簡単、止めるのは…

しかし、いったん始めてしまった戦争は往々にして徐々に制御不能となり、戦争の終わらせ方は難しく、当初予想通りにはけっしてならないものでもある。

戦場では、自分が負った傷のことは考えず、相手の傷ばかりを考えてそこを狙って攻撃する。誰もが、ただ勝つことだけを考えて戦う。筆者は、中東という地域での紛争・戦争は、当然、さまざまなストーリーが考えられるものの、結局、「最悪だ」と思われるシナリオが回避されず、実現の方向で動いてしまうと考えている。

アビール・アル・サマライ:「ハット研究所」所長

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