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新潟市がiPadを使った「教育DX」成功できた理由 iPad導入で空いた時間を授業準備に充てられる

東洋経済オンライン / 2024年4月25日 14時0分

しかもこれは、端末の持ち帰り学習を許可したうえでの数字だと言うからさらに驚かされる。

持ち帰り学習は、教育委員会主導で決定したというが、その理由は前述の通り、学校という教育空間だけでなく、放課後や家庭という生徒たちの生活空間での活用も進めていきたいという方針に基づくものだ。

「一方的に制限を与えるのではなく、YouTubeも見られる設定の中で、失敗もしながら学んでいく姿勢を考えています。家庭においても、学校や教員からではなく、子どもと保護者が主体的にルールを決めて守れるようにすることを目指しています」(池田氏)

ただし、iPadは学習向けの端末として、制限がかけられている。その制限の中で、授業や活動を組み立てていくことになるため、新潟市は現場の良い事例の吸い上げを積極的に行っていた。

そのうえで、学習に活用できる200種類にもおよぶアプリリストを作り、これを公開している。現場の教員から申請を受けて、問題なければ登録し、ダウンロード可能なアプリを追加し続けているという。

このリストは、新潟市に限らず、学校や家庭でiPadを学習に生かしたい、と考えている人にとっても、有用なものだ。

高い視座と、各所の視点を理解すること

教育に限らず、DXで苦労するのは予算。新潟市でもひとり1台の端末以外の予算を認めてもらう部分で苦労した、と池田氏は振り返る。

「まず学校の特別教室のWi-Fiを導入するところから始めるが、行政から厳しくチェックされます。導入当初は、使われるかどうかわからず、そこに予算を割いていいか判断できないからです。

多くの自治体で学校現場出身の指導主事が行政に負けてしまうのは、行政の考え方がわからないからでした。

しかし子どもたちの姿、活用のデータやログなど可視化した客観データを見せると、行政も目の色が変わってきます」(池田氏)

教育全体をどうするか? 視座を高めるとともに、どうすれば実現できるか、現場と行政、双方の論理で理解することが、教育DXへの早道だった。これが、新潟市におけるDX成功から得られる学びではないだろうか。

変化に合わせて成長し続ける環境が作れるか?

新潟市では、全授業でのデジタル活用がすでに大前提となっており、連絡帳やプリントの配布もiPad。欠席の連絡も電話からメールに変わり、朝、教員が電話番をする必要なく、授業の準備に励むことができるようになっていた。

教員は、ツールの使い方の研修を年間10回以上行いながらスキルを高め、授業の方法を研究し、外部からの視察も積極的に受け入れながら、工夫を凝らした授業を市内の学校間・教員間で共有している。

どれも、iPadを導入して空いた時間を使って実現しているのだ。

裏を返せば、デジタル化に成功していない自治体の学校では、デジタル化はおろか、教育の質向上のための原資となる時間がないという事態に陥ることになる。

池田氏はこれからの展望について、次のように述べた。

「情報活用能力は、その時々で変わり続ける。目の前の課題を、ツールと知識と仲間で解決していく喜び、楽しさ、そしてそれを自覚することが、自信につながり、変わり続けられる、作り続けられる力になると思います」(池田氏)

現段階で非常に理想的な、デジタルを生かした教育の姿を作り出した新潟市。その変化と未来に期待が高まるとともに、DXの行方、教育の行方の面でも、注目したい。

松村 太郎:ジャーナリスト

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