あのシーバス社も始めた「脱炭素」計画の凄い中身 「500年の歴史誇る」スコッチ業界の新たな挑戦
東洋経済オンライン / 2024年4月27日 14時30分
日本でも愛好家の多いウイスキー。そして「ウイスキーの聖地」として多くの人々の頭に浮かぶのは、スコットランドではないだろうか。
【写真】2021年にグラスゴーで開催されたCOP26を記念し、900本限定リリースしたスコッチウイスキー
関連事業の就業者数は4万人
北海道とほぼ同規模の面積(7万8000平方キロ)と人口(約550万人)であるスコットランドは、500年を超えるウイスキー蒸溜の歴史を誇り、現在稼働中の蒸溜所は147カ所。ウイスキー関連事業の就業者数は4万人を超える。
世界的に誉れ高いスコッチウイスキーは、スコットランドの飲料・食品部門輸出額の77%(イギリス全体では26%)を占める極めて重要な輸出品目でもある。
まさにスコットランドの文化的・経済的な支柱といえるスコッチウイスキーだが、高温で蒸溜を行う製造過程では、大量の化石燃料が消費される。
近年になって脱炭素社会を目指す動きが世界で加速し、各国がネットゼロ目標を掲げている。
イギリスでは中央政府が2050年ネットゼロを宣言したのに対し、スコットランド自治政府は2045年ネットゼロを標榜。当然のことながら、スコッチウイスキー産業も脱炭素化に努めなければならない。
このような状況のなか、スコッチウイスキーの製造者たちはどのような取り組みを進めているのだろうか。世界100カ国以上の現地在住日本人ライターの集まり「海外書き人クラブ」の会員が取材した。
130年ぶりに蒸溜所がオープン
2023年2月。スコットランドの北部にあるハイランド地方の主要都市、インヴァネスの中心部に、クラフトビール醸造所兼ウイスキー蒸溜所が新設オープンした。インヴァネス市内にウイスキー蒸溜所が新たにできたのは、じつに130年ぶりのこと。
最新のカスタム設計酒造設備もさることながら、ここが注目に値するのは、スコットランド屈指の模範的な低炭素酒造所と称えられている点だ。
市街地という立地条件を考慮して、オペレーションをオール電化。燃焼ガスは発生しない。
醸造・蒸溜の熱源には、一般的な重油ボイラーではなく、高効率の電気加熱式ボイラーで生成した蒸気を利用。使用電力はすべて再生可能エネルギー由来で、その一部は屋根に設置した容量50キロワットの太陽光パネルで発電している。
さらに、250万英ポンド(約5億円)を投じた最先端の水源式ヒートポンプシステムで、酒造所および隣接する同社経営ホテルと、ホリデーアパートの給湯と暖房を実現。
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