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乗り継ぎスムーズ、スイス「列車ダイヤの秘密」 鉄道もバスも運行間隔揃えて待ち時間を短縮

東洋経済オンライン / 2024年5月3日 6時30分

スイス・チューリッヒ中央駅のホーム。公共交通機関の乗り継ぎが便利になるよう列車ダイヤを工夫している(筆者撮影)

「スイスの鉄道」と聞くと、有名な「氷河急行」や登山鉄道など、乗車体験そのものが観光となっている列車を思い浮かべる人が多いかもしれない。実際に、3000m級の山々まで連れていってくれる登山鉄道もある。

【写真24枚】日本とどこが違う?チューリッヒ郊外の駅ではホームと路面の高さが同じで改札もない。バスと列車の乗り継ぎが容易でダイヤも連携している

一方でスイス国民が日頃利用する、生活に密接する公共交通機関としての鉄道の役割は登山鉄道ほどには知られていないようだ。鉄道を含むスイスの公共交通機関は、乗り換えの利便性を最大限に高める運行システムを取り入れている。公共交通での移動を効率的で使いやすくするために採用されている「Taktfahrplan」(タクト・ファールプラン)について紹介したい。

一定間隔のダイヤが生む効果

では、タクト・ファールプランはどんなシステムなのか。

スイスの主要な鉄道駅に行くと、列車が到着した後、わずかな待ち時間でバスが駅前から出発するように調整されている。行先の違う列車同士の接続も同様だ。これは、規則的な間隔で列車やバスが出発するようにダイヤが設計されているためだ。

例えば、列車に乗ってある駅で降り、その駅前バス停からバスに乗って目的地に向かうといった場合、朝であろうが午後であろうが、列車からバスへの接続は常に15分や30分など一定の間隔で同じパターンとなっている。このように交通機関同士の「接続の最適化」を図ることで、乗り換えの待ち時間はより短くなり、結果としてドアtoドアの所要時間が短縮される効果がある。

このシステムでは一定の間隔で列車やバスがやってくるため、公共交通への信頼が高まる。このことは、観光業を含む多くの「経済的利益の拡大」に好影響を与える。また、地元住民も公共交通を利用してより効率的に移動することができる。

また、公共交通の定時性と効率の高い乗り継ぎシステムは、自家用車を使う代わりに公共交通を利用するというインセンティブが働く。このため「環境への配慮」にも優れたシステムであるといえる。

こうした取り組みは1つの都市圏とその周辺といった一部のエリアでのみ適用されそうだが、タクト・ファールプランは「全国的な規模」で行われている。都市と地方の間の移動の促進、そして地方に住んでいても容易に大都市へアクセスできる機会を与えている。

国民投票でプロジェクト推進

タクト・ファールプランの概念は1982年、スイス連邦鉄道(SBB)が導入した。このシステムの目的は、列車の運行を規則的な間隔で設定することにより、乗り換えの効率を改善し、利便性を向上させることにあった。

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