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「保存樹木だったケヤキ」はなぜ伐採されたのか 1本の大木が問いかける街づくりに欠けた視点

東洋経済オンライン / 2024年5月4日 12時30分

保存樹木だったが、指定解除され伐採されてしまったケヤキの木(写真:飯田りえさん提供)

区の「保存樹木」に指定されていた、20メートルものケヤキの木。近隣住民に癒やしをもたらしてきたその大木が、ある日突然、伐採されることになった。所有者が保存樹木の指定を解除し、マンション開発されることになったのだ。

伐採されるケヤキの木

たかが1本の木、にすぎないかもしれない。指定を解除した所有者にも、マンション事業者にも法的な落ち度はない。それでも、この1本の木の話は今の日本における街づくりの課題を映し出している。考えてみたい。

ある日突然伐採が始まった

「私も、まさか切られることはないだろう、と思っていたんです。それが、ある日いきなり目の前で枝の伐採が始まっていて……」

東京・世田谷区に住む飯田りえさんは、そのときの「衝撃」を振り返る。

閑静な住宅街の一角にある敷地には、かつて大きな邸宅があり、その敷地内に、20メートルをゆうに超えるケヤキの巨木は立っていた。飯田さんの自宅からはそのケヤキの木がよく見え、都会でありながら自然豊かなこの地域での暮らしを飯田さん一家は楽しんでいた。

ところがある日、飯田さんは窓の外の光景に目を疑う。ケヤキの木に人がよじ登り、チェーンソーを手に枝をバサッバサッと切り落としているのだ。4月半ばのことだ。

その敷地には、4階建ての中層マンションが建設される予定であることは飯田さんも知っていた。でも、あのケヤキの木は区が指定する保存樹木のはず。飯田さんは、慌ててマンションの開発事業者に問い合わせた。

担当者から返ってきたのは、衝撃の言葉だった。「その木は、保存樹木の指定を解除されているので“元・保存樹木”です」。世田谷区からも「(保存樹木の)登録解除されている」という答えが返ってきた。

保存樹木は所有者の意思で解除できる

「保存樹木」制度とは、世田谷区が「みどりの基本条例」にもとづき、区内の樹木や樹林地を保存樹木として指定する制度だ。同区のホームページには次のように記載されている。

世田谷区には、国分寺崖線や河川、湧水、農地や屋敷林等、長い年月をかけて育まれてきたみどりに恵まれた住環境があります。この制度は、大切に育てられてきた樹木や樹林地を次の世代に残していくための取り組みの一つです。

保存樹木には今回のケースのように個人・法人が所有する私有地の樹木も含まれ、所有者の同意が得られれば区が指定することができる。所有者の負担にならないよう、枯れ枝や不要な枝の剪定など、区が維持管理の一部を支援する。

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