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【コアコンセプト・テクノロジー】 金子武史社長CEOが語る「IT業界を輸出産業に変えたい!」

財界オンライン / 2023年9月13日 7時0分

金子武史 コアコンセプト・テクノロジー社長CEO

「日本の産業の中でも、元気が良いIT産業が世界の発展に貢献できれば外貨の獲得にもつながる」─。日本のIT産業の可能性について語るのはコアコンセプト・テクノロジー社長CEOの金子武史氏だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)支援とIT人材調達支援の2本柱で東証グロースに上場した同社。他のIT企業にはない提案力で製造業を中心にDXを支援する。そんな金子氏には日本のIT人材や地方のIT企業を燃え上がらせるという狙いもあった。

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DX支援とIT人材調達支援

 ─ 会社の設立から14年ほどが経ちましたね。独自のDX支援とIT人材調達支援の2本柱を主力としていますね。

 金子 ええ。今では300社以上の顧客にサービスを提供しています。事業会社様が企業の競争力を高めていけるように、当社は次世代に適応した仕組みをシステム構築する支援を主力事業としています。当社の営業戦略は「相対的大企業を狙え」をコンセプトにしています。当社の規模を考慮し、身の丈より少し上の企業を狙うわけです。

 一方で当初は業種も製造業に絞っていましたが、2015年から建設業に幅を広げ、今年から物流とポートフォリオを1つひとつ広げています。いずれ金融や通信、小売りといった全産業を支援していきたいと考えています。まさに陣地を広げていく「ランチェスターの法則」です。

 ─ DX支援とは具体的にどのようなサービスなのですか。

 金子 当社独自のDX支援の仕組みがあります。例えば、製造業・建設業のDX開発基盤「Orizuru」は画像処理、IoT、3Dグラフィックス、AIなどの要素技術や製造業における製品ライフサイクル管理や生産管理、建設業におけるコンピュータ上に現実と同じ建物の立体モデルを再現して、よりよい建物づくりに活用していくBIMといったフレームワークの構築に取り組んでいます。

 これにより製造業・建設業の顧客企業様のニーズに応じたカスタマイズや外部システムとの連携を加えることで、DXをスピーディーかつ低コストで実現できるようになります。DX後のあるべき姿の策定から技術検証、システム構築、運用・保守、内製化まで一気通貫で伴走支援できるところが強みです。

 ─ 社員数は何人ですか。

 金子 約350人で、エンジニアが多いです。ただ、採用では技術よりも素養を重視しています。新卒では理系大学院生が多いのです。ITの技能は後天的に習得できると考えています。一方で、数学や物理学といった感性を重要視しています。


社名の由来とIT企業の在り方

 ─ システム業界では働き方改革も大きな課題です。金子さんが描く会社の姿とは。

 金子 もちろん各人によって違うと思いますが、私が創業当初から大事にしていたのは多様性思考です。それぞれの人格が尊重される方が、より成熟した社会だと思っているからです。

 私自身、社会の中で育ち、そこに愛着や感謝の念があります。こういった気持ちを次世代にもつないでいきたいと思っているのです。そうやって社会は進んでいくと思っていますので、その過程で得られる経験や縁を大事にしていかなければなりません。

 その意味では、この会社が未来指向型の会社となり、社会の在り方の1つのモデルになれるような社内文化を醸成するためにも、社員への接し方や様々な制度、ビジネスモデルを決定していきたいと思っています。

 ─ 社名にもそういった思いを込めているのですか。

 金子 そうですね。加えて、分かりやすい名前が良いかなと。それで「コンセプト&テクノロジー」が頭に浮かびました。物事はどういった考え方で、何を狙って、どんなエッセンスを持ってやるのか。そしてそれを実現していくことが重要です。実現力とその結果が現実価値を決めるわけですから、コンセプトとテクノロジーの両方を兼ね備えている会社をつくりたいと。

 そもそもIT業界は御用聞き産業として発展してきた歴史があります。テクノロジーは強い一方で、業界自体のコンセプトが薄いのです。結果として、IT業界の事業らしく、また、会社らしい会社が少ないなという問題認識がありました。

 そこで当社は歴史ある製造業や伝統的な産業が有している世界観や歴史の上に、持続可能な産業を付加価値として乗せていきたいと。もはやIT業界は虚業ではありません。実業の時代に入っているのです。ですから、事業会社としての発展を目指すべく、コンセプトを持ちたいと思っています。

 ─ 既存産業とのつながりを意識していくわけですね。

 金子 ITには、どういった産業にも適応できる万能性という特徴があります。一方で何でもできるが故に「何をやるの?」といった明確なミッションがなくても、旺盛な需要で、売り上げが伸びるという面もあります。

 つまり、いろいろやれるのだけれども、それがゆえに、一般の人には何ができるか見えにくくもなっているわけです。私はこれをもっとシンプルにしたい。こういった価値を生成している産業ですと目に見える形で、もっとはっきりさせられれば業界自体の価値が高まるのではないかと。

 ─ IT業界にはあまりない発想と言えますね。

 金子 IT会社っぽくないですねとよく言われます(笑)。

 それはさておき、IT業界は御用聞き型でも仕事になってしまうのですが、当社は具体案を考え、提案していくスタンスでありたいと考えているのです。

 つまり、お客様の発想に頼るのではなく、当社からもアイデアを出していく。お互いの発想をぶつけながら、顧客志向で、よりよい未来の姿を磨き高めて、それをITで実現する。

 このIT業界は、様々な産業の未来を変えられる大きな力があります。それには技術力を磨くことはもとより、自分たちでも具体案を考え、率先して提案して、その実現に取り組んでいくことがより重要だと考えています。



地方のIT人材の活用へ

 ─ IT人材調達支援の事業について聞かせてください。

 金子 当社で受注した大型の案件に対して、地方のIT企業へも参画のご案内をするようにしています。IT業界においても、地方は東京首都圏に比べ仕事も限られ、単価もかなり下がってしまうのですが、当社からは相対的に高い金額で案件をご紹介するのです。

 その代わり、当社の付加価値の高い仕事をお願いするわけですから、何としても食らいついてきていただかなければなりません。それは地方のIT企業自身のバリューアップの入口にもなります。

 日本全体で約110万人のIT人材がいると言われていますが、そのうちのおよそ半分は下請の中小企業、そして地方にいます。彼らにもっと活躍の場、成長の場を提供したい。

 IT業界は人手不足といわれる業界ですが、中小企業や地方には人材はまだまだいるのです。その方々が成長し、自身の価値を引き上げていければ、日本はもっと産業の活性化を図れると思っています。

 ─ その思想に共感するIT企業がグループに入って来ているということですか。

 金子 そうです。そういう思いを持っている経営者は多いです。地方のIT業界は閉塞感に包まれています。それに対する突破口を当社が提供すると。

 当社はDX関連の付加価値の高い仕事を請け負っていますが、地方のIT企業がそういった仕事を自ら獲得するのは難しい。そこは当社がやりますと。その代わりに「寝た子を起こす」ではありませんが、地方に眠っているITエンジニアの力を呼び起こしたいということです。

 ─ ということは、農業や観光といった地方産業にも絡んでいく可能性がありますか。

 金子 はい。将来、関わっていく可能性があります。私はIT業界をいずれ輸出産業に変えていけないかと考えています。ですから、地方のITエンジニアの価値を引き上げながら総動員し、海外にも打って出たいと考えているのです。

 日本の産業の中でも、元気が良いIT産業が世界の発展に貢献できれば外貨の獲得にもつながります。そうすれば、当社が基点となって地方にもお金を流すことができます。今は日本での経済の環流装置が輸出産業しかありませんが、IT産業もそれになれると思うのです。

 当社が海外から仕事を取ってきて地方に流し、地方を活性化する。その先には日本がもう一度復興できる未来をつくれるのではないかと。地方には国宝や文化財などがたくさんありますから、米・シリコンバレーにある大企業を九州などに誘致することも可能だと思うのです。


インクスでの経験が生きている

 ─ 日本ではなぜGAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック(現メタ)、アップル・マイクロソフト)が育たないのかと言われますが。

 金子 社会全体の仕組みの問題もあると思います。システム開発を手掛けるIT産業でも世界に打って出るメガITベンチャーが育っていません。長い間、日本の大手SIer(システム開発会社)の銘柄が大きく変わっていないのもその証拠です。

 このIT業界にも大手が有利な構造はあるため、ベンチャーの身で、大手SIerと直接競合するのは得策ではありません。というより、直接ぶつかったらひとたまりもない。

 彼らが押さえていない市場はどこか。それは、人材としての地方、そして事業としての海外です。ですから、当社としては売上高300~500億円ほどの規模になったときには海外に打って出ようと思っています。それも見据えつつ、今は地方を押さえているというわけです。

 ─ 金子さんは製造業向けDXを手掛けていたインクス(現SOLIZE)出身ですね。

 金子 はい。2000年に新卒で入りました。スマートファクトリー、工場の自動化など、ベテランの暗黙知を形式知に置き換えてアルゴリズムで再現するようなプロジェクトに携わりました。ここでの経験が今の自分に大きな影響を与えました。

 残念ながら当時のインクスは民事再生の適用を受けましたが、今でもインクスの事業コンセプトは輝かしいものがあったと思っています。

 顧客の競争力創出と共に産業の未来をもより良いものにしていく、そのために高度な技術力を持ち、世の中に活かすべく取り組む。こういったインクスで学ばせていただいたDNAを発展させて、これからも価値生成、価値貢献できる存在でありたいと思っています。

 ─ 常に挑戦する思いはどういう思想から来ますか。

 金子 そうですね。現実世界は、自分たち次第で変えていけるものだと思っているからかもしれません。

 だから、よりよい未来にしていける取り組み=挑戦は、ワクワクしますし、やりがいを感じます。そう考えると、思想という高尚なものではなく、本能としてそういう活動が好きなだけかもしれませんね。

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