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焦点:ロシア離脱のISS、米が密かに対策 ウクライナ侵攻前から

ロイター / 2022年8月5日 19時14分

 8月4日、米航空宇宙局(NASA)と米ホワイトハウスが昨年終盤から密かに国際宇宙ステーション(ISS)の緊急時対応計画を練っていたことが分かった。写真はISS。4月20日撮影、提供写真(2022年 ロイター/Pyotr Dubrov/Roscosmos)

[ワシントン 4日 ロイター] - 米航空宇宙局(NASA)と米ホワイトハウスが昨年終盤から密かに国際宇宙ステーション(ISS)の緊急時対応計画を練っていたことが分かった。事情を知る関係者9人が明らかにした。ロシアのウクライナ侵攻前に対ロシア関係が悪化し始めていたことを踏まえた動き。

NASAの緊急計画からは、ISSの重要なパートナーであるロシアへの対応に米国が苦慮している様子が読み取れる。NASAは2つの超大国の間に残された数少ない民間協力の1つとして、ISSにおけるロシアとの20年来の協力関係を維持しようと努めてきたが、それが揺らいでいる。

米当局が作成した緊急計画には、ロシアが突然ISS計画から撤退した場合、対応策として(1)全ての宇宙飛行士を撤退させる手順、(2)ロシアの宇宙機関から提供される重要な機器や資材なしでISSを稼働させる方法、(3)ISSを計画より数年早く廃棄する可能性――などが盛り込まれている。

NASAとホワイトハウスの高官は以前から緊急対応策の存在を認めていたが、ロシアとの緊張が高まるのを避けるため、公の場で論じるのは避けてきた。むしろNASAの当局者はロシアの国営宇宙開発企業ロスコスモスとの緊密な関係を強調している。

NASAの宇宙飛行部門の責任者、キャシー・リーダーズ氏は先週のインタビューで、「われわれが関係の維持に強く関与しているのははっきりしている。しかし計画が策定されていることを確認する必要がある。われわれはNASAであり、常に不測の事態を想定している」と述べた。

ISSは20年余り前に、NASAとロスコスモスが技術的に相互補完する形で設計された。NASAはISSのバランスをとるジャイロスコープと電力供給用の太陽電池アレイを提供し、ロスコスモスはフットボール場サイズのISSを軌道上に保つ推進装置の制御を担っている。

ボーイング、スペースX、ノースロップ・グラマンなどの米宇宙関連企業がこの計画に参加している。消息筋の1人よると、ボーイングはロシアのスラスター(小型ロケットエンジン)なしでISSを制御する方法を検討する専門家チームを設けている。

2人の消息筋によると、NASAは数週間前からロシア離脱に備えて、ISSを予定より早く軌道から外す方法を参加企業に正式に要請するための草案作りに取り組んでいる。ロシアはモスクワからスラスターを管理している。スラスターはISSの寿命が尽きたときに地球の大気圏に突入させる上で重要な役割を担う。

ロシアのメディアが先週、新たにロスコスモスのトップに指名されたボリソフ氏の話として報じたところによると、ロシアはISSから撤退する日程を決めていないが、撤退の手続きは「われわれに課されている条件に厳格に従って」行うという。政府間協定では、どのパートナーも撤退の意向を1年前に通知することが義務付けられている。

4日時点でロスコスモスのコメントは得られていない。

NASAはロイターに対し、ロスコスモスから2年前に、軌道からの脱離プロセスを支援する宇宙船を提供できるかどうか尋ねられたと明らかにした。

NASAは検討中の緊急対応計画の具体的な中身については言及を避けたが、「今後もISSの新たな能力を模索し、地球低軌道での商業運営という目的に向けた円滑な移行を計画している」と説明した。

ISSは2030年まで稼働する予定で、NASAはISSの後継となる民間宇宙ステーションの開発を促進すべく取り組みを進めている。

<鍵はスラスター制御>

消息筋によると、NASAの緊急対応計画はロシアのスラスターなしでISSを制御することに主眼を置いている。

ノースロップ・グラマンは6月のデモで補給船「シグナス」の改良型を使ってISSの軌道修正を行い、こうした手法がロシアのスラスターの代替手段になり得ることを示した。

ノースロップの広報担当者によると、今後NASAから要求あれば、全てのシグナスはこうした軌道修正能力を備えることができる。このテストはNASAが2018年に始めた取り組みの一環だが、ロシアとの緊張が高まり、ペースが加速したと消息筋は指摘した。

消息筋2人によると、テスラのイーロン・マスク氏が設立した民間宇宙船会社、スペースXも同様の軌道修正機能を研究している。

NASAとホワイトハウスが緊急対応計画に着手したのは、米国とロシアの関係が悪化した2021年終盤だと、4人の米政府関係者が明かした。

計画着手は、ロシア国防省が昨年11月に対衛星ミサイルの発射実験を行い、自国の人工衛星を破壊、大量の破片がISSの付近に散乱し、宇宙飛行士がシェルターに避難する事態となった後だったという。

それでも米国とロシアの両当局の幹部は宇宙分野での協力関係を改めて強調している。

クリントン政権で国家安全保障問題顧問を務めたローズ・ゴッテモラー氏は、「恐ろしい、暴力的なウクライナ侵攻の後も関係を維持できたが、それは米国とロシアの両方にとって有益だからだ」と述べた。

消息筋によると、NASAは7月に少人数のチームをモスクワに派遣し、以前から課題となっていたISSへの宇宙飛行士相互派遣に関する協定を締結した。

一方、ロシアの宇宙開発関係者からは国内の財政的な圧力を指摘する声も出ている。

ロスコスモスのボリソフ氏は先週、2024年以降ISSに「雪崩」のごとく技術的問題が押し寄せるとの専門家の意見に言及。その後はロシアの担当分野を維持するコストが巨大に膨らむと述べ、ロシアにとっては独自の宇宙ステーション建設を模索することが「経済的に得策だ」とした。

(Joey Roulette記者)

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