アングル:トランプ氏は「バイデン大統領」就任を阻止できるか
ロイター / 2020年11月10日 14時28分
11月9日、米国には平和裏の政権交代という長い歴史がある。トランプ大統領は選挙結果が不当だと批判しているが、それでもこの歴史は受け継がれる可能性が高いと、国家安全保障の専門家らはみている。写真は5日、ホワイトハウスで記者会見するトランプ氏(2020年 ロイター/Carlos Barria)
[9日 ロイター] - 米国には平和裏の政権交代という長い歴史がある。トランプ大統領は選挙結果が不当だと批判しているが、それでもこの歴史は受け継がれる可能性が高いと、国家安全保障の専門家らはみている。
今後数週間、数カ月間の展開を予想した。
<トランプ氏のホワイトハウス退去に期限はあるか>
期限はある。現在、大統領選は正式には終わっていない。各州で選出された選挙人が12月14日、正式な投票を行う。1月6日に、改選後の議会が選挙人団の出した結果を受け入れる。バイデン前副大統領が選挙人団の投票で勝つと、合衆国憲法が定める期日の1月20日の正午に宣誓して大統領に就任する。
<トランプ氏が妨害してもバイデン氏は政権に移行できるか>
できる。トランプ氏にはせいぜい、バイデン氏の政権移行を遅らせる力しかない。
1963年の「大統領移行法」により、政権移行ではキャリア公務員が決定的な役割を果たすことになった。キャリア公務員らは期限までに、次期政権の幹部らにデータを提供し、アクセスを与えなければならない。
同法の下、連邦の建物の管理権限がある連邦政府一般調達局(GSA)が大統領選の明白な勝者を認定した時点で、移行手続きが本格化することになる。この時点で次期大統領のチームは状況説明書を入手し公的な資金を使うことができるようになり、代表者を政府の諸機関訪問に差し向けることもできるようになる。
専門家で構成する「大統領移行センター」は8日、GSAのエミリー・マーフィー局長に書簡を送り、バイデン氏を勝者に認定するよう促した。
GSAは7日、「憲法で定められた手続きに基づいて勝者が明確になれば、直ちに明白な勝利候補を確認する」との声明を出していた。
政治家学者らはロイターに対し、この法的枠組みの強さを信頼していると述べた。
選挙戦でトランプ氏とバイデン氏は激しく対立してきたが、そうした中でもトランプ政権は今年、法令を順守し、バイデン氏陣営に連邦政府の事務所スペースと資源を提供してきた。
政府高官は就任に当たり合衆国憲法を守ることを宣誓する。つまり、この宣誓により、選挙人団の投票でバイデン氏が勝てば、トランプ氏が何と言おうと政府高官にはバイデン氏を次期大統領として認める義務があると、テキサス大国家安全法教授のロバート・チェスニー氏は話す。
「軍、シークレットサービス、連邦捜査局(FBI)、その他関連する組織が、選挙人団もしくは裁判所の決定に逆らってトランプ氏に従うとは、とても考えにくい」とチェスニー氏は述べた。
<トランプ氏が退去を拒否した場合、軍は彼を追い出せるか>
退役軍人将校2人が8月、マーク・ミリー統合参謀本部議長に宛てた「公開書簡」の中で、軍がトランプ氏を強制的に排除する可能性を提起した。
書簡は「仮にドナルド・トランプ氏が、憲法上の任期が切れても執務室からの退去を拒んだ場合、米軍は彼を強制的に排除しなければならない。あなたはその命令を出す必要がある」としている。
ただ、こうした任務はシークレットサービスに任せる方がふさわしいとの声もある。米国の軍人は国内での法執行問題から距離を置くべきだという、米国法の基本原則がその理由だ。
アメリカン・エンタープライズ研究所の外交・防衛政策ディレクター、コリ・シェイク氏は「こうした問題への対処には憲法上の手続きがあるが、軍はその方程式から除外されている」と述べた。
テキサス大のチェスニー氏は、トランプ氏が1月20日、本当にホワイトハウス退去を拒んだ場合、彼は「侵入者」になると指摘。「シークレットサービスがやって来て、彼をエスコートして退出させるだろう」と述べた。
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