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Z世代の早期離職ほぼゼロ レバレジーズ、なぜ若者がこれほど成長できるのか? カギは「頑張りたい人が頑張れる環境」【インタビュー】

J-CASTニュース / 2024年3月18日 12時0分

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写真右から、永井遥佳さん、前川孝雄

自社メディア事業、人材関連事業、M&Aコンサルティング事業などを展開するレバレジーズでは、2022年に社内の公式部活動「レバカツ」を導入して、話題になっている。

部署を超えた社員間のコミュニケーションを積極的に奨励しているのだ。

この取り組みによって、社員は同じ趣味の仲間を得るとともに、互いに仕事の相談相手にもなり、他のプロジェクト情報を自身の仕事に活かすなど、生産性向上やイノベーションにも好影響を及ぼすことをねらいとしている。

人材育成支援を手掛ける、株式会社FeelWorks代表の前川孝雄さんが、レバレジーズを訪問。

同社の「レバカツ」に代表される社員の活性化施策をはじめ、Z世代を中心とした若者が成長し、組織も急成長を遂げる同社ならではのマネジメントや人材育成の現状と今後の展望について、深く話を聞いた。

《お話し》永井 遥佳さん(レバレジーズ株式会社 人事本部 人事戦略部 人材開発グループ/組織開発グループ グループマネージャー) 《聴き手》前川 孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

関係者全員の幸福を追求する会社をつくる

前川孝雄 働き方改革によって、多くの企業が残業を規制し、休暇・休業の取得を促進しています。そのうえ、コロナ禍の影響もあり、リモートワークが浸透するなど、職場空間への拘束を減らす動きが進んできました。
 ただ、私はこうした傾向は、「衛生要因」としてプラス面がある反面、職場のコミュニケーションが希薄化し、社員の一体感やチームワークの保持が困難なリスクも高まってきた、と見ています。
 そうした中で、御社では2022年から公式部活動「レバカツ」を導入。部署を超えて、社員間のインフォーマル・コミュニケーションの場づくりを積極的に進めています。
 社員の平均年齢が27歳と若く、ITを駆使するような最先端のベンチャー企業が、アナログな部活動に取り組むことが意外で関心を持ちました。
そこで、「レバカツ」を切り口としつつ、御社の人材マネジメントの方針と取り組みのポイント、今後の展望などについて、広くお話をうかがいたいと思います。
 まず、御社が掲げる企業理念とビジョンについてお聞きします。とても前向きで意欲的な表現ですが、策定の背景や考え方についてうかがえますか。

永井遥佳さん 私も、この理念とビジョンが大好きですが、弊社代表の岩槻が自身の経験からの思いを言葉にしたものです。
 まず「企業理念」については、いわゆる「三方よし」ということですね。会社存続の大目的は社会貢献ですが、お客様なくしては収益も創れず貢献もできない。当然ながら、「顧客の創造」をぶらさずしっかり行っていくことが第一です。
 次の「関係者全員の幸福を追求し」の部分は、岩槻自身の大学時代の経験にもとづいています。ご実家が経済的に困窮してしまい、学費を稼ぐために働かざるを得なくなりました。そして、もっと働く力をつけねばと独学でプログラミングを学び、エンジニアの職に就きました。
 ところが、そこは長時間労働で休みもなく、上司のパワハラがまかり通る超ブラック企業で、とても苦労をしたそうです。この苦い経験から、会社が人を不幸にしてはだめで、自分も含め皆が幸せな会社をつくりたいとの思いを強くしたのです。
 「各個人の成長を促す」の部分については、一緒に働く仲間には、ぜひ一人ひとりが成長することを通して自己実現をしてほしいという願いが込められています。

前川 「ビジョン」については、いかがですか。

永井さん 「ビジョン」は、弊社のサービス展開のポリシーともいえるものです。国、業界を問わず貢献できるところがあれば進んで行こう。ただし、参入したからには業界トップを目指す。
 なぜなら、どの分野でもトップ企業が最も社会貢献度が高く、高利益率のため従業員の給与も高く、ウィンウィンの状態になれるからです。
 こうした企業理念やクレド(行動指針)、そして、社員に大事にしてほしいマインドセットの内容を収めた「『フィロソフィー&マインドセット』ブック」という冊子を、社員全員に配布しています。新入社員研修として岩槻自身がこうした内容を3~4時間かけてじっくり話す「理念研修」も行いますが、聞きっぱなしでは忘れがちになりますので。

前川 なるほど。私は、企業の理念やビジョンの内容や浸透の度合いは、人材育成や働きがいにとってたいへん重要だと考えています。
 御社の理念やビジョンにはしっかりと創業者の思いが込められており、理念研修や冊子でも徹底しているのですね。

経験を成長の起点に、自己学習サイクルを回す

前川 社員の活躍支援や、人材育成の基本的な考え方には、指針などありますか。

永井さん 弊社の人材育成ポリシーは、「社員が経験を成長の起点として、経験学習サイクルを自ら回していくことを支援すること」としています。
 弊社の特徴として、社内に幅広い事業があり、オールインハウス体制で多様な職種が働いており、互いに幅広いプロジェクトに参加する機会もあります。

前川 詳しく教えてください。

永井さん たとえば、営業職がシステム開発の上流工程検討のプロジェクトにチャレンジするなどです。また、自ら新しい仕事を取りに行けたり、年齢に関わらず力があればマネジメントも担ええたりできる。そんな風土があります。つまり、自ら経験を広げたり、磨けたりすることが弊社らしさでもあるのです。
 よく言われる「7対2対1の法則」で、人の成長は7割が経験からの学びによるとされますから、この点を重視します。
 ただし、単に経験を繰り返すだけでは、底の浅い人間になってしまいます。きちんと経験を内省する機会をつくり、不足する知識や技術は研修で学べる機会を提供し、学習サイクルを回していくことが大切です。

前川 御社は、社員の平均年齢が27歳。20代でリーダーやマネジャーに抜擢される組織風土や仕組みがあります。思えば私は前職のリクルートに1989年(平成元年)に入社し、30数年前の当時は20代でマネジメントを担うことが当たり前でしたので、懐かしさを感じます。
 しかし、現在の日本は高年齢化が進んでいます。そう考えると、20代でそうした機会が得られる大企業は稀です。そうした中で、御社の20代のチャレンジや抜擢の文化を、どのように見ていますか。

永井さん 実は、私は中途入社で、前職では人材コンサルティングの仕事で大企業の支援もしていました。この会社に入った当初は、入社1年目でリーダーになったり、2年目で事業責任者になったりするなんて「本当に大丈夫?!」と、疑っていましたね(笑)。
 でも、抜擢されたメンバーたちは、自分の役割を認識し、職責を全うしようとがむしゃらに努力します。マネジメントの質などに課題はありますが、何とか成り立ってはいるのです。抜擢の力を感じますね。

前川 人は機会があると成長することを、実感されているのですね。

永井さん はい。ただ、その土台には本人の中にしっかりしたマインドが不可欠です。採用の時点で、仲間になっていただく方には、対話の中で徹底して確認していきます。成長意欲や上昇志向があるか、少々ハードな局面でも乗り越える熱量を注げるか、といった点です。

前川 入社時にマインドをしっかり見極めることが大切なのですね。そうした若者を多数採用されるところも興味深いと思いました。
 私自身は型にはめる見方を好みませんが、いま世間的には「Z世代の若者は、目立ちたがらず、上昇意欲がない」などと言われがちです。御社にはそれとは真逆とも思えるような、チャレンジを好む若者が入ってくる。Z世代の若者を面接して、気づいたことなどありますか。

永井さん 採用面接では、かつてよく聞かれた「部活でこれだけ頑張りました!」「クラスでは〇〇で活躍しました」などの自己PRのエピソードは減ったかもしれません。
 話を聞いていくと、「ウェブマーケットでこんなことをした」「ライブ配信で投げ銭をこれだけもらった」(笑)といったエピソードに出合います。ただ、テーマは変われど、みんな行動はしている...そういう点では、結局、基本は変わらないように思います。

前川 なるほど。しかも、そうした若者が実際に入社し、機会を与えられるとがむしゃらにチャレンジして結果を残しているわけですからね。それにしても、御社にそうした若者が多く集まってくるのは、他の会社とは何が違うからだと思いますか。

チャレンジ意欲のある若者を吸い寄せる秘訣とは

永井さん そうですね...弊社では、よくも悪しくも時代に逆行したポリシーを置いているからかもしれませんね(笑)。たとえば弊社では、リモートワークは奨励されておらず、出社が原則。エンジニアやデザイナーなど部門によっては認められていますし、もちろん出産・育児など必要な人の場合は別ですが、基本は出社です。
 働き方は個人に任せていますが、若手や新入社員は主体的にたくさん働いている人が多い印象があります。
 おそらく、世間一般の企業では、頑張りたくても頑張りにくい環境になってきている。でも弊社には頑張りやすい環境がある。そこが一番大きいのかもしれませんね。

前川 たしかに、そうですね。国主導の働き方改革は、一律に労働時間にキャップをはめ、「休め休め」と声をかけているところがあります。いわば、「働くな改革」です。もちろん育児や介護や病気治療などと両立する人にとっては必要だけれど、仕事を頑張りたい若者、経験を積んで成長したい若者にとってはブレーキになる可能性もありますからね。

永井さん また、職場の周りの人たちも、みんな頑張っている。いかに本人が頑張ろうと思っても、周囲が頑張っていなければ、同調圧力が働いてしまう。入社時には大変だなと思っても、まわりに触発されて一所懸命にチャレンジしているうちに仕事が楽しくなっていくのではないでしょうか。

前川 よくわかります。しかし一方で御社に入社はしてみたけれど、つらくなったり、自分には合わなかったりして、辞めていく人はいないのですか? 若者は売り手市場で、転職の敷居も下がっていますし。

永井さん もちろん早期離職はゼロではないですが、少ないですね。2023年の新卒入社は約300人ですが、離職者は5人未満です。内訳も、もともと起業も考えつつ入社したけれど、やはり起業したくて辞めた人が3人ほどいました。自分とは合わずに辞めたというのはごくわずかです。

前川 早期離職が深刻化する現代において、その定着状況には驚きます。給与や待遇に恵まれている大企業ほど大問題になっていますからね。

永井さん 採用時に、「この会社ではこのような働き方になる」とか「この部分では大変だよ」など、かなりはっきり説明しています。それなら頑張れないと思う人は、採用プロセスで抜けている可能性もあります。

前川 あらかじめ、お互いにミスマッチを避けることも重視しているのですね。
 頑張りたい若者が多く集まりチャレンジできる環境があること。採用時に、そのことをお互いにしっかりと確認し合った上で、メンバーとなっているという状況がよくわかりました。

3月19日公開の<コミュニケーション活性の切り札に「部活、いいんじゃない!」 レバレジーズ、「社内部活」で生じたプラスの変化は【インタビュー】>に続く。


【プロフィール】

永井 遥佳(ながい・はるか):レバレジーズ株式会社 人事本部 人事戦略部 人材開発グループ/組織開発グループ グループマネージャー/2017年に組織人事コンサルティング会社に新卒入社。大手企業向けのコンサルティング部門で、コンサルタントやHRテックのカスタマーサクセス等を経験。2020年7月にレバレジーズに入社し、2021年から現職。グループ会社全体の人材育成と組織開発を担う。新入社員・リーダー・マネジャー育成の他、チームビルディングワークの設計・運営、社内公式部活動「レバカツ」の導入も担当。

前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授/人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。近著に、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)。

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