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コミュニケーション活性の切り札に「部活、いいんじゃない!」 レバレジーズ、「社内部活」で生じたプラスの変化は【インタビュー】

J-CASTニュース / 2024年3月19日 12時0分

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写真右から、永井遥佳さん、前川孝雄

自社メディア事業、人材関連事業、M&Aコンサルティング事業などを展開するレバレジーズでは、2022年に社内の公式部活動「レバカツ」を導入して、話題になっている。

部署を超えた社員間のコミュニケーションを積極的に奨励しているのだ。

この取り組みによって、社員は同じ趣味の仲間を得るとともに、互いに仕事の相談相手にもなり、他のプロジェクト情報を自身の仕事に活かすなど、生産性向上やイノベーションにも好影響を及ぼすことをねらいとしている。

人材育成支援を手掛ける、株式会社FeelWorks代表の前川孝雄さんが、レバレジーズを訪問。

同社の「レバカツ」に代表される社員の活性化施策をはじめ、Z世代を中心とした若者が成長し、組織も急成長を遂げる同社ならではのマネジメントや人材育成の現状と今後の展望について、深く話を聞いた。

《お話し》永井 遥佳さん(レバレジーズ株式会社 人事本部 人事戦略部 人材開発グループ/組織開発グループ グループマネージャー) 《聴き手》前川 孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

2022年から始まった...公式部活動「レバカツ」とは

<Z世代の早期離職ほぼゼロ レバレジーズ、なぜ若者がこれほど成長できるのか? カギは「頑張りたい人が頑張れる環境」【インタビュー】>の続きです。

前川孝雄 御社は、2022年から公式部活動の「レバカツ」をスタートさせています。
 時代に逆行するポリシーを掲げた部分もあるとのお話しもありましたが(前回記事を参照)、会社の上司部下や同僚たちと部活というは、この「令和」の時代にそぐわない印象もあります。
 世の趨勢は、残業はもちろん、飲みにケーションなど含む時間外の拘束は極力控え、社員のプライベートを尊重しようという流れだからです。
 急成長するベンチャーで公式部活動を開始したというギャップに興味をそそられます。まずはレバカツ導入の背景から伺えますか。

永井遥佳さん まるで「昭和」な取り組みですし、コロナ禍にも敢えて逆行していますしね(笑)。実は弊社には、コロナ禍前まで「飲みにケーション手当」といって、社員同士が飲みに行くことを助成する制度があったのですが、コロナ禍で中止になりました。
 その後、コロナ禍はやや落ち着いてきたものの、さすがに飲み会は推奨できない狭間の時期に、社員同士のコミュニケーションを断絶させない何かいい施策はないか検討したのです。
 組織が急成長し、社員数も大きく増えてきたことで遠心力が強まり、意図的につなぎとめていかないと、あっという間に各部署が別会社のようになってしまう。また、部署ごとに蓄積されたナレッジを互いに共有しにくくなることも、会社としてロスが大きい。
 そこで私と上長とが相談し、「部活、いいんじゃない!」(笑)と思いつき、代表の岩槻の承諾を得て始めたのです。

前川 なるほど。しかし、なぜ部活という選択肢を選んだのですか?

永井さん 単に交流するだけなら、みんなを集めて社内イベントを行う方法もあります。しかし、その後のネットワーク構築は続きにくいものです。
 社員にもヒアリングをしたのですが、いきなり他部署の人と「初めまして、飲みましょう」にはならず、何かワンステップほしいとのことでした。であれば、共通の趣味や関心事で集えるもの...それなら「部活だ!」というわけです。
 社内のスラック上に、以前から好きな人同士が集うオープンチャンネルがあり、「バスケットボール好き」や「酒好き」などの集まりがありました。なので、それらを公認すれば早い、とも考えました。

前川 そもそも御社ではなぜそこまで社内のネットワークづくりにこだわるのでしょうか?

永井さん 1つには、それがレバレジーズらしさだからです。
創業当初から、夏には七夕パーティ、秋にはハロウィン、冬はクリスマスなど、なにかと一堂に会して仲良く親しみ、その後の仕事でもコミュニケーションを取りやすくする、という文化がありました。
 そして、次第に社員数が増えてきて、全員が一堂に会すのも難しくなる中で「飲みにケーション手当」なども行ってきたわけです。
 代表の岩槻の中にも、社員が相互に交流し合うことは、直接の利益は生まないかもしれないけれど、ゆくゆくの仕事のしやすさにつながったり、困った時に悩みを相談し合えたりすれば、プラスになるとの考えがありました。
 インフォーマル・ネットワークをつくるのを是とする空気があったことが大きいと思います。また、オールインハウス体制で多様な社員がいて、互いの強みやナレッジも異なります。誰に何を訊けば詳しいかを知るきっかけがあると、何かと助けてもらいやすくなりますし。

社員に覚えてもらうキャッチ―な名前...「レバカツ」でいこう!

前川 部活導入の背景がよく分かりました。では、部活自体は代表の決済も得て実施が決まったわけですが、準備などでの課題やご苦労などはありましたか。

永井さん はい、いろいろとありましたね。まず予算について、岩槻との交渉になりました。「いるの、予算?」と(笑)。
そこで「ないと動機づけになりません」と頼んで、何とか1人年間1万円の予算をもらえました。

前川 そうでしたか。部活動の予算とルールもつくったわけですね。

永井さん 制度をつくるからには、強制参加ではないにせよ、認知度を上げてある程度使ってもらえないと、インフォーマル・ネットワークの形成という目的も適いません。社員が関心を持ち参加してもらうための動機づけの部分、いわばマーケティングでいろいろ工夫をしました。

前川 具体的にはどのようなことをされたのですか。

永井さん まず、何かキャッチ―な名前にしたい。単なる部活動では面白みがなく覚えてもらえない。では、レバだし、部活だし、「レバ部活」? それじゃ語呂が悪い。じゃあ「レバカツ」か? 食べ物みたいじゃない!と(笑)。
 でも結局、「レバカツ」になりました。みんなに周知するために、メールやスラックで発信するだけでは流されてしまう。「じゃあポスターを作ろう!」となりました。またロゴもキャッチ―なのがいいので、デザイナーさんに「作って」と依頼しました。

前川 社内にデザイナーもいるわけですね。

人海戦術で社内を回り「〇〇部、つくりません?」

永井さん それから実際の部活そのものがないと、関心も持てずイメージもわきません。心当たりのある一人ひとりに、立ち上げの打診に行きました。
 スラックなどに上がっていたグループや、「あの人、これが好きって言っていたよね」という話が頼りでした。「ぜひサッカー部つくって!」「スキー・スノボ部つくりません?」などと、人海戦術で回りました。私自身も、自分が好きな「クラフトビール部」をつくりましたしね(笑)。

前川 人事担当の永井さんが「〇〇部つくって!」と社内を回るなんて(笑)。みなさん、どんな反応なんですか?

永井さん 初めはみんな、笑っていましたが、普段から社内メンバーとの関係構築には気をつけていたので「まあ、永井さんが言うならつくってみるか」と。うちの会社、いい人が多いので(笑)、ありがたいことに、みんな協力的でしたね。

前川 現時点でのレバカツの部活数や種類、参加人数など教えてもらえますか。

永井さん 2023年度で、22部活に801人が参加しています。参加率にすると40%で、50%が私の目標なので、くやしいですね。来年度がんばります(笑)。

前川 いや、40%でも十分にすごいですよ。部活にはユニークなものなど、どんなのがありますか。

永井さん そうですね...バイクのツーリング部や、アウトドア部。ほかにも、みんなで畑を共同で借りて農作物を作るレバタケ部とか。真面目系では、コーチング部というのもありますね。
 あと、「なぞとき部」といって、みんなで大型迷路などの「なぞとき」施設に行く、カワイイ部活もあります。スタンダートなものでは、フットサルやバスケやゴルフなどもあります。
 4月初めの約2週間が部活メンバーの募集期間ですので、その時期になると、新入社員に声掛けしては「昨日は何人、今日は何人入った!」と人数読みをしています(笑)。まるで、仕事の営業みたいですよね。

前川 楽しそうですね。まるで学生生活のような。ちなみにレバカツを実施しての社内のプラスの変化には、どのようなものがありますか。

永井さん 参加した社員のみなさんからは、なかなか接することのなかった他部署の人と知り合いになれてよかった、趣味を共通点にしているのでコミュニケーションが取りやすかった、同じ部活で知り合った人と仕事の話ができたなど、意図していたとおりの声はいただいています。
 趣味に対して会社がお金を出してくれるという、福利厚生的な面での評価の声もありますね。それから、採用の応募者や内定者の方がレバカツのことを調べていて、社員のコミュニケーションを大切にする会社だと前向きに捉えてくれるなど、採用面でのPR効果も見られます。

前川 とてもいい成果の手応えですね。

永井さん レバカツだけでなく、他の施策も相まっての効果かとは思いますが、ここ2年ほど、社員のエンゲージメントスコアが3~4%向上しています。

前川 その数値の変化は、すごいですね! 人的資本経営が経営の関心事の時代、エンゲージメントのスコア向上に力を入れる多くの企業から羨望の的になりそうですね。

エンゲージメント向上には、非金銭的報酬を重視

前川 若者の採用難や早期離職への対応として、初任給を上げて年功型賃金を改めるほか、労働時間を減らし、休暇・休業の取得促進や働き方を柔軟にするなど、多くの企業では労働条件面での改善に躍起です。
 しかし御社は、もちろん業界第1位を目指すことで利益を社員にも還元する基本方針はありながらも、賃金や労働条件面を前面に掲げるよりも、社員に成長の機会を与えることや、社員間のコミュニケーションやネットワークづくりなどの広報に力を入れているように感じます。
 そのあたりは、意識的に行っているのですか?

永井さん いわゆる金銭的報酬と非金銭的報酬の区分でいえば、後者にフォーカスを当てて考え、社員の皆さんのエンゲージメントを高めていこうとしていることは確かですね。
 金銭的報酬は衛生要因ですので、改善して満足を得ても、しばらくすると不満に変わりやすい。なので、成長機会やよいコミュニケーション環境のような非金銭的報酬のほうが、永続性があると考えています。

前川 まったく同感です。まさに衛生要因ではなく動機づけ要因に着目して、人を採用し活躍に至っている実証企業ともいえて、素晴らしいですね。インフォーマル・コミュニケーションの活性化については、レバカツ以外にどのような施策がありますか。

永井さん たとえば、部署横断の誰でも参加できる勉強会がありますし、年2回のクリスマス会などのシーズナルイベントも行っています。各種研修後の懇親会での交流などもありますね。ちょっとくだけた内容の、紙媒体の社内報を4半期に1回発行しています。

前川 これもITの会社とは思えない! アナログですね(笑)。その社内報は、どんな企画なのですか。

永井さん 最近のものでは、組織も大きくなってきたので、経営ボードに光を当てようと、部長ラインが登場する特集を組みました。
 今年の弊社のスローガンが「史上最速」。それにちなんで、部長たちに、よみうりランドに行ってもらい、ゴーカートで誰が一番早いかを競ってもらいました。
 また、10月頃に部長たちに集まってもらいクリスマス料理を作ってもらって、「史上最速のクリスマスパーティー」をやりました。30分以内で作ってくださいと頼み、普段料理をしない事業部長が生煮えの肉料理を出してきたり(笑)。
 ちょっと面白おかしく、でも部長のみなさんの人柄や考えなどがわかりやすい内容にしてみました。私たちと広報担当がタッグを組んで、一緒に笑いながら企画をしました(笑)。

前川 いやあ、楽しそうでいいですね。遊び心って、ハードな仕事をするからこそ、とても大事だと思うんです。
 働くうえではシビアでつらいことや困難なこともあるけれど、こうして楽観的にとらえて仕事を楽しむ風土があるから乗り越えられる面もありますよね。緊張して取り組んでいると、萎縮してしまったり、失敗を恐れたりしがちですが、明るく大らかな風土だとメンバーも安心してチャレンジできますよね。ここにも、御社が急成長している源泉があると確信しました。

3月21日公開予定の<GPTW Japan「働きがいある大企業」若手部門1位の秘訣は レバレジーズ、時代と逆行する「昭和」な職場にあった?【インタビュー】>に続く。


【プロフィール】

永井 遥佳(ながい・はるか):レバレジーズ株式会社 人事本部 人事戦略部 人材開発グループ/組織開発グループ グループマネージャー/2017年に組織人事コンサルティング会社に新卒入社。大手企業向けのコンサルティング部門で、コンサルタントやHRテックのカスタマーサクセス等を経験。2020年7月にレバレジーズに入社し、2021年から現職。グループ会社全体の人材育成と組織開発を担う。新入社員・リーダー・マネジャー育成の他、チームビルディングワークの設計・運営、社内公式部活動「レバカツ」の導入も担当。

前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授/人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。近著に、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)。

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