1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

GPTW Japan「働きがいある大企業」若手部門1位の秘訣は レバレジーズ、時代と逆行する「昭和」な職場にあった?【インタビュー】

J-CASTニュース / 2024年3月21日 12時0分

写真

写真右から、永井遥佳さん、前川孝雄

自社メディア事業、人材関連事業、M&Aコンサルティング事業などを展開するレバレジーズでは、2022年に社内の公式部活動「レバカツ」を導入して、話題になっている。

部署を超えた社員間のコミュニケーションを積極的に奨励しているのだ。

この取り組みによって、社員は同じ趣味の仲間を得るとともに、互いに仕事の相談相手にもなり、他のプロジェクト情報を自身の仕事に活かすなど、生産性向上やイノベーションにも好影響を及ぼすことをねらいとしている。

人材育成支援を手掛ける、株式会社FeelWorks代表の前川孝雄さんが、レバレジーズを訪問。

同社の「レバカツ」に代表される社員の活性化施策をはじめ、Z世代を中心とした若者が成長し、組織も急成長を遂げる同社ならではのマネジメントや人材育成の現状と今後の展望について、深く話を聞いた。

《お話し》永井 遥佳さん(レバレジーズ株式会社 人事本部 人事戦略部 人材開発グループ/組織開発グループ グループマネージャー) 《聴き手》前川 孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

新入社員のオンボーディングとリーダー育成に注力

<コミュニケーション活性の切り札に「部活、いいんじゃない!」 レバレジーズ、「社内部活」で生じたプラスの変化は【インタビュー】>の続きです。

前川孝雄 企業として急成長を遂げてきた中では、人事面でもさまざまな課題があり、ご苦労もあると思います。組織・人事をリードする永井さんとして、特にプライオリティが高いテーマは何でしょうか。

永井遥佳さん 私の現在の中心的役割が人材育成ですので、新入社員のオンボーディングとリーダー育成がど真ん中のテーマです。

前川 では、まず新入社員のオンボーディングからうかがいます。新卒採用と中途採用との比率はどのくらいで、それぞれ育成・定着への支援はどのように行っていますか。

永井さん 社員全体では約半々なのですが、直近の採用では新卒2.5に中途1という比率です。
 新卒者については、大きく2年間をオンボーディング期間としています。最初は全社研修でマナーや基礎的なスキルを教えます。その後は事業部ごとに異なりますが、期間の長い部署では3か月ほどじっくり研修し、ある程度独り立ちできる状態にしてから現場に本格配属とします。
 小さい部署でそこまで余裕がないところは、いきなり現場に入れてOJTで頑張って、ということもあります。その後は、半年に1回、同期を集めて、振り返りの内省と相互刺激と交流の機会をつくっています。
 そのほか、各部署でブラザー・シスター制度によるフォロー体制を敷いています。新卒1年目はメンタル面でも揺らぎがちなので、メンター制度として他部署の先輩社員を相談役に付けるなどして、定着支援をしています。
 そのうえ、全社員のエンゲージメント調査を毎月行っていますので、スコアが目立って落ちている人があれば、人事の側から事業部に留意を促すようにしています。

前川 毎月エンゲージメント調査を行っているのですね。

永井さん 既成のものと、内製したものと、2つで測定しています。社員からすると「毎月アンケートが多い!」と思っているでしょうね(笑)。地道に、一人ひとりのコンディションを見ながら必要な声掛けをするようにしています。
 ただ、早期離職やリテンションマネジメントについて、多くの労力を要するほどの悩みはなく、離職者も他企業一般と比べて多くないです。

前川 なるほど。社員一人ひとりを、しっかりきめ細かく見守っているからですね。中途採用者の場合は、いかがでしょうか。

永井さん 中途採用者については、3か月程度をオンボーディング期間としています。
 まずは、会社の理念やルールを知ってもらう研修を行います。その後、中途採用同期のメンバーでのランチに助成をして、仲間づくりを促します。また、「岩槻さんこんばんわ会」という砕けた名称の(笑)、代表との約1時間半のオンライン座談会の機会を設けています。
 「岩槻さんの経営思想はどんなですか?」と真面目な質問から、「飼っている犬の種類は何ですか?」「お金持ちそうですが、どこに住んでますか」(笑)などプライベートな内容まで、ざっくばらんな対話をしてもらいます。
 このように、中途採用者に対しては、組織適応のための施策が中心になります。

前川 次に、リーダー育成についてうかがいます。リーダー層といっても、20代でまだ若いすよね。どのように育成していくのですか。

永井さん 最初のマネジメント階層である「リーダー」が25~26歳、次の「マネジャー」が27~28歳、トップラインの「部長」層が35歳前後です。
 リーダー育成では、まずリーダーになる手前のプレリーダー研修でリーダーとしてのマインドセットを学ぶ機会とし、実際にリーダーになってからはリーダーの基本的役割について基礎的な研修を行います。
 その後は、部署ごとに課題感や研修内容も異なってきます。ある部署の例では、急な体制づくりで新しいリーダーたちも、ピープルマネジメントのどこから手を付けていいかわからない。まず優先対応として、性格タイプ診断を使った施策を行っています。
 弊社では全社員が既成ツールのエゴグラム診断を受けています。リーダーに対して、「あなたはこういう個性で、担当する部下はこういう個性。だから、この部下とは性格が共通するので心配ないけれど、この部下とはこの点の違いにだけは気をつけて」といった注意を促すサポートをしています。

前川 リーダーたちは非常に若く、マネジメントは大変でしょうけれど、そうしたサポートと機会を提供されれば、苦労はしても何とかやれるようになるわけですね。

永井さん がむしゃらに、やらざるを得ない状況に置かれますからね。

社員を動機づけ育てる心構えのない人は、リーダーに登用しない!

前川 少し話が前後しますが、リーダーやマネジャーの登用・配置や、部下マネジメント上の課題にはどのようなものがありますか。

永井さん マネジメントは、登用されてから学ぶ部分もあります。ですが、やはり人生経験やいろいろな人に触れた経験が、クオリティに影響してくると思います。
 まだ若くて未熟であると、マネジメントが画一的になったり、相手のタイプを見ずに自分のやり方を押し付けてしまったりしがちです。そのうえ、自分より年上の人をマネジメントする機会も多いので、そこでつまづいてしまうこともあります。

前川 そこは、どのようなフォローをしていますか。

永井さん 経験による学習が大事とはいえ、あらかじめマネジメントのティップスや先輩たちの経験を伝えるようにはしています。
 具体的には、内製したEラーニング教材で学んでもらうほか、部署横断の社員全員対象の研修で「しくじり先生」ではないですが、先輩マネジャーの失敗談を語ってもらっています。
 また、リーダーやマネジャーの登用の際にはアセスメントを行い、事業責任者との面接も行い、基準に達しなければ必要な人数枠に満たなくても登用はせず、なぜ不合格かを本人にはきちんとフィードバックしています。

前川 アセスメントの基準はどのようなものですか。

永井さん リーダー登用の場合には、大きくは3点あります。
 1つは、目標達成に向けてPDCAサイクルをきちんと回せるかどうか。
 第2に、メンバーを動機づけすることができるか。
 第3に、誠実に人と向き合えるかどうか。
 その3つが満遍なくあることが合格の基準です。ですから、PDCAを回すことがいくら上手でも、人に関心がなく育成する気がないという人は登用しません。
 とはいえ、リーダーの兼任がとても増えていて、一部の人に負担が偏っている状態は組織として不健全です。何とか育成に努めなければと考えてはいます。

前川 人に関心を持ち、育成するマインドを持つ上司を増やすことは組織の持続成長の根幹です、ところが、プレイヤーとして仕事ができることとは別次元なので一筋縄にはいきませんよね。そのようなケースではどうやって育てているのですか。

永井さん 研修も大事ですが、それだけでは解決できません。
 なので、各事業部で毎週行う1on1ミーティングで、上司からリーダー本人に、なぜメンバーとのコミュニケーションが大事なのかを伝え続けてもらいます。
 リーダーになる前のプレリーダーの立場でマネジメントを任せる方法もあるので、実際に一度苦労してもらうのもひとつです。きちんと人の動機づけができないと、チームのPDCAも回らないことを実際に学ぶことで、大切さを知ってもらうわけです。

前川 工夫されていますね。

永井さん マネジメントの悩みとして、メンバーにどの程度厳しく言っていいものか、フィードバックはどこまではっきり伝えるべきかといった相談を受けることがあります。
 それに対しては、評価の基準をきちんと相手に伝えることが大事だと話します。
 相手に厳しく言うのは基準との関係で評価し伝えているのであって、基準を示さず注意することはよくないと、フィードバックの基本型をアドバイスしています。その際、怒鳴ったり、高圧的な態度になったりするのはいけないとも伝えますね。

前川 ハラスメント予防への留意も大切ですね。

メンバーの「Will」を理解し、機会やポジションを提案

前川 御社はGPTW Japanの2023年版「働きがい認定企業」に選ばれ、特に若手の働きがいに優れた企業の大規模部門で1位に表彰されています。
 社員の働きがいをどのように考え、実現しようと考えていますか。いまは、働くことに対する価値観も多様化しており、働きがいも一人ひとりさまざまだともいえる時代。どのように対応していこうとお考えですか。

永井さん 入社時点でメンバーの指向性が比較的近く、年齢もみな若いという点で、他社さんと比べると、マネジメントがしやすい環境だとは思います。
 ただ、おっしゃる通りで、そうしたメンバーの間でも一人ひとりの価値観や「Will」はそれぞれ異なります。なので、しっかり会話をしてアサインメントや機会提供をすることで努力をしていかなければいけないと考えています。

前川 なるほど、そうですね。

永井さん 代表の岩槻が口を酸っぱくして言うのは「メンバーの上質世界を理解しなさい」ということです。選択理論心理学の概念で、ニア・イコールWillだと思います。
 その人がやりたいこと、大事だと考えていることを知ることが大事だということ。リーダーやマネジメント層は、四半期の1on1面談などで、「何がしたいの」「最近楽しいのは、どういう時なの」とナチュラルに会話をします。
 そして、その情報をもとに「こうした仕事の機会があるよ」「こうしたポジションにチャレンジしてみては」と提案をします。古典的なやり方ですが、会社にとっても本人にとってもウィンウィンな状態で機会提供をしていくことを、これまでも大切にしてきましたし、これからも模索していかなければならないと考えています。

前川 会社組織が社員個人を、上司が部下一人ひとりをしっかり理解していないと、仕事の任せ方やマネジメントはうまくいきませんからね。

会社も成長し、社員も自己実現を

前川 残念ながら、日本企業で働く人たちは、世界と比してエンゲージメントがとても低い現状です。これからの働きがいのある会社とは、どうあるべきだとお考えですか。

永井さん とても難しい質問ですが、私としては、結局弊社の理念である「顧客の創造を通じて関係者全員の幸福を追求し、各個人の成長を促す」に帰結するのではないかと思います。
 お客様や社会への貢献をしてお金をいただき、それを社員に還元して、社員はそのことで自己実現ができている状態ですね。
 社員は、自分がなぜこの会社にいて何をしたいのかを言語化し、セルフメイキングをして、自己実現をする意識を持ちながら働いているものです。会社も成長するし、社員も自己実現するというウィンウィンの関係を築き、そのサイクルを回すという、そんな会社なのではないかと思います。

前川 今までの具体的なお話しからも、とても納得し共感します。
 では最後に、御社の今後の人材育成や社員の活躍支援についての展望や計画など、お聞かせください。

永井さん 今後も、これまで述べてきた弊社の人材育成方針や、レバレジーズらしさを活かした施策のあり方などは変わりません。ただ、より会社も成長し社員もより自己実現をしてもらう観点から今後大きいのは、やはり適材適所の精度を上げていくことです。

前川 タレントを埋もれさせないということですね。

永井さん はい。これまでは、私たちもそれぞれの社員メンバーと話をする中で、人数が1500人くらいまでは、各人の経験や強みなどを何となく把握できてきました。しかし、社員数が2000人を越えてくると、もう人の頭の記憶だけでは限界を感じています。
 きちんと個人のデータを蓄積していかなければなりませんし、ポジションのほうも言語化してマッチングできるようにする必要がある。そうしないと、優秀な人たちを引き留められないことは、経営会議でも話題になりました。これは1~2年でできることではないので、5年ほどかけてやっていこうという話はしています。

前川 組織のさらなる拡大と発展に合わせた、仕組みづくりが課題ということですね。
 御社では、若い社員の働きがいと成長の実現を一番基本に置き、明るく楽しみながら地道なマネジメントもしっかり実行されていることがわかりました。
 時代の最先端を行く急成長ITベンチャー企業でありながら、「働きがいある大企業」若手部門1位であることの秘訣は、意外にも「レバカツ」をはじめ、良い意味で時代と逆行する「昭和」な(笑)風土づくりにあるというのも、温故知新を感じる発見でした。
 とても興味深いお話をたくさんいただき、ありがとうございました。


【プロフィール】

永井 遥佳(ながい・はるか):レバレジーズ株式会社 人事本部 人事戦略部 人材開発グループ/組織開発グループ グループマネージャー/2017年に組織人事コンサルティング会社に新卒入社。大手企業向けのコンサルティング部門で、コンサルタントやHRテックのカスタマーサクセス等を経験。2020年7月にレバレジーズに入社し、2021年から現職。グループ会社全体の人材育成と組織開発を担う。新入社員・リーダー・マネジャー育成の他、チームビルディングワークの設計・運営、社内公式部活動「レバカツ」の導入も担当。

前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授/人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。近著に、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください