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五輪・パラ選手をAIで強化…ブリスベン見据えスポーツ庁が戦略改定へ、依存リスクに警鐘も

読売新聞 / 2025年1月5日 5時0分

 スポーツ庁が2032年のブリスベン夏季五輪・パラリンピックまで見据えた強化戦略を3月に改定し、トップ選手のトレーニングにAI(人工知能)を活用する方針を初めて明記することが4日、分かった。膨大な競技データの処理にAIを使うことでパフォーマンスを向上させ、メダル量産を目指す。一方で、AIに依存しすぎると選手の感覚や判断力が失われ、行きすぎた練習で故障しかねないリスクにも警鐘を鳴らす。

 スポーツ界でAIは選手のフォーム改善や体調管理、戦術立案などに使われている。体操競技では、技を学習したAIが映像を解析して採点し、審判員を補助するシステムを世界選手権で導入。国内でも、大学や民間企業がカーリングのショット選択やトランポリンの姿勢分析などを可能にするAIを開発しているが、試合映像などの学習データが少なく、精度が低いのが課題とされる。多くの競技団体は、AIに詳しい人材が乏しいのが実情だ。

 関係者によると、強化戦略では欧米や豪州に比べてAI活用が遅れているとして、新たにAIの項目を設け、トップ選手たちの強化のために導入する方針を打ち出す。▽効果的な活用事例を多くの競技団体で共有する▽研究者と連携し、学習データを増やしてAIの精度を高める――といった方向性を示す見通し。一方で、AIの指示を過信した場合、体調を考慮しない練習をしたり、戦術眼やプレー感覚が損なわれたりするリスクも指摘する。

 同庁は、新戦略に基づいて26年度以降、トップ選手の強化拠点「ハイパフォーマンススポーツセンター」(HPSC、東京都北区)を中核として研究者とのネットワークを強化し、競技横断的なAI利用を本格化させるとみられる。

 関係者は「世界としていくためにAI利用は不可欠。ただし、あくまでも作業効率を上げるツールで、最終判断は人間だ。選手がAIの指示通りにプレーしたら、スポーツ自体が魅力を失う」と話している。

 ◆強化戦略=正式名称は「持続可能な国際競技力向上プラン」。夏季と冬季の五輪・パラに向けた強化策の最高指針で、スポーツ庁やHPSCの事業や競技団体などへの支援策に反映される。2016年に初めて策定し、東京大会後の21年12月に改定。今回はパリ大会を終えた節目で見直す。

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