ガザで栄養失調や感染症深刻「治療には戦争やめるしかない」…UNRWAの清田明宏医師
読売新聞 / 2025年1月10日 8時58分
【エルサレム=福島利之】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保健局長の
ガザで2023年10月に戦闘が始まって以来、清田氏のガザ入りは4回目。昨年12月5日~1月9日の日程で中部ズウェイダを拠点にUNRWAの診療所を訪れ、医療を継続する方策を模索している。戦闘開始から1年3か月が過ぎ、清田氏は「医療も食料事情も悪くなる一方だ」と語った。
診療所では、高血圧や糖尿病の薬がほぼ底をついた。エジプトやヨルダンには在庫があるが、イスラエル軍の管理する検問所から物資が円滑に運び込まれず、搬入されても略奪されることもある。呼吸器障害や下痢の感染症も広がっている。
食料不足も深刻で、市場の小麦は1袋(25キロ)が600シェケル(約2万4000円)で手を出せない。子どもの10人に1人が急性の栄養失調に陥っており、「1日1食か、子どもしか食べられない日がほとんどだ」と漏らす住民もいるという。
イスラエル軍の空爆が続く中、治安も悪化している。南部ハンユニスでは6日夕、UNRWAの倉庫に銃を持った武装勢力が押し入り、中部ヌセイラットでは先週、住民同士が衝突し、銃撃があったという。清田氏は「ガザの住民は疲れ果て、心身とも荒れている」と指摘した。
イスラエルでは、UNRWAの活動を禁止する法律の施行が今月末に迫る。ガザで稼働する6か所のUNRWA診療所などでは日々、約1万5000人の患者が治療を受けている。法律が施行されれば、支援物資の食料や医薬品の配布などガザでの活動も困難になるのは必至だ。清田氏は「UNRWAの代替組織はない。活動が今止まったらガザはさらに厳しい状況に追い込まれる」と懸念を示した。
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