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江戸時代の食卓描いた若冲の絵巻、一つだけ残る謎…昨年3月に発見された晩年の大作「果蔬図巻」

読売新聞 / 2025年1月11日 15時0分

京都・福田美術館で初公開

 江戸時代中期の絵師、伊藤若冲じゃくちゅう(1716~1800年)が52種類の野菜や果物を描写した「果蔬かそ図巻」の中で、一つだけ何を描いたのか特定できない物がある。専門家の調査でミョウガやブドウなど50種類の品種が判明し、他の1種類も「かんきつ類」と突き止められたが、謎の1品はミゾソバか、ユリ根か、はたまた未知の絶滅種かと議論を呼んでいる。(山口景子)

 果蔬図巻は晩年の大作で、縦約0・3メートル、横約2・8メートルの巻物に野菜や果物が行列するように描かれている。昨年3月、京都市右京区の福田美術館が発見と所蔵を発表し、現在、同館で初公開されている。

 同館から依頼された京都府立大名誉教授の藤目幸擴ゆきひろさん(蔬菜そさい園芸学)が調査したところ、キクダイダイに始まり、種を食べたハスの花托かたく、戦後に絶滅しかけた和リンゴや桂ウリ、身近なトウガンやトウモロコシと判明。品種改良前の野生種、取り寄せた可能性が高い熱帯フルーツなどもあった。

 図巻の後半でクリの上に描かれている1房の白い小さな実とも花とも見える物だけ判別できなかった。

 藤目さんは「ミゾソバではないか」と推測する。水辺に自生する山菜で、白い花を咲かせる。かつては天ぷらや酢みそあえなどにして食べたという。一方、福田美術館学芸課長の岡田秀之さんは、ユリ根説を推す。若冲が「菜蟲譜さいちゅうふ」で描いたユリ根に似ているからだ。入館者からの支持も多いという。だが、菜蟲譜のユリ根は、根が精密に描かれていて、同一の物とは言い切れないようだ。

 若冲の実家は、京の台所・錦市場で青果を扱う青物問屋だった。藤目さんと岡田さんは「野菜や果物の描写はすべて正確で、空想の産物を描くはずはない」と口をそろえる。

 若冲は果たして何を描いたのか。江戸時代の食卓をめぐる謎は深まるばかりだ。果蔬図巻が公開されている「若冲激レア展」は19日まで。

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