焦点:チリがワクチン戦略変更、有効性踏まえ2回目接種を優先
ロイター / 2021年4月24日 7時47分
4月21日、チリが新型コロナウイルスワクチンの接種について、1回目の接種ペースを落として2回目を優先する戦略に切り替えている。写真は2月、サンチアゴでドライブスルーのワクチン接種を受ける女性(2021年 ロイター/Ivan Alvarado)
[サンティアゴ 21日 ロイター]] - チリが新型コロナウイルスワクチンの接種について、1回目の接種ペースを落として2回目を優先する戦略に切り替えている。供給不足への懸念に加え、接種戦略の柱となっている中国のシノバック・バイオテック(科興控股生物技術)製ワクチンを1回接種しても有効性が乏しいとのデータが示されたためだ。
チリは世界で最も新型コロナワクチンの接種が進んでいる国の1つ。人口約1900万人に対して既に1300万回以上の接種が終わったが、19日時点で倉庫に残っているのは約200万回分だ。
同国は年央までに人口の約8割に当たる1500万人に接種して一定の集団免疫を確保する戦略。しかし最近の接種ペースは1日に平均15万3000回と、3月の最大43万人から大きく減速している。
ロイターが観測した範囲では、首都サンティアゴ周辺のクリニックはいずれのワクチンについても接種ペースを落とし、希望者を断ったり、ワクチンが入荷するまで何時間も待つよう要請したりしている。
パリス保健相は19日、記者団に対し、新たなワクチンが入荷するまでに保有分を使い切ってしまわないよう、年齢グループごとに毎週、厳密な接種日程を策定していると説明。「落ち着いて対処する必要があると考えている。多くの企業と大量の契約を結んでおり、ワクチンは今後も到着し続ける」と述べた。
チリは7月までに1500万人に接種を施すことを目指しており、既にその5割以上が1回目の接種を、36%は2回目の接種を終えた。
ところが同国は3月に新型コロナ感染の第2波に見舞われた。この時期は夏の休暇シーズンの終わりにあたる上、英国とブラジルで最初に発見された感染力の高い変異株が広がっているという要因もある。
現在、1日に確認されている新規感染者は7000人前後で、サンティアゴのほか、多くの地域で厳格なロックダウン(都市封鎖)が実施されている。
諸外国は今、より多くの人々が早く一定の免疫を付けられるよう、1回目と2回目の接種の間隔を空けている。しかしパリス保健相によると、チリは現在2回目の接種を優先しており、今週は2回目の接種を76万回施すのが目標だ。
これは、シノバック製ワクチンを1回接種しても有効性が低いことを示すデータに対応した措置。チリが先週公表した独自の分析結果によると、1回の接種による感染防止の効果はわずか16%で、入院を防ぐ効果は36%だった。
「2回目の接種を行っていなければ、状況はもっと悪くなっていただろう」とパリス氏は言う。
これに対し、米疾病対策センター(CDC)によると、ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンは、1回目の接種から2週間以上たった時点で感染リスクが80%低下した。
チリ政府によると、新型コロナワクチンの公平な供給を目的とした国際的な枠組み「COVAX」により、今後数週間中にファイザー・ビオンテック製ワクチンが28万回分、英アストラゼネカ製が80万回分到着する予定だ。
シノバックに発注済みの1420万回分のうち、今後到着するのは残り70万回分。政府はこの他にもインドやロシアからの供給確保に取り組んでおり、接種計画を今後も円滑に進めたいとしている。
政府の新型コロナワクチン確保責任者、ロドリゴ・ヤネズ氏は16日ロイターに対し、同国の迅速な接種戦略は、ワクチン製造業者に自社製品を試すための「魅力的な跳躍台」を与えたと指摘し、今後も順調に供給を得られるとの自信を示した。
ヤネズ氏のチームはシノバックに400万回分の追加供給を求めているほか、アストラゼネカから直接購入した400万回分も5月から到着し始めるとの見通しを示した。
ヤネズ氏は「さまざまなワクチンが入れ代わり立ち代わり供給される計画だ。年央までに集団免疫を獲得できると自信を持ち、楽観視している」と語った。
(Aislinn Laing記者)
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