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アングル:崩れた菅首相の再選構想、岸田氏出馬で総裁選の行方不確実

ロイター / 2021年8月26日 15時14分

自民党総裁選の9月実施が決まり、岸田文雄元政調会長が出馬を表明したことで、菅義偉首相が描いてきた再選構想は崩れつつある。写真は岸田氏。2020年9月の自民党総裁選で撮影(2021年 代表撮影)

竹本能文

[東京 26日 ロイター] - 自民党総裁選の9月実施が決まり、岸田文雄元政調会長が出馬を表明したことで、菅義偉首相が描いてきた再選構想は崩れつつある。党内の重鎮は菅氏を支持する方向だが、その後に控える衆議院選挙で単独過半数割れ観測が浮上する中、若手を中心に党内は浮足立ち、総裁選の行方は不確実性が増している。

菅首相はこれまで、9月のパラリンピック閉会後に10月21日が任期の衆院を解散し、選挙で一定の成功を収めたうえで、総裁選を無投票で勝ち抜く計画を温めていた。自民党内の規定で総裁選は任期の10日前の期間に実施する必要があるが、党内協議で先送りをする予定だった。

それが総裁選は17日に告示し、29日に投開票する日程が正式に決まった。新型コロナウイルスの感染急拡大で東京などは9月12日まで緊急事態宣言が発出されており、「宣言中の選挙は国民の理解を得られない」(官邸関係者)ことから衆議院選挙を先行実施し、その後に総裁選を行う可能性が限りなく低下した。

さらに岸田前政調会長が出馬することを決め、無投票で再選というシナリオもなくなった。安倍前首相の後継候補と見られていた岸田氏は1年前の総裁選で菅氏に敗れたものの、2位につけた。26日午後に開いた派閥の総会に出席した議員によると、岸田氏は出馬する理由について、幅広い選択肢を提供するためと説明した。

党重鎮の安倍晋三前首相や麻生太郎財務相、そして昨年の菅政権誕生の流れを作った二階俊博幹事長らは、菅首相続投を支持する姿勢を崩していない。二階幹事長は24日の会見で、自身が率いる二階派として首相の再選を支持するかとの質問に対して「当然のことではないか。愚問だ」と答えた。

しかし、岸田氏が正式に出馬したことで「首相に投票せず岸田氏に入れる議員・党員が急増する」(党幹部)との見方が出てきた。自民党総裁選は無記名投票のため、派閥領袖が支持する候補以外の候補に投票することが可能なためだ。

コロナ対策が最大の争点となった今月22日の横浜市長選挙で、菅氏相肝入りの小此木八郎元国家公安委員長が大差で敗れた衝撃は、党内でいまだ収まっていない。自民党が今月実施した衆院選の議席予測で、最大70議席程度を失い、単独過半数を割り込むとの結果が出たことも、党内の不安に拍車をかけている。

「首相が菅氏の体制で衆院選に突入するのは自殺行為」と、ある中堅幹部は言う。

そもそも安倍・麻生・二階各氏らの首相続投支持も党内では額面通り受け取らない向きがある。総裁選には高市早苗元総務相と下村博文政調会長も出馬意向を公にしており、「安倍さんの本音は高市さんと岸田さん。高市さんの参戦で右より層からの盛り上がりを演出し、しかし落としどころはバランスの取れた岸田さんとすることで、衆院選に備えるつもりだろう」と、安倍氏に近い中堅幹部は解説する。

このため党内には、総裁選で首相が岸田氏に敗れる可能性が十分あるとみて、「負けるぐらいなら菅さんは出馬そのものを辞退する方が美しい引き際でないか」(閣僚周辺)との声も一部で出つつある。一方、「デジタル庁設立やダム改革による治水能力の向上など首相の縦割り打破の実績がもっと評価されるべき」(官邸)として首相続投の実現を目指す声も聞かれる。

選挙基盤の弱い若手・中堅を中心に、岸田氏より国民的な人気の高い河野太郎行政改革相や、石破茂元幹事長に対する待望論も根強い。両氏とも出馬への明言を控えており、石破氏は23日、「出るとか出ないとか言っていない」などと語った。

国内政治に詳しい立教大学社会学部の砂川浩慶教授(メディア論)は、「党内のロジックで岸田さんが選ばれても、岸田さんがコロナ対策を発信した記憶がない」と話す。「石破さんなど国民的に人気のある人を選ばないと失われた支持層の回復は難しいのでは」と指摘する。

竹本能文 編集:久保信博

※システムの都合で再送します。

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