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「雨の日に長靴がなぜダメ?」50年前の規則に縛られた議員の服装、自由化したら…意外な評価に

47NEWS / 2024年4月13日 10時0分

服装自由化前、2022年の市議会集合写真(戸田市議会提供)

 2010年ごろのこと。その日は雨だった。埼玉県戸田市の議場に現れたある市議会議員の装いが、議員の間で話題になった。
 「議場に長靴で入るのはいいのか?」
 議会には昭和から続く、服装に関する規定がある。定められたのは1973年、約50年前だ。こう書かれている。
 「議場に入る者は帽子、外とう、襟巻き、つえ、傘の類を許可なく着用、または携帯してはいけない」
 「議場に入る者は、見苦しくない服装をしなければならない」
 これまで、長靴以外でも議論がたびたびあった。チノパン、ショートソックス…その都度「その服装はいいのか」と声が上がり、そのたびに議会運営委員会で議題となっていた。
 2017年にはクールビズも議論の対象になり、議会運営の申し合わせ事項にこんな項目が設けられた。「男性はネクタイをするか自由(=それ以外の期間はネクタイをしなければならない)」「シャツ、ブラウスはストライプは可だが柄物は不可」


 数々の決まり事が議員の服装を縛っていた。しかし今、戸田市議会に足を運ぶと、ラフな装いの議員が目立つ。スーツばかりだったかつての風景から一変した。何があったのだろうか。(共同通信=大井みなみ)


服装規定撤廃後の本会議。フードのついた服の議員も

 ▽取るに足らない問題に時間を割いていた
 かつての議会はスーツ姿ばかりの堅苦しい風景がおなじみだった。しかし、遠藤英樹議員はその必要性に疑問を感じていた。
 「男女でルールが違い、今の時代に合っていないのではないか」
 服装に関する意見が上がればいちいち議論が必要だったが、遠藤議員は「取るに足らない問題に時間を割いている」とも考えて、声を上げることにした。
 2022年2月、所属している議会改革特別委員会に服装自由化を提案した。最近では、見た目の性と異なる服装を好む人もいる。前時代的な服装観にとらわれた規則では、いずれ支障が出る可能性があった。
 良くも悪くも前例を重視する議会だが、「服装自由化」の提案はすんなり通った。委員会では大きな反対はなし。2023年3月議会から、試行を始めることになった。自由化は好評で、そのまま12月議会から規定を撤廃することを決めた。


カーディガン姿で登壇する市議

 ▽昭和の規定、なくしたらどうなった?
 12月18日に開かれた本会議。議長として進行を担った竹内正明議員は、黒いTシャツにジャケット姿だった。委員会報告のため壇上にあがる議員も、タートルネックやカーディガンなどカジュアルな服装。ウインドブレーカー姿やロングブーツを履く女性議員もいて、おしゃれを重視する人、着心地を重視する人、それぞれだ。奇抜な格好の人は見当たらず、風景は一般企業と変わらない。もちろん、スーツにネクタイ姿の議員もいた。
 議会改革特別委員会で委員長を務める三浦芳一議員は、それまではあまり服装を気にしていなかった。ただ、自由に服を選びはじめると、「『ダンディ』と褒められるようになった」。その表情はちょっとうれしそうだ。
 他の議員からも、服装に個性が見えるようになったと好意的な声が上がる。仕事用の服がスーツばかりで、新しく買い足した人もいた。男性議員たちは「ネクタイをずっとするのは苦しいよね」と口をそろえる。


服装自由化後の各議員のファッション

 ▽品位を重んじる議会、苦情は…
 会議規則には「議員は議会の品位を重んじなければならない」という項目がある。カジュアルな服装では「議員と思われないのではないか」という意見もあった。ただ、自由化したことへの目立った苦情はないという。
 自由化の取り組みは、地方自治体の優れた政策などを表彰する「マニフェスト大賞」の関東エリア選抜に選ばれた。議会が開いた意見交換会に参加した中学生からは好評だ。
 「議会は堅苦しい印象だったが、フレンドリーに感じられた」
 服装についての会議規則は、多くの地方議会にある。だが、自由化したのは全国の議会で戸田市が初めて。竹内議員は「議員それぞれが変革していると感じる。新しい政策につながっていけば」と力を込めた。

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