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被爆者運動に携わって半世紀以上の栗原淑江さん。アーカイブ化で次世代に記憶つなぐ【つたえる 終戦79年】

47NEWS / 2024年10月4日 10時0分

栗原淑江さん

 半世紀以上、被爆者運動に携わり、現在はNPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」の事務局を担当する栗原淑江さん(77)。さいたま市にある同会の資料庫には大量の書籍のほか、文書保存用の中性紙の「もんじょ箱」が200箱以上、ずらりと並ぶ。
 被爆者たちは何を、なぜ求めてきたのか。戦争が人間にどんな苦しみを与えるのか。「彼らが求めてきたことはなくならないし、なくしてはいけない。被爆者運動について知ってほしい」
 次世代に資料を残そうと、アーカイブ化を進める栗原さんに話を聞いた。(聞き手 共同通信=今村未生)

 ▽「受忍論」


さいたま市にある、ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会の資料庫

 大学は社会学部だったので「生の人間の問題」を研究したいと思っていました。ゼミで長崎県の被爆者の生活史調査に携わり、卒業後も助手として研究室に残ることになりました。


 被爆をテーマとした1977年の国際シンポジウムに向けて調査が実施されました。その中では、原爆が生み出した地獄の中で「人を蹴飛ばして逃げた」など、人間らしいことができなかった苦しみが次々と語られました。証言を受け入れる社会の認識があってこそ、つらい経験を語れると分かりました。
 被爆者らの全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の事務局に入ったのは1980年です。憲法は政府の行為としての戦争を否定しています。しかし、国はその年の「原爆被爆者対策基本問題懇談会」の答申で、戦争被害は国民が等しく我慢すべきだとする「受忍論」を打ち出しました。


栗原淑江さん

 受忍論をどうやって乗り越えたらいいのか。これは非常に大きなテーマとなりました。1984年、被団協は「核兵器の廃絶」と「国家補償」を掲げた「原爆被害者の基本要求」を策定して、運動の要としました。40年たった今読んでも新しいと感じます。ただそれは、当時願ったことがまだ実現していないということの裏返しでもあるのです。
 受忍論は誰にでも降りかかる可能性があります。東京電力福島第1原発事故の時にも、国は被害を受忍させているでしょう。国民にもたらした被害に責任を取らない。そんな戦後国家の問題点をあぶり出したのが被爆者運動だと思います。

 ▽「自分史」

 1992年から、被爆者に「自分史」を書いてもらう活動を始めました。被爆体験だけではなく、被爆前からの人生を丸ごとつづるのです。家族、友達…。原爆投下前の楽しかった記憶があります。それを描くことによって、原爆が何を壊したのか、具体的に浮き彫りになりました。約20年間で270人が計約920編を寄稿してくれました。自分史を書くことは、自分自身の再発見につながります。新たに被爆者運動に携わる人も出てきました。


もんじょ箱

 ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会は2011年に設立されました。被団協の運動に関する資料のアーカイブ化を進めています。財産である資料に学び、核兵器も戦争もない世界の実現に生かしてほしいです。


最初の史料整理の作業=2013年8月

 被爆者は寿命が尽きればいなくなります。だけど、彼らが残したものはたくさんあります。彼らが言いたかったこと、目指したことを受け止め、今を生きる私たち自身の課題にしていかなければならないと考えています。
    ×    ×    ×
 くりはら・よしえ 1947年東京都生まれ。記憶遺産を継承する会の事務局担当。

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