60歳~64歳が対象の「高年齢雇用継続給付」とは?
オールアバウト / 2024年4月3日 21時20分
雇用保険の高年齢雇用継続給付は、60歳以降も働き続ける場合の賃金が60歳時点の75%未満に下がると支給される制度です。在職老齢年金との併給調整を含め、メリット・デメリットを詳しく解説し、制度の縮小・廃止についてもご紹介します。
高年齢雇用継続給付って何?
老齢厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳まで段階的に引き上げることによる公的年金の空白期間への対応として、国は平成25年4月の改正「高年齢者雇用安定法」で企業に「希望者の原則65歳までの雇用継続」を義務付けました。ただ、60歳以降も働き続ける際の賃金は、60歳時賃金の25~70%程度に低下するケースが多く、雇用保険では低下した賃金の一部を補う「高年齢雇用継続給付」を行っています。
高年齢雇用継続給付を受給するには、そもそも次の要件を満たす必要があります。
・60歳以上65歳未満、かつ雇用保険の一般被保険者であること
・雇用保険の被保険者期間が5年以上あること(基本手当等を受給したことがある場合は、基本手当の受け取り終了から5年以上経っていること)
・60歳以降の賃金が、60歳時点の75%未満であること
・失業保険の基本手当や再就職手当を受給していないこと
・育児休業給付や介護休業給付の支給対象となっていないこと
この要件をクリアすると、雇用保険の基本手当の受給状況によって、【1】「高年齢雇用継続基本給付金」あるいは【2】「高年齢再就職給付金」のどちらかを受給することができます。以下にそれぞれの給付金について紹介します。
【1】高年齢雇用継続基本給付金とは?
高年齢雇用継続基本給付金とは、基本手当を受給しないで継続して働く人に支給されます。支給期間は、60歳になった月から65歳になった月まで。支給額は支給対象月の賃金の低下率によって異なり、令和5年8月1日現在の支給上限・下限額は次の通りです。・支給上限額37万452円。支給対象月の賃金がこれ以上の場合は支給されない。支給対象月の賃金と支給額の合計が37万452円を超える場合は、「37万452円-賃金」が支給される。
・支給下限額2196円。支給額が2196円を超えない場合には支給されない。
また、60歳到達時の賃金月額にも上限額・下限額があります。令和5年8月1日現在の上限額は48万6300円、下限額は8万2380円です。それを超える、あるいは下回る場合は、この上限額・下限額を使って支給額が計算されます。
支給限度額と賃金月額は、毎年8月1日に改定されます。
【2】高年齢再就職給付金とは
次に、高年齢再就職給付金の受給要件や受給額、受給期間をご紹介します。雇用保険の基本手当を受給している60歳以上65歳未満の人が、再就職して賃金が退職前の75%未満に下がった場合、「高年齢再就職給付金」が支給されます。受給要件は、前出の高年齢雇用継続給付の受給要件に、次の2つが加わります。
・再就職手当、または早期再就職支援金を受給していないこと
・1年を超えて引き続き雇用されることが確実であること
・再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること。
支給額は、「高年齢雇用継続基本給付金」とほぼ同額で、支給期間は次の通りです。
・基本手当の支給残日数100日以上200日未満:1年間を上限に65歳到達まで
・基本手当の支給残日数200日以上:2年間を上限に65歳到達まで
在職老齢年金との併給調整により、年金が減る
高年齢雇用継続給付を受給すると、在職老齢年金との併給調整が行われ、年金の一部が減額されます。減額される年金額は賃金の低下率によって異なります。減額される金額など詳しくは、年金事務所等で確認してください。令和7年度に給付率が縮小
令和2年4月、通常国会で「高年齢雇用継続給付の縮小・廃止」が可決されました。まず、令和7年度から給付率を「賃金の原則15%→10%」に縮小します(令和7年3月31日までに60歳になる人は現行通り)。そしてその後は段階的に廃止、の予定です。人手不足が顕在化し、65歳定年を導入する企業が増加傾向にあるとはいえ、依然として60歳定年の企業が主流です。令和3年6月1日~令和4年5月31日に60歳定年に到達した人の87.1%が継続雇用で働き続けており、高年齢雇用継続給付を必要とする状況に変わりありません。しかし令和5年4月1日から、公務員の定年年齢の引き上げが始まりました。令和5年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げて、令和13年度に定年年齢が65歳となります。
民間企業も「65歳までの雇用と一定の賃金の確保は可能」とする国の思惑通りに進んでほしいものです。
文:大沼 恵美子(ファイナンシャルプランナー、年金アドバイザー)
大沼FP・LP設計室代表。FPとして2002年に独立開業。「健康は食のバランスから、貯蓄は生活のバランスから」という考えを提唱する。企業や地方自治体等の各種セミナーやFP資格取得講座、福祉住環境コーディネーター資格取得講座の講師も務める。
(文:大沼 恵美子(ファイナンシャルプランナー、年金アドバイザー))
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