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人生は「老い方」ににじみ出る?高校生だった私の性被害を黙認した叔母の悲惨な“老いの姿”

オールアバウト / 2024年4月2日 22時5分

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実の両親は離婚、行き場を失い叔母夫婦の養女になった女性。しかしそこでも叔母の浮気や離婚、さらに再婚相手からの性的虐待に遭う。大人になった彼女は、入院している叔母を見舞ったところ、驚くような姿になっていた。

しばらくテレビで見かけなかった著名人が、久しぶりに他の人の「偲ぶ会」などに出てきて世間に映ったとき、人は「一気に老けたなあ」と思うものだ。年月が経てば人は老いる。自分も同じ年月を生きているのだから、同じように老いていく。それでも人に対して「老けたなあ」と思うこと自体が切ない。

親代わりの叔母と絶縁するまで

「私の両親は、私が3歳の頃離婚して、それぞれに新しい家庭をもったんです。行き場を亡くした私を養女として育ててくれたのが、母の妹である叔母夫婦でした。ふたりには子どもがいなかったから、最初は大事にしてくれたんだと思う。でも私が小学校に入るころ、夫婦間でケンカが絶えなくなり、中学に入ったときに離婚しました」

辛かった子ども時代を振り返ってくれたマユミさん(43歳)。彼女は叔母とふたりで暮らすことになったが、「かなりの貧乏生活」だったという。

友だちの家でクッキーを出されたが手をつけず、「持って帰っていい?」と友だちの母親に聞いたことがある。

「私、このクッキーを夕飯にしたいからと言ったらしいんです。自分では覚えてないんだけど、友人とお母さんは、とても切ない思いをしたそうです。その日、確かおにぎりをもらったと思う」

叔母の再婚相手に性被害を受けた

その友人一家には、それからも気にかけてもらい、マユミさんはなんとか中学を卒業した。叔母はそのころ再婚、一回りも年下の男性がいきなり一緒に暮らすことになった。

「性被害を受けました。叔母は気づいていたと思う。でも何も言わなかった。公立の高校に通っていましたが、とにかくお金がなかったのでアルバイトをしたんです。自分の食い扶持くらい稼がないとと思って。叔母は小遣いもくれなかったし、帰るとふたりがいなかったのもしょっちゅうだった。

あるとき叔母に『あんたが彼に色目を使ったんでしょ』と急に言われて殴られました。どうやら再婚した夫が他でも浮気をしていて、挙句、私のこともバラしたようです。あのころ、私の心は死んでいたけど、叔母も別の意味で気持ちが死んでいたんでしょうね」

マユミさんは高校を卒業すると叔母の元を離れて上京した。当時は生みの両親、叔母への憎悪に満ちていたという。

四半世紀ぶりに叔母に会って

両親とも叔母夫婦とも連絡を断っていたマユミさんだが、この25年の間に大学の2部で勉強して大卒となり、職場もいくつか変わった。30代前半で今の企業に職を得て、やっと安定した生活を手に入れた。

「われながら頑張ったなと思います。今の職場では周りがみんないい人で、楽しく仕事をしているし、他の部署の人と結婚もしました。他の人には普通のことでも、私にとってはひとつひとつがありがたくてうれしいことばかり。コツコツ真面目に頑張ってきてよかったと思っていたんです」

昨年夏、退勤しようと職場のビル近くを歩いていると「マユミちゃん?」と男性に声をかけられた。誰だかわからず戸惑っていると、叔母の元夫だと名乗った。そういえば面影があった。

「喫茶店で少し話しました。私は叔父と叔母の離婚理由を知らなかったけど、叔父に言わせると叔母の浮気が発端だったと。叔父は私を連れていきたかったけど叔母に拒絶されたと言っていました。ずっと気になってた、申し訳なかったと叔父が涙を浮かべて謝ってくれたんです」

自分を見る叔父の目は優しかった。この人は嘘をついていないと確信した。叔父は、元妻である叔母が現在、病気がちで生活に窮しているとつぶやいた。何もしなくていいから会ってやってくれないかと叔父は言った。

「叔母は再婚した男に逃げられ、元夫である叔父にすがったようです。ただ、叔父も新しい家庭があったから、私の母に連絡をした。ところが私の母は『妹のことは知らない。私が面倒をみる義理もない』と言ったそうです。私を自分の妹に押しつけたくせに。

結局、一番悪いのは私の両親なんですよね。叔母夫婦を恨むのは筋が違うのかもしれないと思ったけど……。

とにかくいろいろなことが蘇ってきて、私自身、叔父と話しているうちに心身ともに具合が悪くなってしまいました」

病室で、別人のような叔母に再会

あらためて連絡すると言って帰宅し、夫に相談した。夫は彼女の混乱を少しずつ解いていくように話し相手になってくれた。

「昨年暮れに叔母が入院したというので、覚悟を決めて会いに行きました。あのころ私が受けていた性被害を、叔母が知っていたのかをはっきりさせたかった。だけど病室に入るなり、驚きました。まったく面影もなく、老け込んだ叔母がそこにいたから。

叔父はまだ面影があったけど、叔母は別人のようだった。まだ60代ですよ。私の周りには60代でも若々しくて元気な女性がたくさんいるけど、叔母はひどかった。病気のせいというよりは、彼女の人生そのものが過酷であり、彼女の生き方が悲惨だったんでしょうね」

マユミさんはあえてひどい言葉を使っていた。叔母への憎しみが渦巻いているのだろう。性被害の件を問いかけても、叔母は何も答えなかった。マユミさんへの謝罪もなかった。叔父は、叔母と姉、つまりマユミさんの母親との間にもいろいろ確執があったらしいと話してくれた。

「だけど最終的に全部、マユミちゃんがかぶっちゃったんだよね、大人の事情を。かわいそうなことをしたと僕は本当に思っていると、叔父だけがまた謝ってくれた。私が望んだ子ども時代は返ってこないけど、私は大人になってから、いい人たちに巡り会えて幸せだった。叔母は私に会った1週間後に亡くなったそうです」

人生、何があるかわからない。誰もが老い、老いは決して美しいものではない。だが、「老い方というものがある」とマユミさんは言う。そこまでの人生が、老いたときにすべて浮き上がってくるのだ、と。叔母に会ったことは、今後の自分の生き方を考えるよすがになったと彼女は真剣な表情になった。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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