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結婚生活27年「すべて夫の許可が必要だった」。50代、夫の急逝で気づいた当たり前の自由

オールアバウト / 2024年4月7日 22時5分

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どこへでかけるにも何をするにも夫の許可が必要だった。愛されているのではなく夫の支配欲と所有欲の強さがそうさせているのだと思った。3年前に夫が脳出血で亡くなったあと、自分に許可を出す人はもうおらず、自由を感じた。

妻に先立たれた夫は意気消沈し、夫に先立たれた妻は元気になるというイメージがある。実際、米国・ロチェスター工科大学の研究(2012年)でも、「妻を亡くした男性は平均よりも早死にする可能性が30%高い」との結果が出ている。

夫に「締めつけられていた」と自覚した

3年前に夫に先立たれたサホさん(58歳)。28歳で結婚、27年間連れ添った夫は、今思えば「身勝手で、いわゆるモラハラのひどい人だった」と言う。夫が亡くなった当時、子どもたちは26歳と24歳。長男は就職して家を離れ、長女は大学院に進学していた。

「3歳年上の夫とは社内結婚だったので、私は退職。転職を考えているうちに妊娠し、結局、下の子が小学校に入るまでは専業主婦でした。それ以降は子どもの成長に合わせてパートを変えながらやってきた。

40代で家を買ったとき、夫は『おまえたちはオレに感謝しろよ』と言ったけど、私が経済的なことも含めて家庭内をうまくおさめてきたから買えたとも言えるんじゃないかなと内心、不満だったのを覚えています」

子どもたちが大学生のころ、サホさんは久しぶりに高校の同窓会に参加しようとした。土曜日の夜のことだ。

夫に「同窓会に行く」と言ったら、「オレのごはんを用意していってくれるんでしょ」と当然のように言う。そこには「養われている身なんだから、そのぐらいのことはしろ」と無言の圧があった。午後から美容院に行くつもりだったサホさんだが、結局、夫の食事を用意しているうちに美容院には行きそこなった。

夜8時、夫から「帰ってこい」と電話

「その日は楽しくて二次会まで行ったんですが、夜8時を過ぎたら夫から電話がかかってきました。『主婦なんだから早く帰ってきなさい』って。主婦である以前に、私は大人で、夫のそんな指図を受けるいわれはない。友人に言ったら『愛されてるのねえ』と笑われたけど、これは愛ではない。支配であり所有欲だと感じました」

反抗心がむくむくとわいて、彼女が帰宅したのは午前零時近かった。夫が心配しているかと思いきや、食べた皿をキッチンに持っていくわけでもなく、リビングのソファで高いびき。サホさんは皿をそのままにしてさっさと寝室に入って寝てしまった。

翌日の夫の不機嫌さは思い出したくもないという。

ひとりは寂しいと思ったけれど

そんな生活は、3年前のある日、突然終わった。夫が急逝したのだ。出勤途中、駅のホームで倒れたのだ。脳出血だった。

「病院に駆けつけましたが、意識が戻らないまま、その日の晩に息を引き取りました。何がなんだかわからないままに通夜と葬儀が終わり、気づいたら長男はひとり暮らしの家に戻り、長女も大学院とバイトで忙しく動き始めました。私だけがぼうっと日々を過ごしていたみたい」

パートは続けたが、どこか自分が自分でないようなふわふわした気持ちだった。四十九日が終わり、ようやく人心地がついたころ、学生時代の友人たちが心配して食事でもしようと誘ってくれた。

「3人ほど集まってくれて……。出かけようとしたとき、あれ、と思ったんです。オレのご飯はどうするんだと言われなくていい、何時に帰ってくるとも聞かれない。娘には友だちと会うとLINEを送りましたが、『了解』と返信が届くだけ。手応えがないといえばないんだけど、これって私を縛る人がいなくなったということなのかと思いました」

すべて夫の「許可」が必要だった

友人たちに会ってそんな話をすると、「それは自由だということよ」と言われた。その場で、いつか4人で旅行でもしたいね、いつにしようかと盛り上がった。

「私、もう誰かに相談しなくていいんだなと思いました。夫がいるときは友だちと旅行にはいけなかった。食事をするのだって、夫に相談していいよと言われなければ行かれない。自分のことなのに、すべて夫の“許可”が必要だった。でも、もうそれをしなくていいんだと思ったら、なんだか急に体からすべての力が抜けていきました」

それだけ夫に気を遣った生活をしていたわけだ。そして彼女は、そのことに気づいていなかった。それ以降、サホさんは娘と最終回の映画を観にいったり、土日に旧友に会いにひとりで関西へ出かけたりするようになった。

「夫に相談せずにひとりで何でも決められる幸せを満喫しています。結婚前は、自分のことは自分で決めていたはずなのに、結婚後はすべて夫に相談せざるを得ない状態だった。夫の衣食にかかわることは私が全部世話し、私の行動には夫の許可が必要だった。変な関係だったんだと改めて思いました」

娘との今の暮らしは、ルームシェアする友人関係のようなものだとサホさんは言う。気楽で、お互いの意志を尊重しあいながら、時間が合えば一緒に行動することもある。夫ともこんな関係が築けたら、もっと楽しい人生だったのに……と彼女は言った。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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