トマトは熟すほど科学的にも「うま味」が増す!? 最高においしくトマトを食べるコツ【大学教授が解説】
オールアバウト / 2024年4月16日 20時45分
赤くしっかりと熟したトマトの方がおいしく感じるのは、トマトには「うま味成分」が豊富だからです。トマトが熟れるほどおいしくなる科学的な理由と、さらにおいしく食べるための3つのポイントを、わかりやすく解説します。
Q. トマトが熟すほどおいしく感じるのは、なぜですか?
Q. 「かぼちゃや芋、葉物などのさまざまな野菜がありますが、トマトが一番熟すほどおいしくなる気がします。『完熟トマト』など『完熟』であることを強調して売られているのも、野菜ではトマトくらいではないかと思うのですが、なぜ熟すと味がよくなるのでしょうか?」A. 野菜の中でもっとも「うま味」成分が豊富で、熟すほど増すからです
「トマトが熟すほどおいしい」というのは、科学的に見ても「うま味」が増すからです。食べ物に含まれていて「うま味」の元となるのは、アミノ酸の一種である「グルタミン酸」と、核酸の一種である「イノシン酸」や「グアニル酸」です。グルタミン酸は昆布やチーズに、イノシン酸は鰹節に、グアニル酸は干しシイタケに多く含まれています。
乾物類をイメージする人が多いかもしれませんが、野菜にも、うま味成分はたくさん含まれています。西洋料理や中華料理で、多種類の野菜を煮込んで、うま味たっぷりのスープが作られるのは、このためです。そして、野菜の中でもっともうま味成分が豊富なのが「トマト」なのです。
ある調査データによると、トマトには、100gあたり100~250mgのグルタミン酸が含まれています。うま味の王様ともいえる「昆布」は、100gあたり200~3400mgのグルタミン酸なので、これに比べると少ないようですが、他の野菜のグルタミン酸含量が100gあたり50mg程度であるのに比べると十分に多いと言えます。
しかも、昆布は毎日たくさん食べるようなものではありませんが、トマトなら生のままサラダで食べたり、煮込んでスープにしたり、いろいろな形で丸ごとおいしく食べられますよね。
日本の一般家庭における年間消費量は、昆布はよくて100gくらいなのに対して、トマトは10kgと圧倒的に多いので、私たちはトマトから一番多くのグルタミン酸を摂取していることになります。
こうしたトマトのうま味をしっかり摂るために、さらに3つのことを知っておくといいでしょう。
1つめは、トマトの中でグルタミン酸が一番多く含まれているのは、中のドロッとしたゼリー部分だという点です。一般に、ゼリー部分は、他の果肉の部分よりも4倍くらい多くのグルタミン酸が含まれているそうですから、サラダなど生で食べるときにはゼリー部分ものがさず食べるのがいいでしょう。
2つめは、トマトは熟せば熟すほど、グルタミン酸量が増して、うま味が強くなるという点です。これは、熟成が進行すると、グルタミナーゼという酵素が働いて、アミノ酸のグルタミンをグルタミン酸へ変換する反応が進むとともに、ある種のタンパク質分解酵素が働くことで果実内にあるタンパク質の分解が進行して、グルタミン酸が遊離されてくるからです。
真っ赤なトマトは食欲をそそりますが、私たちは本能的に「赤=熟=うまい」を知っているのかもしれませんね。
3つめは、煮たり焼いたりして加熱処理することによって、トマトに含まれるタンパク質が分解されて、グルタミン酸量を増やすことができるという点です。
トマトの旬は、春から初夏と言われます。いろいろなアレンジを楽しみながら、毎日おいしくいただきましょう。
阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))
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