1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

R15+指定がされるほどのバイオレンスが「必要」だと思えた最新日本映画5選

オールアバウト / 2024年4月22日 22時10分

写真

暴力描写のためR15+指定がされた、最新日本映画を5作紹介しましょう。いずれも露悪的なだけでない、「痛み」を感じさせるバイオレンスこそが、作品には必要だと思えたのです。(C)小路紘史

深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズや『バトル・ロワイアル』、石井隆監督の『GONIN』シリーズ、北野武監督の『アウトレイジ』シリーズなどなど……バイオレンス描写の強い日本映画は、確かな支持を集めてきました。

韓国でも暴力が鮮烈に描かれた映画がコアな人気を得ていますが、近年の日本でもそれらと遜色(そんしょく)ない、絶大なインパクトのある映画が世に送り出されています。ここでは、2021年以降に公開された、R15+指定されるほどの暴力描写にも確かな意義がある、いや“必要”だと思えた日本映画を5作紹介しましょう。監督の名前も併せて知ってほしいのです。

1:『辰巳』(2024年)小路紘史監督

長編デビュー作『ケンとカズ』が各所で絶賛を浴びた小路紘史監督の8年ぶりの新作かつ、製作に5年を要した労作です。物語は、裏稼業で生計を立てる男が、殺害された元恋人の妹と反発しあいながらも、やがて復讐(ふくしゅう)への道へと進むというもの。プロットそのものはシンプルながら、複雑な裏社会の人間関係、いい意味で胃が痛くなりそうな怖いお兄さんたちの描写も大きな魅力になっています。(C)小路紘史年の差がある男女2人の逃避行と戦いが描かれることから『レオン』『ローガン』といった作品を連想させつつも、安易な予想を裏切る話運びにはオリジナリティーも存分。ヒロインはツバやガムを吐く攻撃的な性格で、すぐには守りたいとはとても思えないのですが、だからこそ自己保身的な行動原理も見えていた主人公の、彼女に対する「変化」にも感動があります。(C)小路紘史全員がオーディションで選ばれたという役者陣全員が素晴らしく、特に主役の遠藤雄弥と森田想の掛け合いには、「この映画にしかないマジック」が起こっていました。自主制作だからこそのしがらみがない「作り手が作りたいものを作った」ことが実感できるとともに、万人が共感しやすい普遍性と娯楽性もあわせ持っているのも美点です。(C)小路紘史公開後すぐに称賛の声が相次ぎ、記事執筆時点でFilmarksで4.0点を記録するのも納得です。公開館数は少ないですが、映画館で集中して見てこその演出や話運びもふんだんなので、ぜひ劇場で鑑賞する機会を逃さないでほしいです。

2:『首』(2023年)北野武監督

日本のバイオレンス映画の第一人者といえばやはり北野武監督。総製作費約15億円をかけた豪華キャストが集結した大作ながら、ジャンルとしてはかなりブラックコメディー寄り。コントのような滑稽なやりとりだけでなく、誰もが知る歴史上の戦国武将が「どいつもこいつも狂ってやがる」というキャッチコピー通りに狂気に満ちた言動をする様は、いい意味で「悪い冗談」のようで、怖いと同時に笑ってしまうところもあるのです。

物語の流れは『アウトレイジ』に通ずる一触即発のパワーゲームで、異常な事態それぞれが「人があっさりと死んでいった戦国時代では日常茶飯事だったのかもしれない」と思えるのもゾッとします。実質的な主人公と言ってもいい、木村祐一演じる曽呂利新左衛門の皮肉たっぷりの言葉には、共感する人もきっと多いことでしょう。

3:『グッバイ・クルエル・ワールド』(2022年)大森立嗣監督

物語の発端は、一夜限りの強盗団がヤクザの金を強奪し、それを知った悪徳刑事が「クズ同士の潰し合い」を提案するというもの。その後は、「居場所を見つけられなかったために悪に堕ちざるを得なかった者たち」による切なさもたっぷり表れていました。借金を抱えた元会社員、元政治家秘書の肉体労働者、そして西島秀俊演じる「元ヤクザながら静かに生きたいと願う男」の心情は特に切実でした。

“過去”は、彼を簡単には逃してはくれず、「人はいつかやり直せるが、過去が重いものであればあるほど、それは簡単ではない」という残酷かつ普遍的な事実も突きつけられます。宮沢氷魚と玉城ティナが扮(ふん)する若者たちが破滅的な行動をせざるを得ない様も強烈な印象を残すでしょう。人間の暗部も含め、丹念に描く大森立嗣監督の作家性が存分に発揮された、いい意味で爽快感とは無縁の「フィルムノワール」を求める人におすすめします。 

4:『激怒』(2022年)高橋ヨシキ監督

映画ライターの高橋ヨシキが企画・脚本・監督を手掛けた作品で、激怒すると見境なく暴力を振るってしまう悪癖を持つ刑事が、度重なる不祥事の末に海外の医療機関で治療を受けるも、その治療半ばで日本に呼び戻され、雰囲気がガラリと変わった街で過酷な現実に直面するという物語です。初めから違和感だらけの場所に隠された陰謀のおぞましさには、現実の日本社会にはびこる権力者への怒りも込められていました。

正直に言って作劇や演出には荒削りなところもありますが、だからこそのパワーがありますし、メッセージ性もストレートに表れています。フレッシュなアイデアのバイオレンスも、残酷描写のある映画を支持し関わってきた高橋ヨシキというその人らしさ。怒りをためにためてからの「爆発」にカタルシスを求める人にはうってつけの映画です。

5:『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)白石和彌監督

前作は同名小説を原作としていましたが、今回は前作から3年後となるオリジナルストーリーが展開。最大の注目ポイントは白石和彌監督から「日本映画史に残る悪役にしてほしい」と重すぎるプレッシャーをかけられた鈴木亮平で、「私自身が1番怖いと思う人は、“自分を悪いと思っていない人”だと思い至りました」と鈴木亮平自身が語っている通りの、「悪の自覚がない悪」には身震いするほどの恐ろしさがありました。

松坂桃李が新米刑事だった前作から一転、広島弁が板についた切れ者になっていて、見るからに優しそうな中村梅雀との“バディ”ぶりも見どころ。村上虹郎演じる経験の浅いスパイの活躍も重要で、彼を心配する姉役の西野七瀬との関係性も感情移入しやすいものでした。怖いお兄さんがたくさん登場する暴力にまみれた作品ですが、「普通の人」の描き方も秀逸な映画ともいえるでしょう。

なお、その白石和彌監督の最新作『碁盤斬り』が5月17日に公開予定。こちらはG(全年齢)指定で暴力描写は最小限、親しみやすい作風ながら緊張感のある演出も冴えわたる万人向けの傑作となっているので、主演の草なぎ剛のファンはもちろん、多くの人に見ていただきたいです(「なぎ」は、弓へんに前の旧字体、その下に刀)。

R15+指定&暴力描写に意義がある傑作はほかにも

そのほか、最近のR15+指定のバイオレンスな日本映画で、特におすすめしたい傑作は以下の3本です。

『グリーンバレット』(2022年)……「殺し屋育成合宿」の模様を追ったフェイクドキュメンタリー。『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督らしくダメな人たちが愛おしく描かれています。R15+指定にしては残酷描写は控えめ。

『見えない目撃者』(2019年)…… 韓国映画『ブラインド』のリメイクで、吉岡里帆が視力を失った元警察官役を熱演。高杉真宙演じる少年とのバディ感も魅力的で、万人向けです。

『宮本から君へ』(2019年)……テレビドラマ化もされた人気漫画の映画化作品で、正義感の強い営業マンの戦いを描く。全身全霊で役にぶつかる池松壮亮と蒼井優が素晴らしいという言葉では足りません。

いずれの作品でも、R15+指定されるほどの暴力描写はただ露悪的なだけでなく、物理的にはもちろん精神的な「痛み」を感じさせるためのものであり、それでこそキャラクターに思い入れもできるようになっています。バイオレンスに恐れ慄くのももちろん正しい反応ですが、それだけでない意義を、それぞれの映画から考えてみてほしいです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 
(文:ヒナタカ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください