なじみの店にしか行かなくなったら注意! 精神科医が教える、脳の老化のサイン
ananweb / 2022年9月21日 18時0分
脳の使い方次第でいくらでも、幸せを引き寄せることができる。そのヒントを精神科医・和田秀樹さんが提言!
毎日少しずつ新しいチャレンジを。そうすれば脳の若さは保たれます。
「頭が良い=学歴が高い、仕事ができる」と多くの人が勘違いしています。たしかに勉強法を工夫したり試験対策をして、偏差値の高い大学に入学したり、大企業に就職するのは素晴らしいことですが、ただそれだけで満足している人は、頭を良く見せるための肩書を得ただけにすぎず、頭が良いことにはなりません。私は東大出身ですが、今62歳なので卒業したのは約40年前になります。当時は学力的には頭が良かったのかもしれませんが、だからといってそれが今の私の頭の良さの保証にはまったくならないですよね。私自身、頭の良さとは、能力ではなく態度であると考えていて、心がけ次第で誰でもいくらでも身につけられるものだと思っています。頭が良くなりたいという思いや、いろいろなことを試してみようという態度が、ユニークな人間を作っていくんです。学歴や知能テストの点数が高くなくても、他の人が思いつかないようなアイデアをポンと生み出して、人の役に立つことができたりする。しかし自分はバカだからと卑下して生きていたら、何も生み出すことはできない。つまり、現在進行形でどれだけ勉強しているか、そしてどんな生き方をしているか、体験や経験の積み重ねで、頭の良し悪しは大きく変わってくるんです。
“これからは女性の時代”とよくいわれるようになり、女性の経営者や管理職を増やす企業が多くなりました。しかし頭数だけ揃えたり、男性の代わりの女性ではなく、女性ならではの感性や発想を生かせないとまったく意味がないんです。たとえば消費の主役は女性ですし、「こういうものを作ったら売れる」というアイデアをたくさん持っていると思うんです。そういった柔軟な発想ができることこそが、本当の頭の良さです。いろいろなことに興味や関心を持ち続けていれば、仕事に限らず、長い人生の中で頭の良さを開花できるチャンスは巡ってくると思います。
しかしやっかいなことに年齢を重ねると脳は老化していきます。それも物忘れがひどくなったり、頭の回転が鈍くなったりするより先に、思考や創造性を担う「前頭葉」の機能が衰えていくんです。前頭葉が萎縮すると、意欲がなくなったり、新しいことへの対応能力が落ちて、同じことを繰り返す「前例踏襲型」になっていきます。なじみの店にしか行かなくなったり、同じ著者の本しか読まなくなったりするのがいい例。チャレンジ精神がなくなるわけだから、どんどんつまらない人間になっていく。頭を使わなくなったり、体を動かさなくなったり、「若くいたい」とさえ思わなくなってしまうから、早く老けるわけです。だから前頭葉を使い続けていれば、脳の若さは保たれ、人生を楽しく生きていくことができる。前頭葉を鍛えるといっても、そんな大げさなことはしなくてもいい。毎日違う店でランチを食べたり、スーパーで見つけた新しい食材を使って料理してみたり、普段取り入れていないファッションを試してみたり…。人生は実験だと思っていろいろなことに挑戦してみれば、脳はそれに対して反応を起こし、自ずと前頭葉が鍛えられるんです。そういう意味では実行力が大事です。試してみるという経験ができたことが脳にとって大事になってくる。
頭が良くなりたいという思いをずっと持ち続けて、毎日の生活のなかにちょっとずつ実験を取り入れてみてください。いくつになっても、周りから「面白い人だ」と思われるような人間でいられれば、それが人生の幸せにもつながると思います。
わだ・ひでき 「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』(幻冬舎)など専門の老年精神医学のほか、教育問題や人材開発の分野でも多数の著書を執筆。
※『anan』2022年9月28日号より。イラスト・MASAMI 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)
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