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ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024開催、高級ヘッドホンシステムの新試聴イベント

ASCII.jp / 2024年3月4日 7時0分

フジヤエービック主催の合同試聴イベント「ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024」が3月2日に開催された。場所は中野セントラルパークカンファレンスの地下ホールだ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
会場全景

これまでにない趣向で運営

 初開催のイベントであり、これまでとは違った運営方法だった。12:00~18:00の開催時間を1時間ごと合計6回に分割、完全予約制で1時間ごとに参加者を入れ替えるというものだ。参加者がゆっくりと試聴できるようにしたという。これまでの試聴イベントに比べると、かなりゆったりとした雰囲気で試聴でき、特定のブースに列ができることもなかった。

 会場には合計9つのブースが設けられた。内訳はブライトーン、finalとコペックジャパンの共同ブース、エミライ、完実電気、HIFIMAN、Focal(LUXMAN)、タイムロード、Brise Audio、DVASとスタジオイクイプメントの共同ブースだ。各ブースには説明員が付き、ここで試聴するのが基本だ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
中央テーブル

 また、会場の中央にヘッドホンの展示テーブルが設けられ、ここにfinalの「D8000 Pro」やDan Clark Audio「Expanse」など多数のハイエンドヘッドホンが並べられていた。これらは自分のヘッドホンを持参しなかった参加者が自由に使用できることに加え、発売されたばかりのfinal「D7000」やユニークなLB-Acoustics「MYSPHERE 3」などを各ブースの展示機材と自由に組み合わせて使えるという趣向だった。

 私はゼンハイザーの「HD 800」を持参したが、これらの展示品を使用することで、より多彩で興味深い試聴ができた。

完実電気ブースの様子

 どのように試聴したかの例を挙げよう。

 最大規模のブースを構えていた完実電気ブースの目玉は、本イベントのキービジュアルにも用いられている日本初上陸の製品、Warwick Acoustics「APERIO Electrostatic Headphone System」だ。これは静電型ヘッドホンと静電型アンプのシステム製品で、ネットワークプレーヤーのLUMIN「X1」をソース機に用いてLUMINアプリで操作した。システム総額600万円という文字通りのハイエンドオーディオだ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
完実電気のブース

 まずは着席して、この組み合わせで聞いてみる。ジャズトリオの音源を聞くと、楽器の音像は静電型らしくシャープで整った音だが、思いのほかパンチがありリスニング目的でも通用するだろう。クラシックではソースのダイナミックレンジの大きさがよくわかり、迫力もひときわ高い。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
Warwick Aperio

 次にdCSのLINAシステム(Master Clock、Headphone Amplifier、Network DAC)を聴いてみた。ソースはDELA「N1」を使用してLINNのKAZOOアプリで操作する。持参したHD 800を使用して聴いた。確かに音は素晴らしく、自分のHD 800では今まで聴いたことのないような高精細なサウンドが楽しめた。伸びやかで美しく、dCSらしく繊細で整った音世界だ。クロックやDAC部分が優れているのはもちろんだが、dCSには珍しいヘッドホンアンプの音も優れていて相当な力感を感じる。

 ここで、会場中央のヘッドホンコーナーからfinal「D7000」を借りてdCSのLINAシステムを試聴し直してみた。長年愛用のHD 800よりも迫力があり、音像も鮮明に感じられる。ピナアライン・ディフィーザーで音像が滑らかなD7000の思想がdCSのLINAシステムだと良く伝わる。このように、ヘッドホン側の比較試聴も同時にできるのが本イベントの特徴だ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
Z10eとHD 800
ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
LINAシステムとHD 800

 続いて真空管ヘッドホンアンプであるLinear Tube Audio「Z10e」を試聴した。これは静電型とダイナミック両用の珍しいヘッドホンアンプだ。「Z10e」はアナログアンプなのでDACはMSB Technologyの「Discrete DAC」を使用した。これは文字通りR2R形式ディスクリート設計のDACである。

 Z10eの音は真空管らしく滑らかで暖かいが高精細で迫力もある。ハイエンドの真空管アンプらしいと感じた。Discrete DACだけの音質にも興味があったので、説明員に依頼してヘッドホンアンプを同じMSB Technologyの「Premier Headphone Amplifier」に変更した。こうした贅沢な試聴ができるのも今回のイベントの特徴だ。

 この組み合わせを自分のHD 800で聴いてみると、より整ったサウンドになるが、音のエッジが滑らかで、先ほどの滑らかな音の印象の幾分かはMSBのR2R形式DACの恩恵でもあったことがわかる。

 このように多彩な楽しみ方ができるイベントだ。

ハイエンドケーブルの魅力を探る

 Brise Audioブースでは試聴用の試作ヘッドホンアンプがユニークだった。交換用ケーブルで知られるBrise Audioが試聴用のアンプを製作した理由については、バランス接続ケーブルを最大限に活かせる試聴環境を作りたかったということだ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
Brise Audioのブース

 HD 800の低音を引き出せるようなケーブルはないかと聴いたところ、「YATONO-HP Ultimate」を試聴させてもらった。これは1.3mで35万円というハイエンドケーブルだ。試してみると、通常は低音が抑えられているHD 800とは思えないほど太い低音が出てきたのに驚いた。ハイエンドケーブルらしくヴォーカルの肉質感も高く、ステージの前で聴いているような迫力もある。HD 800は本来モニター目的だがこれならリスニングに使っても良いと思えた。新たなHD800の側面を見つけた感覚である。

 次はHD 800のモニター的な側面をさらに向上させるケーブルを選んで欲しいと頼むと、「MIKUMARI Ref.2」を選択してもらった。これも1.3mで15万円という高価格ケーブルだ。同じ曲を聴いてみると、HD 800らしく音の帯域バランスが良く音の細部がわかりやすい音だと感じた。まさに正しい音が出ているようで、エンジニア向けのようなモニター的音傾向と言える。出荷実績としてはHD 800にはMIKUMARI Ref.2の方が高いというのも納得できる組み合わせだ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
MIKUMARI Ref.2

 YATONO-HP UltimateではHD 800の新たな側面を発見でき、MIKUMARI Ref.2ではHD 800の力をそのまま伸ばすことができるという面白さもリケーブルの楽しみと言えるだろう。

特徴的なMYSPHERE 3をハイエンドシステムで楽しむ

 エミライブースでは、Ferrum Audioの「HYPSOS」「OOR」「WANDLA」のシステムで試聴した。このシステムはヘッドホンに向いたとても高音質のシステムだ。以前試聴したことがあったので、前から試してみたかったブライトーン扱いのB-Acoustics MYSPHERE 3を中央のテーブルから持ち込んで聴いてみた。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
Ferum Audioのシステム
ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
エミライブース、聴いているのはスタッフだ。

 MYSPHERE 3はAKGで「K1000」を開発したメンバーが新たに開発した完全オープン型のヘッドホンである。私はAKG「K1000」も持っているのだが、K1000はその完全オープンというユニークさとは裏腹に高域が強すぎるというマイナス面も持っていた。しかしMYSPHERE 3ではそうしたこともなく、帯域バランスの整った素晴らしい音質を楽しめた。可変式のドライバーを開くと音がより開放的になり、閉じると密閉型の音に近くなる点が面白い。

 このMYSPHERE 3を今度はBenchmark Media Systemsの「HPA4A」で聞いてみた。「HPA4A」はTHX-AAAを採用した高出力アンプ回路が特徴で、MYSPHERE 3を力強い音で鳴らすことができる。端正なFerrum Audioのアンプとはまた違った音が楽しめた。

 ちなみにエミライブースでのソース機器はAurenderのフラッグシップ・ネットワークトランスポート「N30A」が使用されていた。これは単体で約440万円というハイエンド機器だ。N30Aはネットワーク機器でありながら、二つの筐体に分かれた特徴的な構造を有し、デジタルプロセッサ部分とオーディオ回路の部分を分ける設計がなされている。

finalの注目機種D7000を聴く

 finalとコペックジャパンはお互いの分野を補い合えるため共同ブースでの出展としたということだ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
finalとコペックジャパンの共同ブース

 finalのヘッドホンは中央テーブルにもあるので、実際には会場全体で試聴できた。D7000、D8000、D8000 Proを会場内の様々な機器で比べるとD8000 Proがモニター的に使うのに向いていて、D7000はよりリスニング目的に向いているのがよく分かる。ちなみに、D8000 ProとD8000では聴取する音量レベルの大小に応じて違いがわかるということで、D8000 Proの方がより大きな音量のシステムに適合しているということだ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
HA-3AとD8000 Pro

 コペックジャパンの扱うCayinブランドの真空管アンプでは、まず6A6を搭載した真空管ヘッドホンアンプ「HA-3A」を試聴してみた。音質はトランジスタアンプのように整っていて力強い音だが細部が滑らかで、PCM音源でもデジタル臭さを感じさせないことが感じられた。300Bを搭載した「HA-300 Mk2」ではより真空管アンプらしい柔らかで温かみのあるサウンドが楽しめた。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
HIFIMANのブース

HIFIMAN、CHORD、Nimbus、Violecric、FOCALなど

 HIFIMANブースでは日本未発売のDAC内蔵ヘッドホンアンプ「EF1000」を平面磁界型ヘッドホン「Aya Organic」で聞くことができた。EF1000は未発売だが為替レートで計算すると約200万円程度の価格となるとのこと。音は大型のヘッドホンアンプらしい広大で立体的な深みのあるサウンドだ。かなり出力が高いことが感じられる。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
EF1000とAryaOrganic

 また、先日発売されたGolden Wave「PRELUDE」も展示されていた。同じヘッドホンで比較してみるとPRELUDEは音の広がりが豊かなEF1000と比べると音場感はコンパクトだが、音の厚みがあって滑らかなサウンドは純A級増幅のアンプらしいと言える。

 タイムロードブースではおなじみCHORDの「DAVE」に「M Scaler」を組み合わせてソース機器として、プロ用機器メーカーのコンシューマーブランド製品であるNimbus「US 5 Pro」とViolecric「DHA V590 Pro」を展示していた。Nimbusの方がより高級なラインナップで、Violecricの方はDAC内蔵でより手軽という切り分けのようだ。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
タイムロードブース

 両方の機器とも背面パネルにはプロ機器の応用らしく多様な入力に対応するためのゲインのディップスイッチが多数搭載されている。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
US 5 Proとfinal D8000 Pro

 音は両方とも正確で誇張の少ないプロ機のサウンドをベースにしているが、温かみがあって低音が強めのリスニングも意識した音だと感じた。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
FocalとLUXMANのブース

 FocalとLUXMANブースでは昨年発売のフォーカル「Utopia SG」をヘッドホンアンプのLUXMAN「P-750u mark II」で試聴できた。

 音はLUXMANらしい端正な音で、Utopia SGも誇張感が少なくその良さを引き出して相性は良いと思う。気持ちよく良音源を楽しめるサウンドだと思う。

 P-750u mark IIは最終系のODNF回路を搭載している。従来のLUXMANのヘッドホンアンプはフィードバックを改良して純度の高い音にするODNF回路を中心に発展してきたが、次世代のヘッドホンアンプも開発中で今度は全く新規の設計になるという。価格も70万程度となり、まさにハイエンドのヘッドホンアンプとなるだろう。

珍しいセパレート構成のDVAS「Model2」

 DVASとスタジオイクイプメントの共同ブースでは、DVAS「Model2」という珍しいヘッドホンの"パワーアンプ"が展示されていた。ヘッドホンアンプは通常プリアンプに近い性格を持っているが、Model2はパワーアンプなのでボリュームを搭載していない。Model2ではスピーカー用のパワーアンプをヘッドホンのインピーダンスに適合させた設計がなされているという。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
DVASのブース

 これはそもそもなぜヘッドホンにはセパレート型のアンプがないのかという所から着想したもので、用途としては今まで家でスピーカー用にセパレートのプリアンプとパワーアンプを所有している人向けに、そのスピーカー用のパワーアンプをそのままModel2に変えることでヘッドホンオーディオが楽しめることだという。

 実際に組み合わされていたDAC内蔵プリアンプのB.audio「B.dpr EX」にはボリュームはあるがヘッドホン端子はない。

ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024
DVAS「Model2」とD8000 Pro

 finalのD8000 Proで試聴してみたが、音質はとても透明感があり澄んだ音という印象だった。楽器音の歯切れがとても良く、鮮明なサウンドを聴くことができた。

予想を上回る規模で満足度も高い

 小規模なイベントかと思っていたが、意外に出展が多かったので驚いた。またハイエンド製品と一口に言っても、よく知られたものばかりではなく、思っていた以上にユニークで個性的な製品が出展されていたように思う。

 フジヤエービックの担当者は、まずはテストケースのイベントとしてとらえているが、また機会を見つけて続けたいと語っていた。17年前に開催された初代「ハイエンドヘッドホンショウ」の際には、時計回りに参加者をローテーションさせるなど手探りで進めていたが、ハイエンドヘッドホン・リスニングセッション 2024では、特に運営の問題もなかった。自由で融通の利いた試聴スタイルの提案なども効果的になされていたように思う。今後もまた恒例の試聴イベントとして継続してもらいたいと思う。

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