米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する
ASCII.jp / 2024年3月27日 12時0分
米司法省(DOJ)がアップルを提訴した。独占禁止法違反の疑いがあるというもので、その争点はアプリ、メッセージと多岐に渡る。アップルは戦う姿勢を見せているが、解決には数年を要すると予想される。
■ついに米司法省が動いた! ■グーグルに続いて、アップルも提訴
今回の訴訟の規模の大きさをうかがわせるのは、米司法省の訴状だ。ページ数にして88。
訴状の出だしは2010年にさかのぼる。当時はまだスティーブ・ジョブズ氏が存命中。Kindleの広告について、アップルの幹部とジョブズ氏の交わしたやりとりが紹介されている。
その広告で、登場人物はiPhoneのKindleアプリで読んだ後、AndroidのKindleアプリに切り替えて読書を継続する。これについてアップル幹部が、「iPhoneからAndroidにスムーズに切り替えている。ここが見逃せないメッセージだ」とジョブズ氏に伝えている。ジョブズ氏の返事は、アップルは開発者とユーザーを自分たちのプラットフォームにロックインするために、支払いシステムを使うよう“強制”するというものだとしている。
訴状はこう続けている。「アップルは長年に渡って、競争上の脅威に対して、開発者やユーザーにより魅力的なものになるよう努力するよりも、離れにくくしたり高額にすることで応じてきた」。
米司法省は「この訴訟は、アップルの反競争的で排他的な行為からスマートフォン市場を解放し、消費者向けにスマートフォンの価格を下げる競争、開発者向けの手数料を下げ、将来のイノベーションを守るためのものだ」と記している。
カリフォルニア州など16州も訴訟に加わっている。
■アプリストア、メッセージ、スマートウォッチ、決済と ■訴訟の焦点は複数ある
1つ目の焦点はアプリストア。App Storeでアップルが課す条件だ。アップルはアプリ開発者との契約に制限を設け、最大30%の手数料を課している。Epic Gamesとの攻防が思い出されるが、それだけではない。現時点でXbox Cloud Gamingなどのクラウドストリーミング型ゲームサービスを利用できない点を突いているほか、単一のアプリに複数の機能を統合した「スーパーアプリ」も取り上げられている。
スーパーアプリとは、メッセージ、動画/音声通話、ゲーム、モバイル決済などの機能を持つLINEのようなアプリだが、米国では、これらスーパーアプリは既存のアプリ配信モデルを揺るがすとアップルは見ていると訴状には記されている。
2つ目は、本連載でも紹介しているiMessageアプリの緑のバブル/青のバブル問題だ(「iMessageが使えるAndroidアプリが作られ、すぐ遮断 そしてRCS対応 吹き出しの色を巡る攻防」)。
iPhoneのiMessageユーザー同士なら青、Androidユーザーとのやりとりは緑の吹き出しで表示されるので、米国のティーンの間ではいじめにさえつながるという(日本はLINEが主流なのに対し、米国ではWhatsAppまたはメッセージアプリが主に使われる)。さらに、写真や動画の画質が落ちたり、使い勝手が悪くなる。なおアップルは、サードパーティー製アプリの「Beeper Mini」などの試みを拒否する一方で、今年後半に標準技術であるRCSを採用するとしている。
3つ目はスマートウォッチ。iPhoneとのみ互換性があるため、Apple Watchを購入したユーザーはiPhoneを買う(買い続ける)ことになる点を指摘している。
4つ目はApple Payとウォレット機能。決済サービスの競争を妨げており、銀行がApple Payの利用に支払う手数料により、新しいサービスを開発することを阻害しているとする。
■世界シェア1位、米国では約60%の世界最大のスマホメーカー ■なのに、ニッチ時代のビジネス戦略を継続している?
iPhone(もう少しさかのぼるならiPod)以前のアップルは基本的にニッチな存在だった。ユーザーはジョブズ氏が描くアップルの世界に共鳴した人が中心だったと思う。
しかし、iPhoneはタッチスクリーンに代表される現在のスマートフォンの形を定義し、プラットフォーム化に成功し、アプリのエコシステムを作り上げた。
Android陣営とは10年以上にわたる競争を続けており、2023年第4四半期の世界シェアは24.7%、シェアは1位だ。2023年通年でも20.1%のシェアで1位。上位3社(アップル、サムスン、シャオミ)で2022年比でのプラス成長したのはアップルのみだ(IDC調べ、https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS51776424)。
米国ではアップルのポジションはさらに上がる。2023年第4四半期、Appleのシェアは62%で、ここ1年で最大となっている(Counterpoint調べ、https://www.counterpointresearch.com/insights/us-smartphone-market-share/)。
つまり、もはやニッチな存在ではないのだ。シェア拡大はアップルにとってはいいことかもしれないが、ビジネス戦略を変えずに拡大を続けると、独占禁止法の観点ではアウトになりかねないというのが今回の訴訟だろう。
アップルは声明文で、「シームレスな連動」「プライバシーとセキュリティの保護」「魔法のような体験」などの言葉を交えながら、訴訟は「激しい競争においてアップルの製品を際立たせる自社の存在と理念を脅かすもの」として対抗する意思を見せている。
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