俳優・菅田将暉さんインタビュー「今やるべき作品なんだなって思いました」
美人百花デジタル / 2022年9月9日 20時40分
俳優・菅田将暉さんのインタビュー、後半をお届け。「今はちょっとお休み中」という菅田さんが、今感じていることとは……?
人と人の肌の触れ合いや目を合わせてしゃべることは絶対必要
――立ち止まってみて、改めてコミュニケーションの大切さも実感したという。
「この間も、知り合いの子供が学校で問題があったらしく『友達にどういうメールを送ったらいい?』って言ってたんですけど、いや、直接会って話せと。SNSはツールとして便利だけど、何かを介して人と交わると必ずほころびが出る。大抵の問題って直接的なコミュニーケーション不足か愛情不足じゃないですか。なので、人と人の肌の触れ合いや目を合わせてしゃべることは絶対必要。古いと思われるかもしれないけど、僕ら俳優が今の社会に向かって言えることがあるとしたら、そういう部分かなって思うんですよ」
――最新作の映画「百花」は認知症で記憶を失っていく母・百合子と、その息子・泉が互いの過去と向き合っていく物語。菅田さんはこの作品の出演を「自分ごと」として即決した。
「話をいただいたのが、ちょうど僕のおばあちゃんの記憶が不確かになってきていた時期で。『菅田将暉』は芸名なのに、久しぶりに会うと『将暉、将暉』って呼ぶようになったんです。周りは『菅田くん観たよ』って芸名の方で僕のことを話すから、どうやらおばあちゃんの中で菅田将暉と本名の僕がふたりいるって現象になっていて。それが悲しいとかじゃなく、そういうことになるんだなぁ、みたいな。そう思っていたタイミングに来た作品だったので、今やるべきなんだなって思いました」
――母と息子の愛の物語ではあるけれど、いわゆる感動モノだと思っていると足をすくわれる。親子の関係はどこかぎこちなく、ずっとやるせなくて、ずっと不安。でも、最後には予想外の真実が明かされ、無防備に心の芯を食われてしまう。
「今回は僕の中でも特殊でした。まず撮影方法がワンカットで行っているので、現場では僕らもどこを撮られているのかわからない。結果、泉の家族をのぞいているような映像になっていて、妙なドキュメンタリー感があるというか。見ちゃいけないものを見ちゃった不気味なドキドキ感で、それがちょっとミステリーっぽかったりするんですね。内容も、内向的で誰にも知られないような小さな話ってところは邦画的だけど、青みがかった映像とか、照明が暗くて何が動いているかわからないシーンの多さとか、ちょっとヨーロッパっぽい。要は繊細だけど精密すぎない映画なんです。川村監督も普段はオシャレな人なのに、日にちが進んでいくと、ひげが生えてきて髪とかもベタベタでボロボロになってて(笑)。でも、それも僕は好きで、劇中のシーンともリンクして生々しくも美しい映像になっています」
――「生々しくも美しい」のは人の記憶も同じ。今作は自分が何を覚えていたいのか。人生の最後はどんな思い出がよみがえるのか。記憶の深淵を覗き込むような怖さとリアリティーがある。
「僕も記憶のメカニズムについていろいろ調べたことがあって。短期記憶に関しては毎日、セリフを覚えているから〝記憶の筋肉〟がついているけど、覚えた分、どんどん忘れている。そのせいかわからないけど、最近自分は道を覚えられないってことに気づいたんです。それこそ記憶の曖昧さなんですけど、家を出てまっすぐ歩いているつもりが、いつの間にかぐるっと回って家の前に戻っているみたいな……要はめちゃくちゃ方向音痴。もう自分を信じるのはやめようって思いました(笑)」
――迷子になってキョトンとする菅田将暉。見たいです(笑)。最後、これだけはいろんな意味で外せないということで「百花」という言葉(作品タイトル)の、菅田さんなりの解釈を聞いてみた。
「実はどういう意味なのか監督にも聞いていないんですけど、僕の中では不思議なイメージ。文字どおり見ればすごく派手で美しくて、艶やかな感じなのに書体や音の響きはちょっと切なく冷たさもある。でも、お花なので生き物としての温かさもどこかあって。十人十色的な、そういう意味での『百花』でもあるのかなって思っています」
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Profile
菅田将暉(すだまさき)
1993年2月21日生まれ。2009年俳優デビュー。今年は主演ドラマ「ミステリと言う勿れ」や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が話題に。アーティスト活動もこなし、今年6月には新曲「惑う糸」を配信リリース。
Information
©2022「百花」製作委員会
母・百合子と、息子の泉過去のある「事件」をきっかけに互いの 心の溝を埋められないまま過ごしてきた。そんな中、百合子が認知症を発症。それは母が少しずつ息子を忘れていく日々の始まりだった。
出演:菅田将暉、原田美枝子、長澤まさみ 他 監督:川村元気 配給:東宝
公開中
掲載:美人百花2022年9月号
撮影/中村和孝 スタイリング/猪塚慶太 ヘアメイク/AZUMA(M-rep by MONDO-artist) 取材・文/若松正子 再構成/美人百花.com編集部
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