富士山ツーリングで実感!! ホンダ「VFR800F」は手抜きを感じさせない正統派ツアラーだった
バイクのニュース / 2020年12月4日 11時0分
ホンダのラインナップの中で、V4エンジンを搭載するモデルは「VFR800F」と「VFR800X」の2機種のみです。スポーツツアラーというジャンルを築きあげた「VFR800F」でツーリングに出かけ、その走りと使い勝手を確かめてみました。
■今となっては稀少なV4エンジン、力強い走りに笑みがこぼれる
ホンダのラインナップの中でV4エンジンを搭載するモデルは、今や「VFR800F」と「VFR800X」の2機種のみです。その中で、スポーツツアラーというジャンルを築きあげたのが「VFR800F」です。今回はこのマシンで実際にツーリングに行き、その使い勝手を確かめてみました。
「VFR800F」を目の前にすると、フルカウルに包まれた車体にどこか重厚な雰囲気を感じます。実際、車両重量は243kgもあって、同じホンダの大型車であるアフリカツインのDCTモデルより7kgも重くなっています。ただ、可変できるシート高は809/789mmで、低い位置にセットすると足つき性は悪くなく、走り出せば重さを意識するシーンはほぼありません。
エンジン音はV4エンジン独特の「ドリュリュルル……」という迫力あるもの。走り出すと低速からトルクフルでスムーズに回るエンジンのため、意外と軽快です。車体幅は750mmとかなり細いため、混雑する都市部でも機動性は悪くありません。ペースのあまり上がらない首都高速でも、3速から4速をキープしたままアクセルコントロールだけでゆるゆると走れるので、疲れを感じることもありませんでした。
中央道下り「談合坂SA」付近はカーブしながらの上り坂が続く。VFR800Fならそれほどエンジン回転数を上げなくても楽々と流れをリード出来る
ハイスピードツアラーとしての実力を見せつけてくれたのは、中央高速自動車道に入り、小仏トンネルや談合坂サービスエリア近辺の登り坂に差し掛かったあたりです。
遅めの車列を追い越そうと勢いよくアクセルを開けると、それまでの「ドリュリュリュ」という排気音がいきなり「バブォーン!」という荒々しい音に豹変し、弾かれたように車体が加速して行きます。これは、HYPER VTEC(ハイパーブイテック)という可変バルブ制御システムを採用しているためで、低・中回転域では2バルブエンジンとすることでトルクとレスポンスを向上させ、高回転域では4バルブエンジンとして力強い加速フィーリングを実現するもの。だいたい6500回転あたりを境にエンジンのキャラクターが変わる仕組みです。
このキャラ変ぶりには驚かされるとともに、ちょっとクセになる爽快感があります。ときどき、わざと回転数を上げてグッとくる加速と変化するエンジン音を味わうのが楽しくなってしまいます。ハンドリングはどっしりと安定し、横風が強めの際のレーンチェンジなどでも狙った場所にピタッとマシンを付けることが出来るので、とても安心感があります。
河口湖の北西端あたりで雲間から富士山の頭がチラリ。マシンを停めて写真撮影
河口湖を越え、西湖の北側を進むと、道は細く、クネクネとした様子になってきます。そんな道でも「VFR800F」はひらりひらりと身軽にコーナーをクリアしてくれます。ハイスピード域だけでなく、中低速コーナーにおいてもトルクフルなエンジンのおかげで走りを楽しめます。また、混雑するビューポイント付近の道路や観光施設の駐輪場などでも、細身のボディは意外と機動性が高く、それほど不便さはありませんでした。
その後は県道71号で富士山の西側を抜け、富士山の南麓を東西に走る富士山スカイラインへとハンドルを向けます。ここは前半、上りながらややタイトなコーナーが連続するワインディングロードで、マシンにはパワーと素早い切り返しが求められるルートです。こういう状況でも「VFR800F」は低速からよく粘り、扱いやすい特性のエンジンと、走っていれば重さを全く感じさせない身軽さで、リズミカルにコーナーをクリアして行けました。
富士山界隈をツーリングして感じた「VFR800F」の印象は、当たり前かもしれませんが「とてもきちんとしたマシンだ」ということです。基本となる設計はかなり前で、デザインや装備なども最新とは言えず、多少古さを感じる部分もあります。しかしそれは、裏を返せば現代のマシンにありがちなコストダウンや過度な軽量化が見え隠れするような造りではない、とも言えます。
富士山スカイラインは富士山の南麓を東西に貫く快適ワインディング。バイクで走ると楽しい道だ
灯火類にLEDを採用し、ABSやトラクションコントロールも装備。12Vアクセサリーソケットやグリップヒーター、ETC2.0車載器を標準搭載とするなど、ツーリングマシンとしての基本と利便性はきっちりと押さえています。
派手さはないけれど仕立ての良いスーツのような、長く付き合える「上質でしっかり造られた」感のある、これぞ“昔ながらの正統派ツアラー”だと感じました。
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