まるでおしゃれ家電のようなe-BIKE オランダ生まれの『VanMoof(バンムーフ)』最新モデル「S3」の走行性能をチェック!
バイクのニュース / 2020年12月28日 17時0分
シンプルなフォルムに全ての機能を内蔵したオランダ生まれの電動アシスト自転車『VanMoof(バンムーフ)』の「S3」に試乗しました。果たしてその性能は?
■見た目も機能もシンプルそのもの、果たして乗り心地は?
シンプルでユニークなデザインのe-BIKE(電動アシスト自転車)、オランダの『VanMoof(バンムーフ)』がラインナップする最新モデル「S3」を1週間ほど使用し、その性能を余すことなく試乗体験しました。
走行距離はおよそ55km、筆者(山本健一)が都心部を中心に取引先の往復など、一般道を走行して感じたことをレポートしたいと思います。
■外観について
アルミニウム製の大口径なチューブを使っていて、見るからに質実剛健。各チューブ接合部もスムースウェルドで美しい。オランダのメーカーというイメージは大事です。電子機器やバッテリーを内蔵化するための施策ではありますが、バンムーフらしさというのがブレずに表現できていると思います。
筆者の身長は187cmで、サドルの高さはちょうど良いですが、日本人の平均身長だと「S3」ではやや大きめかもしれません。そういう意味では「X3」でレポートしたほうが良かったのでは……と薄々感じていましたが、後の祭りです。とはいえ機能性は同じなので、差し引いて感じていただければと存じます。
■乗り心地は?
「踏み出しの加速が気持ちいい!」
ここは「S3」のビッグホイールとジオメトリーが影響していますので、その印象となります。28インチホイールの走破力はかなり高く、少々の荒れた路面でもハンドリングに影響なくグングンと突き進んでくれます。これは気持ち良いです。ただし、回転半径は24インチのほうが良いでしょう。狭い道で転回するときなどは大回りになります。
タイヤはシュワルベのビッグベンを履いています。e-BIKE専用設計でトレッドコンパウンドが強化されています。ボリュームがあり、低圧で乗れるのがいいですね。グリップ力についてもまず課題になるようなところはないでしょう。このシュワルベというタイヤメーカーも非常に大きな会社なので、一定レベルのクオリティが保証されていると言って良いでしょう。
ホイールの走破性能、ボリュームのあるタイヤのおかげですこぶるご機嫌な走りを楽しめます。
「S3」のフレームサイズは大きめ
サドルについてもオリジナルのデザインですが、クッションの下に振動吸収性素材が内蔵されていて、ほどよい硬さでペダリングロスも少ない印象です。座面はかなり広めですが、一般的な自転車に乗り慣れていれば違和感はありません。サドルの上下の位置は微調整可能です。サドルの固定ボルトはトルクス(盗難防止)なので、専用のトルクスレンチを無くさないようにしましょう。
フレーム同様に大柄な欧米人が乗ることが前提なので、ハンドル幅も広めです。ハンドルとステムは一体型で角度を調整することはできませんが、ユニバーサルなデザインなので、持ちやすい角度になっていました。
都道などでは路肩をすり抜けるような場面なども多々見受けられますが、そういった走り方には向いていないでしょう。
■アシスト機能について
アシスト機能は前輪ハブ部分に搭載している電動アシストユニットによって、250Wから350Wの補助が得られます。350Wというと(以前の記事でも触れましたが)プロサイクリストが一定時間出し続ける出力とそう変わらないレベルです。
信号停止からの踏み出しや、上り坂でブーストを使ってみます。最大アシストレベルとなる「4」の威力を発揮し、爽快な加速が得られて実に楽しく走れます。自転車走行で走り出しは億劫なもので、その煩わしさを一気に解決したのが電動アシスト自転車でしたが、さらに爽快なレベルまで昇華させたのがバンムーフだと言えます。もちろん無限に加速していくわけではなく、時速24kmに至るまで緩やかにアシストは減少していきます。
感覚的ですが、時速0kmから12kmくらいの間がもっともアシストが有効で、数パーセント程度の上り坂なら時速20kmから22kmを維持できました。この速度には個人差はありますが、誰でも都内で突如出現する怪しい急勾配の上り坂でも圧倒的余裕をもって走ることができると思います。
■スマートキックロック
スマートキックロック。シューズの爪先で押すのが“カッコいい”とされている
リア三角のエンドに設置されたボタンが備えつけのロックです。これを押すとハブに設けた溝に突起がハマり、ホイールがロックされる仕組みです。この状態で無理に動かすと警告音が鳴り響きます。かなり音量なので、防犯対策としては有効ではないでしょうか。
スマホで手動解除ができますが、慣れるといつもの鍵(ワイヤーロックなど)が面倒になるくらい便利でした。もちろんワイヤーロックなどを用いて2重ロックにすれば、よりセキュリティ効果は強化され盤石となるでしょう。
■グリップ
グリップは程よい硬さで握りやすい設計です。悪路でもブレずにブレーキ操作がしやすいと感じました。ブーストのボタンはグリップを握りながら操作できますが、ボタンがやや重く、押し続けながら長時間走るのは手が疲れるという副産物があります。
■シフトチェンジ
eシフターによるオートマチック変速は楽しみにしていた機能のひとつです。デフォルトで2パターンのモードと、カスタムモードがあります。カスタムでは時速0kmから28kmの間でギアチェンジのタイミングを変更できます。スピード変化に応じて変速していきます。変速時のショックは多少ありますが、4段階変速ということでよほどのことがなければ不快に感じるほどではありません。
電動アシストが効かなくなる時速24km以上では平坦でギアが重く感じましたが、スポーツ自転車と比較するともう少しケイデンス(クランクの回転)が高いほうが乗りやすいと感じました。
とはいえ、上り坂ではゆったりとしたペダリングですが、電動アシストによってぐんぐん進んでいき、電動アシストの補助を考慮したギアレシオなんだろうという結論に至りました。
■アプリについて
スマートフォンアプリはセッティングや解錠、走行アクティビティのログなど、さまざまな機能がある
バンムーフのパフォーマンスを最大限活かすには、アプリを使わない手はありません。iOS、Androidに対応しています。感覚で使えるシンプルさが特徴です。「My Rides」の項目では、1日ごとのアクティビティログに時速やバッテリー残量が表示されます。乗る動機つけにも良いです。
※ ※ ※
自転車とITと電動アシスト。三位一体でそれぞれの特性がイキイキとしています。そういう意味では業界の先陣を切っていて、スマートバイクのベンチマークと言えるでしょう。「S3」の価格(消費税10%込み)は25万円、価値のある価格です。
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