昔はエンジンかけるの大変だった!? ポチっと簡単になった「始動方式」とは
バイクのニュース / 2023年7月13日 11時10分
バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。現在はボタンを押すだけのエンジンの「始動方式」ですが、昔は……。
■電気モーターでエンジンをかける「セルフ式」
バイクのスペック表を見ると、エンジンをかける方法(機構)を、短く「始動方式」と表記しています。そして現行モデルの多くはセルフ式、またはセルフスターターと記載されていますが、どちらも同じ意味です。
現行市販バイクの多くは、ハンドル右のスイッチボックスに備わるスターターボタンやセルボタンと呼ばれるボタンを押すことで簡単にエンジンを始動できる。写真はヤマハ「TMAX560 TECH MAX」(「ON」と記されたボタン)
エンジンは空気とガソリンが混ざった混合ガスを「吸気→圧縮→爆発→排気」する行程を繰り返して回転していますが、そのためには最初に何らかの方法でクランクシャフトを回し、この一連の動きを作らないとエンジンは始動できません。
そこで、クランクシャフトを電気モーターで回すのがセルフ式(セルフスターター)です。ハンドルスイッチに備わるスターターボタン(セルボタンとも呼ぶ)を押すだけで簡単にエンジンを始動できます。
■キック始動は、けっこう大変!
現行市販バイクの多くはセルフ式なので、簡単にエンジンを始動できます。しかしかつては「キック式」と呼ぶ、人力でエンジンをかける車種も少なくありませんでした。
ヤマハ「SR400」のエンジン始動風景。キックペダル(キックアームとも呼ぶ)を勢い良く踏み込んでエンジンをかける
じつは1960年代頃までのほとんどのバイクが、始動方式はキック式でした。もちろん当時も電気モーターは存在しましたが、現代のようにコンパクトではなく、モーターを回すためには大きなバッテリーが必要でした。これらを装備すると車両の重量が相当重くなりコストもかかるため、セルフ式は採用されませんでした。
当時は足で踏む「キックペダル」でクランクシャフトを回し、エンジンを始動するのが一般的でした。とはいえ小排気量車はともかく、排気量の大きな4ストロークエンジンはキックペダルを踏むのに強い力が必要で、けっこう大変だったのです。
絶版旧車で有名なホンダ「CB750FOUR」(1969年発売)の始動方式はセルフ/キック併用
ペダルを踏み込む力が弱かったり、最後まで踏み切れないとエンジンがかからないばかりか、不完全な点火・爆発でクランクシャフトが逆転してキックペダルが勢いよく跳ね返されることもあります。この症状は「ケッチン」と呼ばれ、跳ね戻ったキックペダルでふくらはぎを強く打ったり、足首を捻挫することもありました。
また信号待ちからの発進や交差点内(とくに右折待ち)でエンストした時などは、キック式だとかなり焦ります。
そのため、1960年代頃から中排気量以上の4ストロークエンジンのバイクにセルフ式が増え始めました。当時は信頼性の面からセルフとキック併用式のバイクが多く、セルフ式のみになったのは1970年代後半頃です。
2ストロークエンジンを搭載するレーサーレプリカ、ホンダ「NSR250R SE」(1996年モデル)の始動方式はキック式のみ
ちなみに2ストロークエンジンは、構造的に4ストロークより圧縮比が低いので、キックによる始動が比較的容易(キックペダルを踏む力が軽い)のため、排気量の大小を問わず、1980~90年代に人気を博したレーサーレプリカも含め、ほとんどの2ストロークモデルはキック式のみでした。
また車両重量の軽さが重視されるオフロードモデルは、4ストロークエンジン車でも1990年代中頃まではキック式が主流で、その後セルフ式に移行しました。これは技術の進化でスターターモーターやバッテリーが軽量・コンパクト化され、信頼性も向上したからでしょう。
そして現在はセルフ式のバイクが主流ですが、排気量50~125ccクラスのスクーターやビジネス車の中には、セルフ/キック併用の車両も少なくありません。これらのキックは、バッテリーが弱ってスターターモーターが回りにくい時のサポート用と言えるでしょう。
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