全国44位の“深刻な医師不足”でも 研修医は過去最多 なぜ新潟が選ばれるのか?医師確保への模索
BSN新潟放送 / 2024年5月1日 14時17分
161人。
これは2024(令和6)年度に、新潟県内の病院を研修の場に選んだ医師の数。
過去最多です。
厚生労働省の統計によりますと、2022年度の人口10万人当たりの医師の総数は、全国平均では274.7人です。
1位は京都府の355.6人、2位は徳島県の252.0人、3位は高知県の347.0人ですが、新潟県は227.3人と下から4番目の44位…。
では、“医師不足が深刻”な新潟県で、なぜ研修医は増えたのでしょうか?
東京都出身で横浜市立大の医学部を卒業した竹内沙織さん(24歳)は、この春から、新潟県上越市にある上越総合病院で医師として研修を始めています。
出勤してすぐ、患者の情報を記したカルテに目を通し診察にそなえます。
「担当の患者さんのカルテを見て、夜の時間や、自分が昨日帰った後の出来事を振り返って、きょうに備えたいと思います。なかなかまだカルテに慣れないところもあるんですけど…」
医師としてスタートを切ってから半月。
まだ手探り状態です。
国家試験に合格すれば医師を名乗ることができますが、臨床研修医は単独で高度な診療行為を行えません。医師法に定められた「医師臨床研修制度」に基づくこうした臨床研修を2年間受けたあと、それぞれがその先の専門分野へ進むのです。
新潟県の医師不足は深刻
人口10万人当たりの医師の総数の、全国平均は274人です。
最も多いのは京都府で355人。新潟県は44位の227人。
それでも前回調査からは増えています。
【新潟県 花角英世知事】
「地域枠の拡大とか、ここ4~5年でやれることは最大限やってきている」
医師不足は、私たちの生活に直結します。
2023年3月には、新潟県長岡市にある立川総合病院が消化器内科の新規患者の受け入れを休止したほか、上越市では新潟労災病院の閉院にともない市内5つの病院が再編されることとなりました。
こうした医師不足の現状に対して新潟県では「医師確保計画」を策定し、2020年3月から本格的な対策に乗り出しています。
新潟県内の病院で卒業後に9年間働くことを条件にした、最大3700万円の返済不要の奨学金では、対象となる大学を増やすなどしました。
こうした取り組みの成果もあり、新潟県内の病院を選ぶ臨床研修医は、2022年は125人、2023年は147人、そして2024年は過去最多の161人にまでになりました。
今では、新潟県内で働く臨床研修医の6割が、県外大学出身者で占められています。
臨床研修先に上越総合病院を選んだ竹内沙織さんもその一人。
「自分が将来何をやりたいか。それに対して上越総合病院はどういうメリットがあるのか、ということを、具体的に教えてくれたのがすごい印象的で決めました」
新潟を研修の場に選んだ新米医師のうち、2年間の臨床研修の後も引き続き新潟で専門医研修に進んだのは2024年で125人中およそ80人と、7割ほどだそうです。
研修後もそのまま新潟で働き続けてくれる医師を増やすことが今後の課題。
新潟県では、研修プログラムを充実させるなどの環境整備を行っています。
【新潟県福祉保健部 中村洋心部長】
「専門プログラムとして新潟で新しく作ったプログラムを、臨床研修中の研修医にしっかり知っていただくことが必要」
臨床研修医の竹内沙織さんらと共に担当患者を回りながら、実際の診察を通じた指導を行っている上越総合病院の篭島充院長は、研修医と接する上で大切にしていることがあると話しています。
「研修医はこれからの医療を支えてくれる人。彼らの意見を尊重しながら、彼らに敬意を払って指導することはすごく大事だと思いますね。そういう所に研修医が集まってくると思っている」
上越総合病院の臨床研修医・竹内沙織さんは、今後の進路について「じっくり考えたい」と話します。
「総合診療に興味があるので、そちらのプログラムや専攻医などのある病院に勤められれば良いなと思っています」
竹内沙織さんと同様に上越総合病院の臨床研修医である小出紘平さんは、地元の新潟県上越市出身で新潟大学を卒業。
研修後も「新潟県内で医師として働く」と決めているそうです。
「すごく地元感が強い僕ですけど、いろんな風が入ってきてくれることに高揚感もある。新潟の魅力を伝えていって、すこしでも残ってもらったり、戻ってきてくれたらいいなと思っています」
研修の場として、医学部の卒業生に選ばれつつある『新潟』ですが、研修制度の改革を進めてきた新潟大学医歯学総合病院の冨田善彦院長は、現状を楽観視していないと言います。
「2年の研修だけが魅力的だと思われたのでは…。過去と比べて最多かもしれませんが、まだまだ足りませんよね。ですからあくまでも通過点だと思っています。専攻医として研修を進め、将来は何科の医者になるんだ、というところまで導くシステムの充実を図っている」
縁あって医師の一歩を新潟で刻んだ臨床研修医らが、自らの研修期間を終えた2年後以降も、改めて新潟県を選ぶのかどうか…?
新潟県や各病院の今後の取り組みが注目されます。
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